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手合わせと出会い、静かに侵食する異変

今回は広場での手合わせを見に行く回です。


戦いの中で見えるそれぞれの実力と、

少しずつ見え始めた“違和感”。


そして、ゼインにとって初めての出会いも――。

俺はレリーナに抱かれ、ヴァッシュ達が手合わせをしている広場へと向かった。

レリーナの隣をライネが歩いている。

歩いているのだが。

チラッ、チラッ。

家を出て数分するとチラチラと

目配せをしていた。

視線の先は、レリーナの胸。

女性から見てもレリーナの胸は魅力的なのか。

(ライネの胸も立派だと思うのだが)

そう考えていると

「あら、ライネどうしたの?」

レリーナも視線に気づいたようだ。

「あっ、いや。ちょっと、、その〜」

「なぁに?」

「少しだけ、ゼインくんを抱っこしてもいいですか?」

(え?見られてたのって俺の方?)

「もちろん。いいわよ。でもどうしたの?急に」

「いや、私の顔を見せても泣かなかったから抱っこもいけるかと思って」

「そうね。ゼインなら大丈夫だと思うわ。じゃあ、腕を私のように組んでみて」

「え?こ、こう?」

「そうそう。じゃあそこに乗せるわね」

そう言うとレリーナは俺をゆっくりとライネの腕の中に預けた。

「わっ、思ったよりちっちゃくて軽いわ!」

「ふふっ、そうでしょ?もう少し胸の方に寄せて抱えてあげると腕も疲れないわよ」

「わ、わかったわ」

ライネは少しずつ俺を胸の方に近づける。

ぽよん。

(こ、これは!)

ライネの胸は弾力があり、弾むようだった。

弾んだかと思えばゆっくりと吸い込まれそうな柔らかさである。

ちなみにレリーナの胸はほわんとしており、包み込んでくれるような柔らかさである。

(レリーナにはレリーナの、ライネにはライネの良さがあるんだな)

ライネに抱かれて10分ほどすると

ガァン、キィィン。

何やら金属同士のぶつかり合う音が響いてきた。

(激しい音だな)

と考えているうちに目的地についた。

そこではヴァッシュとガレル、アルドが睨み合いをしていた。

「アルド!そんな踏み込みじゃ仕留めきれないぞ!」

「はい!」

「ガレル!相変わらずパワーは凄いが、スピードはまだまだだな!」

「抜かせ!」

アルドは片手剣、ガレルは大盾を使っている。

(相手の攻撃をガレルが止めて、その隙にアルドが仕留める流れだな)

「じゃあ、もう少し激しく行くぞ?『ミラーシャドー』!」

ヴァッシュが唱えた途端、ヴァッシュの横に黒い人の形が現れた。あの形は、、

(ヴァッシュが二人になった!)

そこからヴァッシュと分身による連係攻撃が始まった。

ヴァッシュが右から斬りかかる、同時に分身は左から斬りかかる。

アルドはヴァッシュの、ガレルは分身の剣を各々受け止める。

すかさずヴァッシュは右足でアルドの腹を、分身は左足でガレルの盾を蹴り距離を取る。

(あれ?ミラーってことは?)

「アルド!『ミラーシャドー』は厄介だが、使用者と動きが逆になる!そして攻撃のタイミングは同じだ!声を掛け合って対応するぞ!」

「わかりました!」

(やっぱり。戦いながらは大変かもしれないが、慣れれば対応も容易なはずだ)

「おいおい、ネタばらしが早くないか?」

「実戦形式なんだ。実戦は勝ってこそだろ?」

(なるほどヴァッシュもガレルも負けず嫌いな訳か)

「アルド!左だ!次は右の払い!」

「はっ、はい!」

ガレルからの掛け声を軸にアルドも対応できてきた。

「いい連係だ。だがこれならどうだ?『ミラー』!」

(ん?ミラー?言葉からして鏡なんだろうけど、何故?)

