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出会い

今回は、ゼインが少し成長した後のお話になります。

半年が経ち、ようやく家族の顔もはっきり見えるようになったゼイン

ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。

早いもので村に来て半年が過ぎた。

目もだいぶ見えるようになり、今では家族の顔もはっきりと分かるようになった。

「ゼインくん! おはよう! 起きてる?」

長い金髪を後ろに束ね、蒼い眼差しでミリが俺の顔を覗き込んできた。

(朝から元気だな。よし、俺も)

「おぅ、おぅあおー」

「えっ! ゼインくん! いま『おはよう』って言ってくれた?!」

(ふふっ、驚いてるな。練習の甲斐があった。そして、もう一丁)

「おにぇーあん」

「わー!! ママ! いまゼインくんが『お姉ちゃん』って言ったよ!」

近くにいたレリーナに嬉々として報告する。

「ほんとねぇ。一時はどうなるかと思ったけど、いまは驚きより安心の方が大きいわ」

ミリの報告を聞くと、レリーナも一緒になってベッドの中を覗き込んできた。

レリーナもまた美しい金髪をきれいにまとめていた。

その瞳は銀色で、優しく俺を映している。

(なるほど、ミリちゃんはお母さん似だな。目鼻立ちもそっくりだ)

そしてレリーナが安心したのには訳がある。

そう。ある程度しゃべれるようになるまでの特訓のあいだ、レリーナやヴァッシュにはだいぶ気をもませた。

それはそうだ。

生まれたばかりの我が子が、

「うぇー」「あぉー」

と、ひたすらしゃべり続けているのだ。

普通の親なら心配して当然だろう。

(なんか、すいません)

そう思っていたところに、

「ただいま」

ヴァッシュが帰ってきたようだ。

「ん? 二人ともどうしたんだ? ゼインを覗き込んで」

そう言って一緒に覗き込む。

ヴァッシュは赤髪で、爽やかな印象の髪型をしている。

筋骨隆々というわけではないが、筋肉が圧縮されている感じで引き締まっている。

しかし、はっきりと顔が認識でき始めてから思ったが、レリーナもヴァッシュも二十代前半にしか見えない。

いや、レリーナに至っては、十代と言われても疑わないほどだ。

それほど二人は美形だった。

(とても子どもが二人もいるとは思えないが、一体いくつなんだ?)

そんなことを考えていると、

「パパ! さっきね! ゼインくんが私のこと『お姉ちゃん』って言ったの!」

と、興奮気味にヴァッシュに報告していた。

「えっ! 本当か?! ゼイン、『おとうさん』だよ。分かるかい?」

「あなた、それはさすがに早いんじゃ」

レリーナが少し呆れながら言った。

(いや、リクエストにお応えしましょう!)

「お、おっとーたん、おかゃーたん」

「えぇ!?」

「まぁ!?」

二人は目を丸くしている。

さすがのヴァッシュも、頭では無理だと思っていたようだ。

「なぁレリーナ。ミリはいくつで喋ったかな?」

「そうねぇ。一歳になる少し前だったかしら? 村では早いほうだったわよ」

「そうだよな。もしかしたらゼインは大物になるかもな」

「ふふっ、将来が楽しみね」

喜んでもらえたようだ。

特訓した甲斐があった。

「ところであなた、ガレルくん達との手合わせはいいの?」

「あぁ。少し休憩したらまた行ってくる。次はパーティでの連係を見てやらないと」

「あら、いいわねぇ。でも、ライネがこれから来るって言ってたけど、そっちは大丈夫なのかしら?」

「あぁ。今日は近接のガレルとアルドを中心に見てやる予定だから大丈夫さ」

「じゃあ良かった。しっかりライネとお話できるわ」

父母共にやる気に満ちた顔をしている。

(そうか。今日は護衛の報酬である手合わせと勉強会の日か)

(ライネが来ると言うし。俺は大人しく邪魔をしないようにしておこう)

