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少女の正体

今回も宜しくお願いします

「……あの、貴方は?」


俺と目が合い、不思議そうに尋ねる。


「僕は、ゼインと言います」


こうして俺は、一人の少女と出会った。


「ご無事で何よりです」


騎士3人は少女の前に膝をつき、俺を怒鳴った騎士が代表して声を掛ける。名前を知らないので、とりあえず立腹騎士としよう。


「皆さんが命を懸けて戦ってくださったおかげです」


「我ら3人、騎士として当然のことをしたまでです」


立腹騎士が答える。


「冒険者の皆さんも、ありがとうございました」


少女は冒険者たちに向かって頭を下げた。


すると、


「お嬢様、軽々しく頭を下げるべきではございません」


側で控えていた侍女が咎める。


「いいえ、サレナ。私はこの方たちに命を救われたのです。その方たちに今できる礼を尽くさないことこそ、恥ずべきことです」


少女は侍女のサレナを見据えて訴えた。


サレナは少し驚いたような表情を浮かべたが、


「お嬢様のおっしゃる通りです」


最後には納得したようだった。


それを見ていたハッシュが口を開く。


「なぁに、俺たちも依頼をこなしたに過ぎない。そんなに畏まらなくていいさ」


他のメンバーも頷いている。


「ありがとうございます。無事に町まで戻りましたら、少しばかり報酬にも色をつけさせていただきますね」


「おっ! さすが、分かってるねぇ!」


「やったね!」


「新しい武器が買える!」


「魔法書も買える!」


冒険者パーティーの面々は、皆喜んでいるようだ。


「それから……ゼイン様でしたか?」


少女は俺を見据える。


「はい、そうです」


「本当にありがとうございました。貴方が来てくださらなければ、皆、命を落としていたでしょう」


少女は頭を下げた。


それを見た侍女は何か言いたげだったが、先ほどのことを思い出したのだろう。ぐっと堪えているようだ。


「いえ、そんな。頭を上げてください。僕はただ、少し手を貸しただけですから」


少女は顔を上げる。


「いいえ。貴方が来てくださったことで、確実に流れが変わりました。あのような場面で助力に入る方は、そうはいないはずです」


少女は真っ直ぐに俺を見据える。


「確かにな。あんな状況で突っ込めるのは、強者か馬鹿のどっちかだ。ゼインは前者だったわけだがな。あの動きは一朝一夕で身につくもんじゃねぇぜ」


少女の言葉にハッシュも賛同する。


ハッシュの言葉に、他の冒険者たちも頷いていた。


「騎士の皆様はいかが思いますか?」


少女が尋ねる。


「はい。初めは、子どもが助力など世迷言をと思っておりました。しかし、その実力は認めるところでございます」


代表して立腹騎士が答える。


他の騎士も頷いた。


「皆様が認めるほどですか。私とそれほど歳は変わらないように見えますが……」


少女は騎士から俺へと視線を移す。


「歳は10歳です。剣と魔法は両親から学びました」


「えっ! 10歳!? 私と一緒じゃない!」


少女は驚いた。


「お嬢様、お言葉遣いが」


「……あっ」


少女は少し固まった。


そして、少し考える。


「まぁ、ゼインくんとは歳も同じだし、主従関係でもないから大丈夫!」


何やら開き直ったようだ。


「お嬢様……」


侍女は項垂れる。


「えっと……」


俺が戸惑っていると、


「あっ、ごめんね。立場上、さっきみたいにきっちりしておかないといけなくて。さっきの方が良かった?」


「いや、少しびっくりしたけど大丈夫です。僕もその喋り方の方が気が楽です」


「そう? ありがとう、ゼインくん!」


「どういたしまして。えっと……」


「あっ! そういえば自己紹介をしていなかったわね。私はこの国の第三王女、シャリーア・セルドよ。よろしくね!」


「お、王女様!?」


驚きつつも、俺は騎士の真似をして膝をつく。


「ゼインくん、頭を上げて! さっきも言ったけど、主従関係とかないから普通にしてて!」


「お嬢様、普通はそういうわけには参りません」


慌てるシャリーアに、サレナが冷静に突っ込む。


「王女様とは知らず、先ほどまでの無礼、申し訳ございません」


俺は慌てて謝罪した。


「だからぁ、さっきのようで大丈夫だってぇ」


「いえ、しかし、そういうわけには……」


「じゃあ、王女命令です! 先ほどのように自然体で振る舞いなさい!」


(……そう来るか)


「えっと……」


俺はサレナへ目をやる。


目が合うと、サレナは、


「はぁ……」


と小さく溜息をつき、こくっと頷いた。


(これは……そういうことかな)


「ええ、分かりました。シャリーア様」


「ほら! さっき言ったばかりでしょ!」


「わ、分かったよ、シャリーア」


「よろしい!」


シャリーアは満足そうに笑った。


そして、サレナは再び溜息をついた。


「お嬢様、そろそろ」


「ええ、そうね。じゃあ皆さん、王都までよろしくお願いします」


そう言うと、シャリーアは馬車へと乗り込んだ。


その後ろからサレナが乗り込もうとすると、


「あっ! ゼインくんは一緒に乗ってちょうだい!」


シャリーアが顔を出した。


サレナは驚きつつも、


「お嬢様! さすがにそれは戯れが過ぎますよ!」


「サレナ、何を怒ってるの? いざという時にゼインくんがいた方がいいじゃない」


「それとこれとは別です!」


シャリーアとサレナが言い合っていると、


「えーっと、サレナさん? 俺もそれがいいと思うぜ」


ハッシュが会話に加わった。


「……一介の冒険者である貴方が、なぜ口を挟むのですか?」


サレナは見るからに苛立っている。


「冒険者だからさ。周囲への警戒は、俺らベテランの方が向いている。何かあった時、側にゼインがいた方が王女様を安全な場所へ移動させることもできる。そして何より……」


「何より?」


「いくらゼインが強いと言っても、子どもを守るのが大人の役目だろ?」


「……」


サレナは黙ってしまった。


「私も同感です。先ほどの戦いは見事でした。判断も早い。しかし、ゼイン殿はまだ10歳。我々が守るべき民でもあります」


ハッシュに賛同したのは、立腹騎士だった。


「貴方まで……はぁ」


サレナは溜息をついた。


(サレナ……結構、苦労人かな?)