その答えはその後の動きをみて分かった。

「アルド!左から斬撃だ!」

「はい!」

そう言ってガレルは右に盾を構え、アルドは左に剣を構えるが

「えっ?!ぐぁっ!!」

アルドはガレルと同じく右から攻撃を受けた。

「なに!?」

これにはガレルも驚いたようだ。

(なるほど、鏡の鏡は同じ向き。分身もヴァッシュと同じ動きになるのか)

そこからはミラーシャドーにミラーを織り交ぜた攻撃にガレルやアルドも翻弄されているようだった。

「どうした!もう終わりか?ガレル!アルド!」

「まだまだ!」

「俺もまだ行けます!」

(二人とも頑張るなぁ)

そう思いながら見ていると

「お〜やってるな」

後ろから男性の声が聞こえた。

レリーナが振り向くと

そこにはヒゲを蓄えた男性、そして男性の腕に抱かれた赤ちゃんがいた。

目を閉じて眠っているようだ。

「あら、村長。こんにちは」

「おぉ、レリーナ。ライネさんも。こんにちは」

「どうも。村長さん」

お互いに軽く挨拶を済ませる。

「村長。もしかして腕の中の子が?」

「そう。孫のリゼリアだ。今日は天気がいいからな。ここまで初めて散歩にきたよ。本人は眠っているがな」

「そうなんですね。うちのゼインも初めてここに来たんです」

「お〜その子がゼインくんか!ヴァッシュに似ておるなぁ。ミリちゃんは日に日にレリーナに似てくるし、将来はお前たちのように名を馳せるかもな」

(やっぱり。ヴァッシュもレリーナも凄い人物なのだろう)


「どうでしょうね?でも、この子達が幸せならそれで十分です」

「ハッハッハ、確かにそうだ」

村長は大きく笑った。

その声に驚いたのかリゼリアが パッと目をあけた。

レリーナとライネの顔を交互に見ると

「ふぇっ、あーー!」

泣き出してしまった。

「あら?怖がらせてしまったかしら?」

「レリーナが怖がられることなんてないじゃない。それなら私かも」

ライネも困惑していた。

それを見た村長が

「いやいや。レリーナのせいでも、ライネのせいでもないよ。この子は人見知りが強くてね。家族以外は誰に会っても大泣きしてしまうんだ。少しでも慣れさせようと散歩に連れてきたんだ」

と否定する。

それを聞いたライネは

「そうなの。でも怖がらせちゃって悪いわ」

少し安堵したような、申し訳なさそうな様子だった。

(人見知りか。そういえば、前の世界でもそういう人はいたな。あれは、いつ頃だったか?そしてその時は…)

前の世界での出来事を不意に思い出した。

その時は確かこうやって

「あいじょーぶ。あいじょーぶ」

そうリゼリアに声を掛ける。

それを見た村長は

「ほぉ!ゼインくんはもう喋れるのか!さすがヴァッシュとレリーナの子だな!」

と感心していた。

そしてその様子を見たライネは

「村長もスルー!」

とツッコんでいた。


「あいじょーぶ、あいじょーぶ」

そう声をかけ続けるとリゼリア

は徐々に泣き止み、目をあけた。

しばらくゼインを見つめると

「あっ、あー」

そう言いながらゼインに向かって懸命に手を伸ばし始めた。

「これは珍しい!家族以外にこれほど懐くとは!歳も一緒だし、何か感じるものもあったのかもな」

(村長の反応からして本当に珍しいことなんだろうな。とりあえず機嫌が治ったようで良かった)

そこからしばらく村長もレリーナの隣に並んでヴァッシュ達の手合わせを観ていた。

リゼリアはというと、腕を伸ばして俺の手を握っていた。

(赤ちゃんに好かれるなんて初めてだな。いや、俺も赤ちゃんか)

