前篇:初級スキルと思わぬ拾い物
剣と魔法の修行を続けるゼイン。
少しずつ成長していく中で、初めての実戦にも挑みます。
そして思わぬ拾い物とは?
今回は前後編に分かれての投稿になります。
今日は休息日。
ヴァッシュとレリーナに稽古をつけてもらいながらも、休息日にはリフレッシュを兼ねてヤド達と遊んでいる。
もちろんリゼリアも一緒だ。
「そういえばゼイン。お父さんとお母さんに稽古してもらってるってホントか?」
ふと尋ねるヤド。
「そうそう! 私も気になってた!」
「ぼ、僕も」
サシャとカンジョウも興味ありげな様子だ。
「ホントだよ。お父さんには剣を、お母さんには魔法を教わってるんだ」
「へぇ〜。あと、よく村を走ってるけど、あれも稽古か?」
「そうだね。体力が必要ってことで、村の周りを三十周、息切れなしで走るのを目標にしてるよ。まだまだだけどね」
「は〜、すげぇな! 俺も剣を習いたいとは思ったけど無理だ!」
ヤドは感心したように笑った。
「リゼリアも魔法を教えてもらってるんだよね?」
「うん。ゼインくんと一緒に稽古してるの!」
「やっぱり行動力が凄いわね」
サシャも別の方向から感心している。
「でもヤドやサシャ、カンジョウも家業を継ぐために頑張ってるんだろ?」
そう。三人とも家業があるため、休息日が合った日に顔を合わせている。
「まぁな。俺は会計と接客を中心に任せられるようになってきた」
「私は接客と、簡単な料理なら作ってるわ」
「僕は目利きの練習と金勘定を仕込まれてるよ」
それぞれ忙しい日々を送っているようだ。
(四〜五歳で家業の特訓なんて、前の世界じゃ考えられないな)
俺も心の中で三人に感心していた。
「まっ! 今日は休息日だし、思い切り羽を伸ばそうぜ!」
ヤドの一声もあり、五人で夕方まで遊んだ。
しかし、不思議と疲れはなかった。
(子どもの体力。恐るべし)
三人と別れ、リゼリアと一緒に家路につく。
(そういえば……)
「リゼリア。もうすぐ誕生日だよな?」
「そうだよ! ゼインくんよりお姉さんになるの!」
「僕より十日早いだけだろ」
「それでも、その間はお姉さんだもん!」
えっへんと胸を張るリゼリア。
「まぁ、プレゼントはお楽しみということで」
「うん! 前にもらった花瓶も、お家で使ってるよ!」
「それは良かった」
他愛もない話をしながらリゼリアを家まで送り届け、俺も帰宅した。
稽古を始めて数カ月。
村を十周するところまでは、何とかできるようになっていた。
「ゼイン。今日は初級スキルを教えよう」
「ホント!?」
「あぁ。体力も少しずつ付いてきているし、初級の中でも扱えるものはあるさ」
「まずは見てみな。いくぞ」
そう言うと、ヴァッシュは軽く構えた。
そして――
「【スラッシュ】!」
そう唱えて剣を振るう。
ゴウッ――!!
凄まじい風圧が巻き起こった。
近くで見ていた俺は、思わずバランスを崩す。
「おっと。悪い悪い」
ヴァッシュに手を借りて立ち上がる。
「お父さん、今のは?」
「初級スキル【スラッシュ】。斬撃の威力を上げるスキルだ。威力は使用者の力に依存する」
「つまり、力が強ければ強いほど強力になるってこと?」
「まぁそうだな。ただしスキルにも限界はある。限界を超えたまま使っても、あまり意味はない」
「なるほど」
(そこで中級に分かれていくのか)
「ゼインの歳なら、初級を使えるだけでも立派だ。諦めなければ、すぐ中級も使えるようになるさ」
「うん!」
「じゃあもうひとつ。いくぞ――【ファストステップ】」
「!!」
(き、消えた!?)