しばらくしてヴァッシュは再び手合わせへ向かい、ミリはお友達のところへ遊びに行ってしまった。

間もなくしてライネがやってきた。

「やっほー、レリーナ。来たわよ」

「ライネ。ようこそ」

レリーナが迎え入れ、軽くハイタッチを交わす。

そして俺の寝ているベッドの近くにあるテーブルについた。

「いま紅茶でもいれるわね」

そう言うとレリーナはキッチンの方へ向かった。

「あら、ゼインくんよね? なんだか半年しか経ってないけど大きくなったわね」

「ふふっ、そうでしょ? 私たちもビックリしてるの。ミリもだけど、成長は嬉しい反面、なんだか寂しくもあるわ」

「そう。私は子どもはいないけど、なんだか分かる気がするわ」

「ライネもすぐにいい相手が見つかるわよ。もしかしたら、もう出会っていて気づいていないだけかもしれないわよ」

「うーん、まだ冒険者は続けたいし。そういうのは、もうしばらくはいいかな」

「そうなの。じゃあその時は教えて頂戴ね」

「えぇ。もちろん」

(もしやと思っていたが、ライネさん達は冒険者なのか。その人達と手合わせや勉強会ができるということは、レリーナとヴァッシュも冒険者に関係あるのか?)

また気になることが増えてしまった。

「ライネ。ちょっと魔法書を持ってくるから、お茶を飲んで待ってて頂戴。そうだ! ゼインも目が見えるようになってきたから、良かったらお顔を見せてあげて」

「えぇ? 大丈夫かしら。泣いたりしない? ミリちゃんのときは大泣きされて、四日は立ち直れなかったわ」

心配そうに話すライネ。

「大丈夫よ。ヴァッシュに似て、肝が据わってるみたいだから」

ライネとは対照的に、あっけらかんと話すレリーナ。

「そう? じゃあちょっとだけ」

そう言うと椅子から立ち上がり、ベッドへ近づいてくる。

そして視界の端からゆっくりと顔を見せる。

ウェーブのかかった黒髪、少し心配そうな瞳。

そしてひときわ目を引くのが、胸元の開いた服から覗く谷間。

(そう。奴もまた、俺を覗いていた。決して俺がエロいわけじゃない)

「ほんと。ゼインくんは落ち着いてるわね。顔は、やっぱりどことなくヴァッシュに似てるわね」

「ふふっ、そうでしょ? 特に目元なんかそっくりで」

話をしながらレリーナが魔法書を持って戻ってきた。

「じゃあ、やりましょうか。ライネは何か希望はある?」

「そうねぇ。最初は支援魔法かしら」

「あら? てっきり攻撃魔法だと思っていたわ」

「近接二人がやられたら大変だもの。まずは二人を強化できるようにしたいわ」

「なるほど。いま使える支援魔法は何があるの?」

「俊敏性を上げるアジリティアップ、防御と攻撃力を上げるビルドパワー、短時間だけ毒耐性ができるヴェノムキャストくらいかな」

「そう。普通のモンスター相手なら問題ないでしょうけど、高レベルになると心許ないわね」

「そうなの。だから教えてほしくて」

ライネの顔が、先ほどの柔和な笑顔から真面目なものに変わった。

「この前の依頼で少しレベルが高めのモンスターが出たの。倒すことはできたけど、ガレルとアルドが怪我をしちゃって。私がもっと上手く支援できていれば……」

今にも涙がこぼれそうな表情をしている。

「そうだったの。でもそんな状況でも倒すことができた。そこは誇っていいところよ。改善点が見つかったなら、そこを改めればいいだけよ」

そう優しく語りかける。

「えぇ。ありがとう、レリーナ」

「よし! じゃあ早速、教えるわね!」

(切り替えスゴッ!)

「切り替え凄いわね」

ライネも同じことを言っていた。

(なんか運命を感じるな。クソッ、もう少し早く転生……もとい、生まれていれば!)