10分ほどすると眠たくなったのかリゼリアの手がスッと離れて下がった。

それを確認すると村長はレリーナとライネに会釈をして帰っていった。

そこから手合わせの後半戦が始まった。

ヴァッシュとガレル達4人。

改めて見るとガレルは大盾を使っており長髪を束ね、筋骨隆々。

アルドは、青髪で引き締まった身体の好青年。

ライネは紫色の胸元の開いたローブで、木製の杖を持っている。主張している胸は、まるでヴァッシュを睨んでいるようだ。

そしてリネアはライネの肩くらいの身長で小柄で、胸はライネほどの主張はないが全身のバランスが取れているモデル体型だ。

そんな中、俺が一番目を引いたのはライネの頭に生えているもの。あれは…

(耳だ!リアルバニーガールだ!)

俺が興奮している間に

「それじゃあ。始め!」

レリーナに合図を皮切りに

ガレルとアルドがヴァッシュへと向かう。

ヴァッシュの元へ二人がたどり着く前に

「ホウンセンス!」

「ミラーシャドウ!」

ライネとヴァッシュが唱える。

ヴァッシュとその分身がガレルとアルドに斬りかかる。

しかし、先ほどとは違い

「ふん!」

「おりゃあ!」

ガレルは盾で、アルドは剣で上手く受け流した。

そして

「「おらぁぁ!」」

二人同時にカウンター。

「ぐっ!」

ガレルのカウンターを防いだが、さすがのヴァッシュも堪えたようだ。

うしろに飛ばされながらも着地をした。

その瞬間

キィィン

金属同士がぶつかる音。

それはヴァッシュが矢を防いだ音だった。

「相変わらずタイミングがバッチリじゃないか。リネア」

「…防いでおいて、よく言うよ」

その矢は後方にいるリネアが打ったもの。

リネアが少し考える。

「ライネ。その新しい魔法、私にもかけてくれる?」

「え、えぇ。良いけど。説明したとおり、これは感覚研ぎ澄ますものなの。兎人のあなたは普通でも聴覚が優れているから、それがさらに強化されると、どんなことになるか…」

「ん。それは確かに。でも、今後の冒険では使うこともあるかもしれない。今のうちに利点と弱点を知っておくべき」

「…そうね。分かった。でも、少しでも異変を感じたら合図して。すぐアンチマジックを掛けるわ」

ライネは迷いながらも、最後はリネアの意見に賛同したようだ。

「分かった。じゃあ、お願い」

「えぇ。ホウンセンス!」

魔法を掛けられたリネアはすぐに明後日の方向に弓を引き、

「『スタンアロー』」

と唱え矢を放った。

放たれた直後に矢から

バチバチッと音をたてながら

電気のようなものが走った。

そのまま真っすぐ飛んでいった。

さすがのヴァッシュも

「おいおい、どこ打ってるんだ?矢が勿体ないぞ」

と呆れていたのも束の間。

明後日の方向へ真っすぐ跳んでいた矢は弧を描くようにカーブし、ヴァッシュの頭部めがけて飛んでいった。

「うぉっ!マジか!」

想定外の攻撃に焦るヴァッシュ。

電気が走っているからか、矢は防がずに避けた。

「凄い。何で?」

「あれは反則だろ」

ライネとアルドも驚いている。

「耳がさらに聞こえるようになったこと、肌で風を今まで以上に感じるようになったことで風向きの変化が分かったの」

リネアが解説する。

「そういうわけだから、次はコレ。『インビジブルアロー』」

そう唱えるとまた明後日の方向へ矢を打つ。

しかしさっきと違うのは

(矢が消えた?!)

放たれた矢は姿を消し見えなくなった。

(さすがにこれはヴァッシュでも!)

