↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/35

仲間からの支え

あの3人がゼインの元へやってきます。

支え合える仲間がいるのは、とても素晴らしいことですね。

朝。


ある意味では待ちわびた朝だった。

しかし、清々しさなど微塵もない。

あるのは言葉にしがたい疲労感だけだ。


(相当こたえてるな)


ヴァッシュとレリーナが行方知れずだという報せは、ゼインに大きな心労を与えていた。


「姉さんは大丈夫かな……」


昨日の様子を見る限り、自分よりもミリの方が心配だった。着替えを済ませて部屋を出ると、一階から物音が聞こえてくる。


階段を降りると――


「あっ! ゼインくん、おはよう!」


笑顔でキッチンに立つミリの姿があった。


「おはよう、姉さん。ずいぶん早いね」


「へへっ、目が覚めちゃって。ゼインくんも早起きだね。いつもこの時間に起きてたの? 通りで朝はもういなかったわけね」


「修行が始まってからはこの時間かな」


「そうなんだ。いま朝食を作ってるから、もう少し待っててね」


そう言うと、ミリは視線を手元へ戻した。


「姉さん」


「なぁに?」


「その……大丈夫?」


「……」


ミリの手が止まり、しばしの沈黙が流れる。


やがてミリは静かに口を開いた。


「大丈夫……ではないかな。まだ受け止めきれてない自分がいる」


「……うん」


「でもね。塞ぎ込んでいても何も進まない。だから少しずつ前に進もうって思ったの」


「姉さん……」


(やっぱりミリは強いな)


「それにゼインくんも頑張ってるんだから、お姉ちゃんがしっかりしないとね」


ミリはゼインに向かってウインクをする。


そして再び朝食作りに取り掛かった。


「何か手伝おうか?」


「え? 嬉しいけど大丈夫?」


「簡単なことならできるよ」


「じゃあ、この野菜を切ってくれる? スープに使いたいの」


「分かった」


姉弟で準備を進めたことで、朝食はあっという間に完成した。


朝食を済ませると、分担して掃除や洗濯をこなす。


一通りの家事を終える頃には、ミリの顔に疲れが見え始めていた。


椅子に腰掛けたと思ったら、そのまま眠ってしまった。


ミリにそっと上着を掛け、俺は家を出た。


向かったのは、いつも剣の修行で使っている広場だ。


「ローゼスさんも来るし、今日は二十周にしておこう」


そう呟き、村の外周を走り始めた。

小さな村なので、ヴァッシュとレリーナのことはすでに知れ渡っているらしい。

道中で会う人たちにも次々と声を掛けられた。

皆心配してくれているようで、野菜なども持たせてくれた。

村人たちの優しさに触れながら外周を終え、広場へ戻る。

すると、そこには見知った顔があった。


「よぉ! ゼイン! 今日も稽古か? 精が出るな!」


「ちょっと! そんなに大きな声出さなくてもいいでしょ!」


「このくらい普通だろ?」


「僕も少し大きめだと思うな」


(相変わらず賑やかだな)


「ヤド、サシャ、カンジョウ。三人ともどうしたんだ?」


俺が尋ねると、まずヤドが答えた。


「いや、別に会う予定はなかったんだけどよ。ここに来る途中で会ったんだ」


続いてサシャ。


「そうなの。最初に私とカンジョウが合流して、最後にヤドが合流したの」


最後にカンジョウ。


「こんな偶然もあるんだねって、さっき話してたんだ」


「へぇ、珍しいこともあるんだな。それで、みんなどうしたんだ?」


再び尋ねると――


「「「ゼイン(くん)に会いに来た(の)」」」


三人の声が綺麗に重なった。


「俺に会いに?」


きょとんとする俺を見ながら、サシャが続ける。


「ゼインくんのお父さんとお母さんが行方知れずだって聞いて」


「……そっか。やっぱり話が届くのは早いな」


「だからゼインは大丈夫かと思ってよ。外周してるって聞いたからここで待ってたんだ」


「僕ら三人とも考えていたことが同じだったみたいでね。心配してたんだ。ゼインは大丈夫かい?」


三人とも俺のことを心配して来てくれたらしい。


胸の奥がじんわりと熱くなる。


「ありがとう、三人とも。大丈夫……って言っていいのか分からないけど、稽古ができるくらいには元気だよ」


それを聞いた三人の表情がほころんだ。


「それを聞いて安心したよ。これ、うちの宿でも使ってる枕なんだ。睡眠は大事だからな。良かったら使ってくれ」


ヤドは背負っていた大きなリュックから枕を取り出して手渡した。


「ありがとう。すごく柔らかいな。これで寝たら気持ちよさそうだ」


「だろ? ミリさんとリゼリアちゃんの分もあるから持って行ってくれ。ちなみにリゼリアちゃんの枕は表側がYESで裏側が――やっぱりYES! これでお前らの夜も……イダッ!」


