王家の勅命
神殿から戻ったゼイン達を待っていたのは、森の異変に関する新たな報せ。
平穏な村にも、少しずつ不穏な影が近づいています。
「……王家の紋。勅令か」
「ああ。異常がある場合は渡してくれって頼まれててな」
「全く。アイツも大変だな」
ヴァッシュは小さく息を吐いた。
「ガレルは中身を知ってるのか?」
「まさか。中身を聞くなんて、俺たちの仲でも不敬だろ。だが……想像はつくさ」
「分かった。一度家へ戻ってから、お前たちの所へ行くよ。子どもたちも送りたいしな」
ヴァッシュが俺とリゼへ視線を向ける。
「もしかしてと思ったが、息子のゼインくんか? 大きくなったなぁ!」
「あはは……どうもお久しぶりです」
ガレルは俺の頭をグリグリ撫で回した。
「そして、そっちのお嬢ちゃんは?」
「こっちはリゼリア。ローゼスの娘だよ」
「おお! ローゼスのところの! これまた大きくなったなぁ!」
(なんか親戚の叔父さんみたいだな……)
リゼは俺の後ろへ隠れながら、小さく顔を出した。
「ど、どうも……」
「ガッハッハ! 怖がらせちまったかな?」
「ははっ。じゃあ2人とも帰ろうか。ガレル、また後で」
「ああ。いつもの宿にいるからな」
そこでガレルとは別れ、リゼを家まで送り届けたあと、俺は帰宅した。
家ではレリーナとミリが夕食の準備をしていた。
「あら。あなた、ゼイン。お帰りなさい」
「お父さん、ゼインくん! お帰りなさい!」
「「ただいま」」
俺とヴァッシュは湯浴みで汗を流す。
その後、夕食を済ませると、ヴァッシュは家族全員が揃った場で話を切り出した。
「レリーナ。実は……」
ヴァッシュはガレルとの会話、そして封筒のことを話した。
「……そう。じゃあ読んでみましょう」
「ああ」
ヴァッシュは封筒を開き、中の手紙へ目を通す。
「なんて書いてあるの?」
レリーナが尋ねる。
「“物資や兵力が整うであろう三年後を目安に召集をかける。そちらも準備を進めていてほしい”……そして、今回召集されるのは俺とレリーナ。それにラミネとローゼスだ」
「そう……。確かに魔人となれば、そうなるわね」
部屋の空気が張り詰めるのを感じた。
「お父さん。ラミネさんは何となく分かるけど、なんでローゼスさんまで?」
俺は疑問を口にする。
「ラミネはお父さんたちと同じで、凄腕の元冒険者。ローゼスは元・王都直轄研究施設の所長だったんだ」
「えっ!? そうなの!?」
ラミネだけじゃなく、ローゼスも凄い人物だったらしい。
「ああ。高ランク冒険者や王都直轄施設にいた優秀な職員は、引退後でも勅命が下れば参加義務があるんだ。だから向こうにも同じ手紙が届いているはずだよ」
「そうなんだ。だから僕やお姉ちゃんがいる前でも話を始めたんだね」
「ああ。家族全員に関わることだからな。それに、お前たちも理解できる年頃だろうと思ってね」
するとミリが、不安そうな顔で尋ねた。
「でも……お父さん、お母さん。大丈夫なの?」
「ふふっ。大丈夫よ。お父さんとお母さんの強さは分かってるでしょ?」
「うん! そうだよね!」
レリーナの言葉を聞いて、ミリは少し安心したようだった。
「じゃあ私、もう寝るね! おやすみ!」
そう言うと、ミリは足早に部屋へ向かっていく。
「じゃあ僕も先に寝るね。おやすみ」
「「おやすみ」」
俺も部屋へ向かう。
その途中、ミリの部屋の前を通りかかった。
すると、小さな泣き声が聞こえてきた。
「うぅ……グスッ……お母さん……お父さん……」
ミリは泣いていた。
ミリももう十歳だ。
どれほど危険な話なのか、さっきの空気で察してしまったのだろう。
さっきの笑顔は、不安を隠すためのものだった。
(強い子だな……。俺もしっかりしないとな)
そう思いながら、俺は自分の部屋へ戻る。
そして静かに眠りについた。
ここから物語全体の流れが少しずつ動き始めます。
昨今の作品にしてはかなり長い前置きだと思います。
しかし、その前置きが大事だと個人的には思っています。