そう思っていた。

「見えない矢か。さすがにキツいが…よっと!」

ヴァッシュが勢いよく前へ飛ぶ。

その瞬間にドスッと音がした。

さっきまでヴァッシュがいた地点に放たれた矢が姿を現した。

「……何で避けれる?」

リネアは訝しげに聞いた。

「そんなに難しいことじゃない。『インビジブル』は厄介だが別に本当に消える訳じゃない。本質は周りの景色を自身に投影してるだけだ。だから光の当たり具合なんかでわかる。あとはお前の弦の引き具合から矢の速度と着弾までの時間を計算して避けるだけだ」

そうにこやかに解説するが

「普通できない」

リネアはもう呆れた様子だった。

その後も手合わせは30分ほど続いた。

「疲れたー!」

手合わせが終わるとアルドは地面に倒れた。

「アルドも最後はいい動きだったぞ」

「ありがとうございます」

「ガレルも。また腕を上げたな」

「ガハハッ、まだまだ成長せねばな!」

アルドとは対照的にガレルはまだ余裕がありそうだ。

「リネアも、あの弓術があれば援護どころか撃破も狙えるな」

「ん。ライネの支援魔法があるから成せる技」

リネアがそう返すと、アルドがガバっと起き上がる。

「そうそう!あれ凄いよな!なんかヴァッシュさんの動きがよく視えるっていうか」

と興奮気味に話す。

「確かに。あの支援魔法があったからこそ、ヴァッシュの猛攻にも反撃が出来た。ライネは、良い魔法をレリーナから教わったようだ」

ガレルも感心していた。

「同感。でも魔法を教えてもらったのは今日だよね?そんなすぐに習得できたの?」

リネアがライネに尋ねる。

「私自身も驚いてるわ。普通は時間を要するものなのに。でも…」

「でも?」

「それを可能にするのがレリーナメソッドよ」

「....?」

少し間を空けて答えるライネに、疑問符を浮かべるリネア。

その様子を見たレリーナが

「うふふ、ライネの努力があってこそよ」と答えた。


「なんにせよ。ライネの支援魔法は大きい。よりレベルの高い依頼にも臨めるはずだ。あとは実戦で慣れていこう」

ガレルが締めて4人は宿へ、俺たちは家へと向かう。

4人は明日、拠点としている街へ戻るそうだ。

その夜、みんなが寝静まった頃。

カンッ、カンッ、カンッ。

(なっ!なんだ!)

大きな音が響き、驚いて目を覚ました。

驚いているうちにヴァッシュが素早く出入り口近くの剣を取り、外へ向かった。

「ママ?何があったの?」

ミリも眠たそうにしながらも、その声には不安の色が混ざっている。

「大丈夫よ。すぐに落ち着くからね」

レリーナはいつも通りの様子でミリを優しく抱きしめる。

30分ほどするとヴァッシュが帰宅した。

「あなた。何があったの?」

「あぁ。俺たちがゼインを連れて村へ帰った時にモンスターが出ただろ?それと同じ種類だが複数頭が村近くに出たんだ 。ガレル達も手伝ってくれたから怪我人もなく、すぐに終わったよ」

もう心配ないと話すヴァッシュ。

「でも、この近くに複数頭も出るなんて初めてよね。この前だって珍しいくらいなのに」

「あぁ。近くの森で何か異変があるかもしれないから村を出る時は気をつけよう。ガレル達も街に戻ったらギルドに報告するらしい。調査依頼が出るかは分からないが」

「そう。何もなければいいわね。さて、ミリも安心して寝ちゃったみたいだからベッドに連れて行かないと」

「俺が連れて行くさ。レリーナも念の為に家に障壁を張って疲れただろ?ゆっくり休んでくれ」

「ふふっ、ありがとう」

(ヴァッシュやレリーナの動きや判断力は、やはり只者じゃなさそうだな。もう少し喋れるようになったら聞いてみよう)

ヴァッシュとレリーナのやり取りを聞きながら考えていると、段々と瞼が重くなってきた。

(俺も安心したのか眠くなってきたな。考えるのはまた明日だ)

そう思いつつ、俺は再び眠りについた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


戦闘シーンと日常、どちらも入れた回でしたがいかがでしたか?


リゼリアとの出会い、そして最後に少しだけ出てきた森の異変。

このあたりが今後の展開に関わってきます。


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