「何やってんのよアンタは!」


サシャの拳がヤドの後頭部に炸裂した。


「ははっ。まぁデザインはともかく、有り難くいただくよ」


「へへっ」


ヤドも頭を押さえながら笑っていた。


「私からはこれよ」


サシャが差し出したのは数枚の紙だった。


目を通してみる。


「これは……レシピか?」


「そうよ。うちで人気のラビットの香草焼きと山菜スープのレシピ」


サシャは得意げに胸を張った。


「えっ!? いいのか? そんな貴重なレシピを」


「ちゃんとパパにも特別に許可はもらってるわ。家でもうちの料理を食べて元気になってほしいのよ」


サシャの父は昔、王都でも腕を振るっていた凄腕の料理人だ。


いまでも弟子入りを希望する人が村を訪れるほどである。


そんな人物がレシピを他人に教えるなど、普通では考えられない。


「こんな貴重なものを頂けるなんて……」


「当然だけど、レシピ通り作ってもパパの料理には到底届かないわ。そして次は私がその味を受け継ぐの。だからちゃんとうちにも食べに来なさいよ」


「ああ。もちろん」


サシャは満足そうに笑った。


「じゃあ、僕からはこれを」


カンジョウが差し出したのは二つのブレスレットだった。少しくすんでいるが、元は金色だったのだろう。

それぞれに赤と青の小さな石が埋め込まれている。


「これはブレスレットか?」


「そうだよ。でも、ただのブレスレットじゃないんだ。ちょっとこっちを着けてみて」


勧められるまま、俺は赤い石の方を腕にはめた。


「じゃあ僕はこっちを」


青い石の方はカンジョウが身に着ける。


「これはすごい機能があってね。心の中で、もう片方のブレスレットを思い浮かべる。そうすると――」


そう説明した直後、カンジョウのブレスレットの石が青く光った。


「「「おぉ……!」」」


俺とヤド、サシャの口から感嘆の声が漏れる。

やがて光は静かに消えた。


「じゃあ次はゼインがやってみて」


言われるまま、カンジョウのブレスレットを思い浮かべる。

すると今度は、俺の腕のブレスレットが赤く光った。


「「おぉ!」」


ヤドとサシャが再び声を上げる。

そして光は消えた。


「使い方は分かったけど、どういう意味なんだ?」


「これは相手が健在かどうか分かるブレスレットなんだ。相手が元気なら今みたいに強く光る。怪我や病気で弱っていると光も弱くなるんだよ」


「へぇ……そうなのか。でも結構いい物なんじゃないか?」


「この前、父さんと行った骨董市で見つけたんだ。売ってた人は機能を知らなかったみたいでね。かなり安く買えたんだよ」


カンジョウも商人の跡取りとして着実に成長しているらしい。


「ちなみに、本当の価値はいくらくらいなんだ?」


「そうだねぇ。あくまで僕の見立てだけど、金貨二十枚くらいかな」


「「「金貨二十枚!?」」」


俺だけでなくヤドとサシャも目を丸くした。

この世界には銅貨、青銅貨、銀貨、金貨の四種類がある。

銅貨一枚が十円。

青銅貨が百円。

銀貨が千円。

そして金貨が一万円。

つまり、このブレスレット一つで約二十万円だ。


「一つ金貨十枚……それでも十分高いけど」


「えっ?違う違う。一つ金貨二十枚だよ」


「「「一つ金貨二十枚!?」」」


再び三人の声が重なった。


「……いや、流石にもらえないって」

(合わせて金貨四十枚はちょっと……)


「いやいや。だから安く買えたって言ったじゃないか。二つで金貨三枚だよ」


「「「おおぅ……」」」


それでも十分高価だ。

だが先ほどの金額を聞いた後では、ずいぶん安く感じてしまう。


「僕が持っているより、ゼインとミリさんが持っていた方がいいと思ってね」


(……そうか)


もしかしたら家族二人だけになるかもしれない。

そんなことは考えたくもない。

だが可能性がないわけではない。

カンジョウなりに考えてくれたのだろう。


「……」


少し考えたあと、俺は答えた。


「カンジョウ。ありがたく受け取るよ」


「うん!」


そしてブレスレットを受け取った。


「三人とも、本当にありがとう」


俺は深く頭を下げた。


「そんなこと気にするなよ! 俺たちの仲だろ?」


「そうよ。当然じゃない」


「うん。僕たちはずっと支え合ってきたんだから」


三人とも満面の笑みを浮かべる。


「……」


目頭が今までにないほど熱くなる。


「……ありがとう」


三人の姿が少し滲んで見えた。


三人と別れたあと、修行をこなした。


「もうそろそろか」


ローゼスが来る時間が近づいている。


「早めに帰って昼食にしよう」


俺は家路についた。

ヤド、サシャ、カンジョウ。

今後もこの3人との関係性を描いていけたら良いなと思っています。

次回はローゼスからヴァッシュとレリーナについて語られます。

ぜひお読みいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。