そう思っている間にも勉強会は進んでいる。

「支援魔法もそうだけど、他の魔法も多ければ良いってものじゃないわ。各状況に合わせるのはもちろんだし、各魔法の消費MPや持続時間なんかも考えなきゃいけない。だからこそ、あえて少なくするの」

「少なかったら対応するのに大変じゃない?」

「その大変な時に使えばいいだけ。普段使うものを減らして、集中力や気力をその大事な瞬間に取っておくの」

(なるほど。人間の集中力や気力なんて長時間もつものではない。だからこそ温存するのか)

「じゃあレリーナはどうやってヴァッシュを支援してたの?」

「私が基本的に使っていた支援魔法は一つだけ。それは……」

レリーナはビシッと一本指を突き出した。

「ホウンセンス!」

「たった一つ!? それにホウンセンスなんて初めて聞いたわ」

(えっ? レリーナ独自の魔法ってことか?)

「それはそうよ。失われていた古代魔法だもの。今でも使う人は私くらいなものよ。そこにライネも加わるの」

「いまサラッととんでもないこと言わなかった!? 古代魔法ってどういうこと?!」

ライネは身を乗り出して詰め寄る。

「そんなに興奮しないの。ちゃんと教えるから。古代魔法っていうのは、今から数百年……いえ、数千年前から使われていたものと考えられているわ。ただそのときは魔法ではなく、魔術と呼ばれていたの」

「魔術って、前に教えてくれた術式を描いたものを触媒として使うものよね?」

「そう。よく覚えてたわね。冒険者時代に遺跡依頼を受けた時に、偶然にも魔術書を見つけたの。それに書いてあったのがホウンセンス」

「魔術書なんて、今まで誰も解析できなかったから見向きもされなくなったのに……さすが『バンシキ姫』ね」

「あらあら、懐かしいわね」

(え? 姫は分かるけどバンシキって何? ていうか二つ名みたいなものだよな。レリーナってそんなにすごいの?)

ベッドで考えを巡らせている俺をよそに、ライネは呆れつつ言った。

「魔術書を解析できたなんて、国に報告すればどれだけの功績になると……」

「ライネ」

「!」

(!? ……なんだ?)

今までの和やかな雰囲気が嘘のように、空気が冷え切った。

少し間を置いて、ライネが口を開いた。

「ごめん。……失言だった」

それを聞いたレリーナは、

「いいのよ。こっちこそごめんなさいね」

先ほどの柔らかい雰囲気を再び纏っていた。

(今の会話からして、国と何か関係があるのか? ……まだまだ知らないことばかりだ)

「それはもう置いておいて、ホウンセンスについて教えるわ。この支援魔法は、簡単に言うと感覚を研ぎ澄ますものよ」

「感覚? それって柔らかいとか、熱いみたいな?」

「それも含まれるわ。人間には五感と呼ばれるものがあるわよね」

「えぇ、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚よね?」

「そう。それらの感覚を研ぎ澄ませるものなの」

「それだけなの? 他になにか恩恵は?」

「いいえ。ただそれだけ」

ライネの口がぽかんと開いている。

「いやいや! それだけで高レベルモンスターなんて倒せないでしょ!」

(そうだよな。感覚を研ぎ澄ませたところで、強敵に勝てるとは思えないが)

レリーナが落ち着いた声で言う。

「私も最初はそう思ったわ。でもこの支援魔法はすごかった。よく考えてみて」

レリーナは改まって説明する。

「視覚が良くなれば相手の予備動作を見極められる。耳が良くなれば暗器などに気付きやすくなる。味覚や嗅覚が良くなれば毒物などに真っ先に気付ける。触覚が良くなれば空気の流れさえ感じて、攻撃を紙一重でかわし、カウンターに繋げることができる」

