いざ、我が家へ
今回はゼインが村へと帰るお話です。
家族や仲間たちとのやり取りを中心に描いています
数時間前――
ガチャッ!
「来たよ!ママ!ゼインくん!お家に帰ろう!」
勢いよく部屋に飛び込んできたミリの声で、俺の一日が始まった。
父と母はそんな様子を微笑ましく見ている。
「じゃあ馬車を入口前に移動させるよ。護衛はガレル達にお願いできたよ」
「あら? ガレルくん達も忙しいのに、何だか悪いわね」
「ハハッ、俺も同じことを言ったよ。そしたらあいつ等、その分の酒があればいいってさ。あと久しぶりに手合わせがしたいってことだから了承したよ。ライネも時間があれば君に魔法を見てほしいそうだ」
「ふふっ、そうなの。お礼はちゃんとしなくちゃね」
どうやら護衛を雇ったらしい。
話し方から察するに、知り合いのようだ。
そして今、俺は母親に抱かれながら馬車に揺られていた。
それにしても……揺られてどのくらい経つだろう。
体内時計ではあるが、かれこれ一時間ほど経つのではないだろうか。
馬車に乗ったのは初めてだが、お世辞にも乗り心地がいいとは言えない。
道も舗装されていないため、衝撃が直接伝わってくる。
母親に抱かれている分、多少は和らいでいるのだろうが、座っていたらかなり痛いはずだ。
「ねぇママ。お尻痛くなっちゃったから立ってもいい?」
「危ないから駄目よ。もうすぐだから我慢しましょうね」
「はーい」
さすがのミリも、朝の元気が少しなくなっているようだった。
「あははっ、さすがに元気印のミリちゃんも馬車の乗り心地には勝てないか」
馬車の外から声が掛かる。
「もう!そんなに笑わなくてもいいでしょ!だったら私も歩く!」
「ごめんね、ミリちゃん。まったく、アルドもからかわないの」
「ほんと……アルドは阿呆だから気にしなくていい。あまり喋ると阿呆が伝染る」
「おいっ!人を病原菌みたいに言うな!」
「ごめん……つい本音が」
「余計に悪いわ!」
「アルドうるさい!リネアも!アルドで遊ばない!」
「おー怖い。一番うるさいのはライネだよな。なぁリネア?」
「そうそう。女の子はおしとやかでなくちゃ」
「アンタ達、なんでそんな時だけ結託できるのよ!ガレルさんからも言ってくださいよ!」
「ん? いやぁ、楽しいのは良いことだぞ。ガハハッ」
「もう!レリーナからも何か言って頂戴!」
「あらあら、私も賑やかなのは好きよ?」
「え〜、じゃあヴァッシュ……も同じよね」
「ハハハッ、よく分かってるじゃないか」
どうやら外にいる人達が護衛のようだ。
会話からして男女二人ずつの四人組。
男性陣がアルドとガレル。
女性陣がリネアとライネ。
会話からすると、ガレルがリーダーでライネが苦労人っぽい。
そして今、初めて知ったことがある。
両親の名前だ。
母親がレリーナ。
父親がヴァッシュ。
ようやく自分の親の名前が分かった。
まだ視界はぼんやりしているが、こればかりは成長を待つしかない。
それにしても苦労人のライネ。
なんだか同情してしまう。
だが両親を含めて、みんな仲がいいようだ。
その後も和気あいあいとした雰囲気は続いた。
休息を挟みながら二時間ほどすると――
「ほら、村が見えてきたよ」
ヴァッシュが声を掛ける。
「ほんとだ!もう着いちゃった!」
最初はお尻の痛みを訴えていたミリも、すっかり元気になっていた。
よほどお喋りが楽しかったのだろう。
それから村に着くまでは何事もなく――とはいかなかった。
村の手前でモンスターに遭遇したようで、戦闘があった。
だが、それほど時間はかからなかったようだ。
声から察するに、ヴァッシュとレリーナも戦闘に参加していたらしい。
(……二人って何者なんだ?)
モンスターとの戦闘から程なくして、俺たちは村へ到着した。
「あー痛かった。しかもモンスターまで出るなんて。私、はじめて見た!」
ミリは少し興奮気味だった。
「雑魚だったけど、この辺じゃ見ないよな」
「……確かに。森の奥ならいざ知らず、村の近くに出るなんて珍しい」
「たまたま群れからはぐれただけかもしれないが、村長には俺が伝えにいこう。ガレル達も一緒に来てくれ」
「それはいいが……まずは一緒に家に帰った方がいい。家族四人でな」
「……そうだな。家族で帰らなきゃな。村長のところへ先に行っておいてくれ」
「分かった。じゃあまた後で」
「また明日にでも行くわね、レリーナ」
「じゃあな!」
「また後で……」
そう言うと、護衛の四人は去っていった。
四人と別れてしばらく移動し――
「さぁ着いたぞ。ようこそ、ゼイン。今日からここが君の帰る場所だ」
「ゼインくん!ようこそ!」
「ゼイン、ここが私たち家族のお家よ」
家に入ると、俺はベッドに寝かされた。
柔らかい。
母親の胸元には敵わないが、睡魔に襲われるには十分だった。
この家に来るまでにも、たくさんの村人に祝福の声をかけてもらった。
しかも村長のところの赤ちゃんも昨日帰ったばかりだと言う。
よい友達になれるといいのだが。
早く成長して、まずは家族。
そして家や村をこの目で見て――
この世界を歩きたいものだ。
(明日が待ち遠しい)
そう思いながら、俺は眠りについた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ついにゼインの生活の拠点となる村へ到着しました。
この先、ゼインの成長とともに人間関係も広がっていく予定ですので、引き続き見守っていただけると嬉しいです。




