↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/35

運命の別れ目

ある出来事をきっかけに、その運命は大きく動き始める。

今回は、ゼインにとって大きな転機となるお話です。

俺とリゼは村長の頼みで果物を探しに森へと来ていた。


オーガベアを確認した森とは反対方向だが、森自体は繋がっているため油断はできない。


俺は周囲を警戒しながら進んでいく。


「……くん、ゼインくん!」


「!! ど、どうしたの? リゼ」


リゼの大きめの声に驚く。


「ゼインくん、ずっと怖い顔してるよ」


リゼは少し心配そうにしている。


「そ、そうだった? でも、いつモンスターが出てくるか分からないから、警戒しておかないと」


「こんな浅いところでモンスターは出たことないよ」


「それはそうだけど、念のためさ」


(リゼは少し楽観的な感じがするけど)


「じゃあ、せっかくだから手を繋ごうよ! 果物狩りデートだよ!」


リゼはそう言うと、俺の手を握ってきた。


「デートって。でも、こういうのもたまには良いかもね」


「でしょ?」


俺もリゼの手を握り返す。


「じゃあ、改めてデートにしゅっぱーつ!」


リゼに手を引かれる形で、果物狩りを再開した。


「この辺りにあるはずなんだけどなぁ」


少し森へ入ったところで、リゼは周囲を見渡した。

真剣な顔で木々を見つめている。

だが、一向に見当たらない。


「なかなか見つからないね。リゼはここにローゼスさんと来たことあるんだっけ?」


「そうだよ。去年もその前も、ここでパパと採ったもん!」


そう言って、リゼは自信ありげに胸を張る。


「それなら、もう少し探してみようか」


そう返事をした、その時だった。

森の奥から、不気味なざわめきが聞こえた。


「……なんだ?」


警戒はしていたつもりだ。

しかし、胸騒ぎがする。


次の瞬間――


――ギャアアアッ!


獣のような叫び声が森に響いた。

茂みが揺れる。


そして現れたのは、小柄で醜い影。

緑色の皮膚。

粗末な弓や錆びた短剣。


ゴブリンだ。


しかも、一匹じゃない。

次々と姿を現す。

十匹――いや、十五匹以上はいる。


「まさか……スタンピード!?」


普段より多くのモンスターが群れとなり、暴走する現象。


(まさか、こんな浅いところで起こるなんて。しかもこの数……二人じゃ対応できない!)


「逃げるぞ!」


俺はリゼの手を引いた。


その瞬間――


ヒュンッ、と風を切る音がした。


「きゃっ!」


リゼが小さく声を上げる。


振り向くと、彼女の腕に浅い傷が走っていた。

矢は当たらず、かすっただけだった。


しかし――


「……あれ?」


リゼの顔色が急速に悪くなっていく。


腕の傷の周囲が、じわりと黒く変色していた。


「毒……!」


ゴブリンの毒矢だ。


「しっかりしろ!」


リゼの足がふらつく。

呼吸も浅い。


「ア……アンチ……ポイズン」


リゼは解毒の魔法を唱える。

しかし、毒による症状は治まる様子がない。


(魔力を上手く使えてないのか?)


毒によって身体が思うように動かず、魔力の制御もできていないのかもしれない。


このままじゃ危ない。


すぐに村の治癒師に診てもらう必要がある。

だが、このままでは村に戻る前に追いつかれてしまう。

俺一人ではリゼを守れない。


どうする。


どうすれば――。


その時、頭に一つの場所が浮かんだ。


「神殿……」


幸い、ここは神殿に近い。


「神殿になにか薬があれば……」


お祈りに行った時は、そんなものは目につかなかった。


だが――今は僅かな希望にすがる他ない。


「……頼む」


僅かな希望の糸を手繰り寄せるように呟き、俺はリゼリアを背負った。


「絶対に助ける! 【ホウンセンス】! 【ファストステップ】!」


スキルを駆使して、森の中を全力で走る。


リゼの身体がどんどん力を失っていくのが分かる。


「リゼ!」


返事はない。


呼吸だけが、かすかに背中に伝わる。


やがて、石造りの建物が見えた。


神殿だ。


扉を押し開け、中へと入り、急いで閂を掛ける。


「グギャギャギャー!」


「ギャギャッ!」


ドンドンドンッ!