ライネがまた口をぽかんと開けた。

そしてしばらく考え、

「なるほど」

とだけ答える。

「これだけでもすごいけど、それ以外の感覚も研ぎ澄まされる。それは……直感」

「直感? それって、いわゆる勘よね?」

「そう。でも命のやり取りの中で直感は大きな武器になるわ。それは冒険者を続けているあなたも分かるはずよ」

「……そうね。その直感で命が助かったことは何度もある」

「相手の攻撃を受けず、カウンターを返す。これがホウンセンスの神髄だと思っているわ」

それを聞くと、ライネが目を見開いた。

「なるほど。それなら複数の支援魔法は基本的に必要ないわね」

腕を組んで頷いている。その動きに合わせ、寄せられた胸も揺れている。

「けど、リスクもあるわ」

レリーナが神妙な面持ちで告げる。

「やっぱりね。そんなに使い勝手がいいならリスクはつきものだわ。それで、どんなリスクなの?」

(確かに大きな能力には対価がつきものだ。一体どんなリスクなんだ?)

ライネも真剣な表情に変わる。

「それは嗅覚にあるの。ホウンセンスの効果がある時にアンデッド系のモンスターに会ったら……」

レリーナは少し間を置いた。

「匂いで……気絶するわ」

「……へ?」

(……へ?)

ライネの声と俺の心の声が重なった。

「それだけなの?」

(そうだよね。気になっちゃうよね?)

「それだけって。アンデッドの匂いは分かるでしょ? あの匂いが何千倍にもなるのよ? ヴァッシュいわくね」

「ヴァッシュは気絶したの?」

「意識は飛びかけたらしいわ。私がすんでのところでアンチマジックを使ったから大丈夫だったの」

「アンチマジックでホウンセンスを消したってことね。アンチマジックは使えるから良かったわ。それ以外のリスクは?」

「そうねぇ。あとはないわね」

「疑うわけじゃないけど、なんか胡散臭さが増したわね」

「ホントなんだから仕方ないでしょ? ほら、教えてあげるから、習得したらヴァッシュ達の所で手合わせついでに試してみましょう」

「習得なんてすぐにはできないわよ。あなたじゃあるまいし」

「ライネは筋がいいんだから大丈夫よ。私の見立てだと二時間あれば余裕よ」

レリーナはウインクした。

「はぁ。わかったわよ」

少し呆れ顔のライネ。

そこからライネは、レリーナの指導のもと魔法の練習に入った。

(魔法か。俺も成長すれば使えるのかな?)

そう考えながら俺は、おしゃべりより先に習得した寝返りをしながら二人を見守っていた。

決して暇だからではない。

それから二時間ほど経った。

「ほんとに出来た」

ライネは驚きながら言った。

「ね? 言ったでしょ? ライネなら大丈夫って」

「それでも普通は魔法一つに、早くても数カ月はかかるわ。驚きもするわよ」

「ふふっ、これがレリーナメソッドよ」

レリーナは得意げにウインクした。

「ほら、習得できたんだし、早速試しに行きましょう!」

「そ、そうね。まずはヴァッシュとの手合わせで試さないとね」

両手をぐっと握り、気合を入れているようだ。

(ヴァッシュ達の手合わせ……見たい! ……それには直談判しかない!)

俺は意を決して声を出した。

「おかーたん……じぇいんも、いく」

(よし! 我ながら上手く言えた!)

その直談判に最初に反応したのはライネだった。

「えっ!? いま、ゼインくん喋らなかった?!」

目をぱちくりさせている。

「あら? ゼインも行きたいの? じゃあママと一緒に行きましょうか」

「えっ! スルーなの?!」

のほほんと答えるレリーナと、思わずツッコむライネ。

「子どもの成長は早いわよねぇ。じゃあ行きましょうか」

「えー、そういう問題かなぁ」

釈然としないライネをよそに、三人で、手合わせをしている広場へと向かった。

そこで俺は運命の出会いを果たすことになる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

少しずつですが、世界観やキャラクターの背景も広げていくパートになります。


この「出会い」がどう繋がっていくのか――

ゼインの今後にどう影響していくのかも描いていく予定です。

よろしければブックマークや感想などいただけると励みになります。

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