召集と壊れる日常
ヴァッシュとレリーナがついに召集される日が来ました。
しばしの別れではありますが、ゼインもミリも両親を信じて待ちます。
【ホウンセンス】を習得した日の夜、俺とミリはヴァッシュとレリーナに呼ばれ、家族での話し合いが行われた。
「ゼイン、ミリ。剣や魔法の修行をよく頑張ったな。教えられることは、父さんも母さんもこれで全て教えたつもりだ」
ヴァッシュは真剣な面持ちで語る。
「明後日、お父さんとお母さんは勅命により、魔人討伐隊に参加するため村を出る。ラミネとローゼスも一緒だ」
俺とミリは静かに頷いた。
「でも大丈夫よ。すぐに帰ってこれるわ。それまでは村長さんに様子を見てもらうように頼んであるからね」
緊張した雰囲気を察したのかレリーナが優しく話す。
「明日は休息日にして家族水入らずで過ごそう」
「うん!」
俺とミリは、ヴァッシュの提案に力強く頷いた。
翌日は、家族でピクニックを楽しんだ。昼寝をしたり、手作りのトランプで遊んだりして、穏やかな時間を過ごした。
そして、出発の日。俺とミリ、リゼ、そして村長は村の入口でヴァッシュ、レリーナ、ラミネ、ローゼスを見送った。
リゼとミリは笑顔を作っているものの、その目は赤く染まっていた。
半年ほど経ったある日、村に来た行商人から、討伐軍が魔人を撃退したという話を聞いた。
俺とミリ、もちろんリゼも、喜びで胸がいっぱいになった。
魔人の撃退は嬉しいが、それ以上に、両親が帰ってくることが何よりも嬉しかった。
そして、報せから五日後、ラミネとローゼスが帰ってきた。
「お帰りなさい!」
リゼは嬉しそうに抱きつく。
「「ただいま、リゼリア」」
二人もリゼを抱きしめ返す。
「あの…お父さんとお母さんは一緒じゃないの?」
ミリが不安そうに尋ねると、ラミネとローゼスは顔を曇らせた。
しばしの沈黙の後、ローゼスが口を開く。
「……二人は、行方が分からなくなってしまったんだ」
「えっ……」
「それは一体…」
俺とミリは言葉に詰まる。
動悸がして、言葉だけでなく息まで詰まりそうだ。
場には重苦しい空気が漂った。
俺もミリもしばらくただ立ち尽くす。
再びローゼスが口を開く。
「詳しいことは明日話すよ。今日は混乱しているだろうから、二人とも休んだ方がいい。明日のお昼頃にお家に伺うよ」
ローゼスは優しく声を掛けるが、俺もミリも気分は晴れない。
(ここは俺がしっかりしよう)
「…分かりました。行こう、姉さん」
「……」
ミリはまだ呆然としている。
俺はミリを支えながら、家路についた。
家に着くと、ミリが小さな声でつぶやく。
「ゼインくん…お父さんとお母さん、いなくなっちゃったって」
「うん」
「どうして……?帰ってくるって言ってたのに」
「大丈夫、姉さん。今日はゆっくり休もう」
「……うん」
ミリはふらふらと自室に入り、俺も自室に戻る。
「父さん、母さん……」
いまはただ祈ることしかできない。
(俺はまた、何もできないのか……)
悔しさともどかしさが同時に胸を突き上げる。
(ダメだ、弱気になるな。ローゼスさんは“行方が分からない”と言った。最悪の展開ではないはずだ。明日、話を聞いても遅くはないはずだ)
「…僕も、もう寝よう」
ベッドに身を横たえ、目を閉じる。眠る気分ではなかったが、明日を待つしかない。
わずかな希望にすがるように――俺は瞼を閉じた。
魔人の撃退に成功したという喜ばしい報せから、ヴァッシュとレリーナが行方不明という悪報。
ローゼスはなにかを知っているようだが、果たして何が語られるのか。
魔人とはどのような存在なのか。
今後の物語で少しずつ描いていければと思います。
そしてゆくゆくは閑話などを交えていければとも思っております。
これからもゼインとその周囲の人達を見守ってもらえると嬉しいです。
宜しくお願いします。