そんなことを思っていると、


「分かりました。今回は目を瞑ります」


「やったー! ゼインくん! ほら、乗って乗って!」


シャリーアは興奮気味に手招きする。


「はい、分かりま……分かったよ」


「ちょっと危なかったけど、自分で気づいたから偉い!」


「それは、どうも」


そんなやり取りをしながら、俺は馬車へと近づく。


サレナは俺が先に乗れるように、馬車から降りてくれた。


「すいません」


俺はサレナに頭を下げる。


「いいえ。お嬢様の決めたことですので」


サレナは答えた。


俺は馬車へと乗り込み、シャリーアの向かい側に座る。


「え〜、こっちに座ろうよ」


シャリーアが自分の隣の座面をぽんぽんと叩きながら訴える。


「「それはダメ(です)」」


俺と、ちょうど乗り込んできたサレナの言葉が重なった。


「え〜」


シャリーアは不服そうだったが、こればかりは仕方ない。


「じゃあ、出発します」


立腹騎士の掛け声で、馬車は動き出した。


ハッシュたちは歩きながらついてきている。


馬車の中では、


「ゼインくんは、なんであんなに強いの?」


「ゼインくんは、どこから来たの?」


シャリーアから質問攻めにあっていた。


それを見かねてか、


「お嬢様、そのように一度に聞かれても、ゼイン様はお答えできませんよ」


サレナが声を掛ける。


「それもそうね。じゃあ、いちばん気になっていることだけ聞くわ。ゼインは、なぜ一人でいて、どこから来て、どこに向かうつもりだったの?」


「……結局、3つ聞いてない?」


「さっきより少ないでしょ?」


「一番とは……」


俺はハァと小さく溜息をつきつつも、話し始める。


「僕はここから南西にある村から来たんだ。どこに行くかまでは決めてないけど、冒険者になるつもりだよ」


「冒険者? 貴方の歳で?」


シャリーアは驚いているようだった。


「サレナ、10歳から冒険者になれるものなの?」


「私も詳しくは存じ上げません」


「そうよね……。よしっ!」


シャリーアは馬車の窓を開けると、


「ハッシュさん、少しよろしいですか?」


馬車の横を歩いていたハッシュに声を掛けた。


「おう。なんだい? 姫さん」


「冒険者になるには年齢制限はあるのかしら?」


「特に決まってないが、15歳でジョブを得てからなる奴の方が多いな」


「そうですの。ありがとうございますわ」


「いいってことよ」


シャリーアは窓を閉める。


「ゼインくん、良かったね! 10歳でも冒険者になれるよ!」


シャリーアは満面の笑みで俺に報告した。


「ありがとう、シャリーア」


(とりあえず良かった)


ラミネやローゼスからある程度聞いていたものの、少し不安はあった。


シャリーアが確認してくれたおかげで、冒険者になれなかったらという不安は払拭された。


「あっ、そうだ」


「どうしたの?」


「僕もハッシュさんに聞きたいことがあったんだ。ちょっと窓を開けても大丈夫?」


「ええ、もちろん」


「ありがとう」


念のために許可を取る。


サレナも特に何も言わないので、問題ないとの判断だろう。


俺は窓を開け、ハッシュに声を掛ける。


「ハッシュさん、僕からもいいですか?」


「おう、いいぜ」


「先ほど襲ってきたサイクロプスは、本来おとなしい方のモンスターだと思うんですけど、襲われるような心当たりはありますか?」


「よく知ってるな。そうなんだよ。サイクロプスは、こっちから攻撃しない限りは基本的に問題ないはずなんだが……」


「何か心当たりが?」


「……ああ。恐らく、ここから少し離れた場所でスタンピードがあったらしくてな。その討伐が行われたらしい。あのサイクロプスたちは、そこから逸れてきたのかもしれないな」


「スタンピードですか」


「ん? 何か気になるか?」


「いえ、最近はモンスターの出現場所なんかも変わっているみたいなので、それも関係あるのかと」


「あ〜、確かになぁ。近頃、細かな異変が起きてるし、色々と用心しねぇとな」


「そうですね」


俺は数年前の魔神の襲撃を思い返す。


「だが、そんな時こそ冒険者は稼ぎ時だからな!」


「ははっ、逞しいですね」


「そうじゃなきゃ、冒険者なんてやれねぇさ」


ハッシュはニヤッと笑う。


「ね〜、ゼインくん! 私ともお喋りして!」


「あ〜、分かった」


シャリーアに呼ばれ、返事をする。


「じゃあ、姫さんの相手はよろしくな」


ハッシュはひらひらと手を振った。


俺は窓を閉める。


「じゃあ、ゼインくん! 次はね……」


その後もしばらく、車内では賑やかな時間が流れていた。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

次回も宜しくお願いします。

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