目の前にいたはずのヴァッシュが消えた。
訳も分からず目をぱちぱちさせていると――
「隙あり」
コツンッ。
「あでっ!」
後頭部に軽い衝撃が走った。
振り向くと、ニヤニヤしているヴァッシュがいた。
「ハハッ。今のが【ファストステップ】。敏捷性を上げるスキルさ。これも【スラッシュ】と同じで――」
「使用者の力に依存する。でしょ?」
「その通り」
ヴァッシュは満足そうに笑い、俺の頭を撫でた。
「じゃあ今日は、いま教えた技を中心に稽古してみよう」
「うん!」
それからはスキル中心の稽古になったが、なかなか上手く使えなかった。
「よし、今日はここまでにしよう」
ヴァッシュが稽古の終了を告げる。
「あれ? 今日はなんだか早くない?」
「そ、そうか? いつもこんなものだろう」
ヴァッシュは分かりやすく狼狽えた。
「そ、そうだ! 少しだけ森へ行ってみよう! 下級モンスターなら、いい実戦相手になるぞ!」
(何か隠してるのは分かるんだが……でも実戦か)
「そうだね。僕も今の実力を試してみたいし、行ってみたい」
「よし! じゃあ行くか!」
ヴァッシュに連れられ、村に近い森へ入る。
数分ほど進むと、兎のようなモンスターが現れた。
「あれはラビッツ。下級モンスターだ。突進をしてくるから気をつけなさい」
「うん――ハァッ!」
気合を入れて斬りかかる。
だが――
ダッ!!
ラビッツが真っ直ぐ突っ込んできた。
「いっ……! ぐっ!」
予想以上に速い。
腹部に頭突きを食らってしまった。
ラビッツはすぐに距離を取る。
「ゼイン。大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
驚いて食らってしまったが、そこまで大きなダメージではない。
再び剣を構える。
(油断はない。大丈夫)
フーッと息を吐き、相手を見据える。
そして――
(来たっ!)
ラビッツが再び突進してきた。
(受けるか……いや!)
「【ファストステップ】!」
習ったばかりのスキルを使い、ほんの少し横へ動く。
「!!」
頭突きを空振りしたラビッツは、そのまま木に激突した。
それを見た俺は、剣を収める。
「ゼイン! スキル使えたじゃないか!」
ヴァッシュが嬉しそうに笑う。
「ハハッ。少し横に動くくらいだったけど、真っ直ぐ来るだけなら大丈夫だと思って」
「なるほど。その判断は間違いじゃないが、正解でもない」
「え?」
ヴァッシュは真剣な表情になった。
「まず一つは油断だ。今回は良かったが、相手によっては初撃でお前は死んでいたかもしれない」
「……うん」
“死”という言葉の重みを、これほど強く感じたことはなかった。
(経験したからこそ分かる重みだな)
「二つ目。上手くいくか分からないスキルを安易に使わないことだ。稽古で安定しないものは、自分だけじゃなく仲間も危険に晒す」
(確かに……)
どこかで、
“失敗してもヴァッシュがいるから大丈夫”
そう思っていた。
それもまた油断だった。
「だが二つ目に関しては、無理だと分かっていてもやらなきゃいけない時もある。まぁ、ゼインなら大丈夫だろう」
そう言って、ヴァッシュは再び笑顔に戻った。
「よし! この辺はラビッツが多い。あと二〜三体ほど相手にしたら帰ろうか」
「うん」
その後はヴァッシュの助言も受けながら戦い、一体目より遥かに良い実戦になった。
教えてもらったスキルのコツも大分掴めてきた。
実戦を終えて森から出ようとした時。
視界の端で、何かがキラリと光った。
「お父さん。何か光ったよ」
「本当かい? 見に行ってみよう」
周りを警戒しつつ、二人で近づいていく。
茂みを掻き分けるとそこには、二枚の羽が落ちていた。
薄っすらと金色に輝いている。
「ゼイン! これは珍しいものかもしれないぞ!」
「え?」
ヴァッシュは羽を見るなり、興奮した様子を見せた。
「お父さん、これは?」
「これは恐らく、聖大鳳〈ホーリーフェニックス〉の羽だ」
「ホーリーフェニックス?」
(なんか厨二病っぽい名前だな)
「聖大鳳は滅多に姿を見せない鳥なんだ。凄まじい魔力を持っていて、その身体は金色に輝いていると言われている」
「そうなんだ。でも光ってたら逆に目立ちそうだけど」
「……確かに。そういえば、お母さんが見たことあるって言ってたな。お母さんなら詳しいことを知ってるかもしれない」
「そうなんだ。じゃあ帰ったら聞いてみよう」
そして俺たちは、羽を持って家へ帰った。
初めての実戦ということで、ゼインの未熟さや成長途中の部分やヴァッシュも親として、そして師匠としてゼインに向き合っている様子を描いてみました。
後編では、リゼリアとの関係に少し変化が訪れます。