ガリガリッ!


外からはゴブリンの鳴き声と、扉を破ろうとする音が聞こえる。


(ここも危ない……)


「クソッ!」


俺は神殿内をくまなく探した。


だが、薬は一つもなかった。


リゼは呼吸がさらに弱々しくなり、衰弱が進んでいる。


「リゼ! ……いったいどうすれば……」


絶望のなか、ふと祭壇に目をやった。


すると、先ほどは気づかなかったが、祭壇には古びた箱が置かれていた。


その中には、一冊の古い本が入っている。


その表紙に――


『儀式の書』


と書かれていた。


「もしかして、これを使ってジョブ取得の儀式をするのか?」


儀式が発動するかは分からない。


もちろん前例などない。


それでも――一筋にも満たない希望にすがる。


「リゼを助けるんだ!」


俺は迷わず、儀式の書を開いた。


次の瞬間――


俺の身体が光に包まれた。


頭の奥が揺れる。


『記憶を封印させて貰うよ』


「!!」


封じられていた記憶が、一気に流れ込んできた。


今まで、ふと心にぽっかりと穴が空いていたような気分になることもあった。


その原因が、ようやく分かった。


「……そういうことか!」


目の前に文字が浮かぶ。


――ジョブ選択。


そして現れたのは――たった一つ。


死体運び屋【ネクロポーター】


死体および死に瀕したモノを運ぶ職。


「やっぱり、これが最強だ!」


俺は迷うことなく選択した。


選択した瞬間、身体を包んでいた光が俺の中へと吸い込まれる。


「これで……ジョブが取得できたのか?」


実感という実感があるわけではない。


だが、感覚的に分かるものがあった。


「俺の感覚が正しければ……」


俺は横にしていたリゼを再び背負う。


すると直後――


背中のリゼの身体が、ふっと軽くなった。


「!?」


違和感に困惑し、最悪の可能性も考えた。


だが、リゼは弱々しいながらも呼吸をしていた。


今も必死に生きようとしている。


俺は少しホッとした。


だが、安堵している時間はない。


俺は再び村を目指す決意をした。


神殿の扉へと向き直る。


リゼを背負っているので片手ではあるが、扉へ剣を向ける。


そして――


「【エアバスター】!」


【エアスラッシュ】と【バスターブレード】の合わせ技だ。


【エアスラッシュ】よりも大きな空気の刃が、扉へ向かって飛んでいく。


ドォォン!


「グギャーー!」


扉が弾け飛び、扉の前に集まっていたゴブリン達も巻き込まれて吹き飛んだ。


「ぐうぅっ!」


強力なスキルを使った反動が、右腕に跳ね返る。


「……【ホウンセンス】! 【ファストステップ】!」


痛がる暇などない。


リゼを背負ったまま神殿を飛び出し、再び村を目指し始めた。


その道中、二匹のゴブリンと遭遇した。


「グギャ!」


バシュッ!


俺に向かって矢が射られる。


しかし、矢が俺やリゼに当たることはなかった。


「……ギギャ?」


ゴブリン達は不思議そうにして、何度も矢を射ている。


しかし、結果は変わらない。


俺はそのまま駆け抜けた。


何とか撒いたようだ。


そして、村へと入る所で――


「! どうした!? 何があったんだ!?」


見張りをしていた村人数名が駆けつけてくれた。


「お、俺は大丈夫……。リゼを、リゼを早く治癒師のところへ……。リゼを助けてくれ!」


俺は残りの力を使って叫んだ。


叫んだ瞬間、視界が揺れる。


背中の微かな温もりを感じながら――


俺の意識は、ゆっくりと闇に沈んでいった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


今回は、ついにゼインがジョブを取得するところまで進みました。

そして、ここからゼインの物語は大きく動き始めます。

今回登場した【ネクロポーター】が一体どんなジョブなのか。

そのあたりも、これから少しずつ明らかにしていく予定です。


次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。