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後篇:聖大鳳の羽と守るべき人

後篇になります。

賑やかな時間の中で、ゼインとリゼリアの関係の変化を描いています。

「「ただいま」」

「あら、お帰りなさい。2人とも」

「お帰りなさい!」

レリーナとミリの声がキッチンから聞こえた。

「2人とも何してるの?」

何気なく尋ねると――

「え!? え〜っと……」

ヴァッシュと同様に狼狽えるミリ。

「うふふっ、ミリにお料理を教えてあげてるのよ」

「そ、そうなの!」

レリーナが代わりに答えてミリが肯定する。

「そうだ! 今日はリゼリアちゃんも呼んで食べてもらいましょう!」

「え? いやいや、急には向こうも無理でしょ」

「それは分からないわよ? とりあえずお話だけでも行ってきてくれる?」

「……分かった。行ってくるよ」

「よろしくね〜」

そのままリゼリアの家へと向かった。

その途中でラミネさんに会った。

「こんにちは。ラミネさん」

「あら、こんにちは」

「お出かけですか?」

「えぇ。ちょっと用事があってね」

柔らかな笑顔で答えるラミネ。

「ゼインくんはどうしたの?」

「お母さんがリゼリアも夕食を一緒にどうかって、お話に行こうと思ってたんですけど、急には無理ですよね」

「あら〜そうなの? 全然大丈夫よ。家にいるからぜひ誘ってあげて。じゃあまたね」

「わかりました。じゃあまた」

軽く挨拶を交わし、再びリゼリア家へ向かう。

トントントンとノックする。

ガチャッ。

「ゼインくん!」

「デジャヴ!」

軽く驚きつつリゼリアを受け止める。

「だからリゼリア……」

「えへへっ」

いたずらっぽく笑うリゼリア。

「はぁ。もういいさ。そうだ。今日はお母さんが夕食一緒にどうかって」

「ほんと!? 行く行く!」

食い気味に返答があった。

「ラミネさんには許可を貰ったけど、ローゼスさんと村長は?」

その時――

「いやぁ。ゼインくん。ちょうど良かった。私も父も出掛ける用事があったんだ」

「ハッハッハ、そうそう。ちょうど良かったわい」

リゼリアの後ろからローゼスと村長が顔を出す。

「じゃあリゼリア。ちゃんと支度をしてきなさい」

「はーい」

リゼリアは家の中へと戻っていった。

「じゃあ僕たちも失礼するよ」

「そうじゃな。ゼインくん、ではまた」

そう言うと2人とも足早にその場を後にした。

10分ほど待つと――

「お待たせ!」

リゼリアが家から出てきた。

「じゃあ行こう!」

「はいはい」

リゼリアに手を引かれ、自宅へと戻った。

自宅前まで来ると――

「ん?」

違和感に気づく。

「どうしたの?」

「家の明かりが消えてるんだ。みんないるはずだけど」

家を出る時までは確実に灯りはついていた。

(……なにかあったのか?)

「周りはとくに異変はないけど」

「ゼインくん……」

リゼリアも不安なのだろう。

いつも以上に俺の腕をギュッと掴んでいる。

「とりあえず入ってみよう」

意を決してドアを開ける。

中は真っ暗だ。

「みんなは?」

そう呟いたその時――

パッ!!

突然視界が白くなり、たまらず目を閉じた。

リゼリアの腕にも力が入ったことが分かった。

俺はとっさにリゼリアを庇うように抱きしめる。

(いったい何が――?)

考えを巡らせていると、

「あら〜、2人とも。大胆ねぇ」

「??」

おっとりとしたレリーナの声がした。

ゆっくりと目を開け、家の中へと視線を向ける。

そこにはレリーナを始め、ヴァッシュにミリ。

そしてラミネ、ローゼス、ノルド、村長がいた。

「え? みんなどうして?」

俺はもちろん、リゼリアも呆気にとられていると、

「実はね。もう少ししたらリゼリアの誕生日でしょ? ノルドもお祝いしたかったんだけど、明日には街に戻らないといけないの。だから少し早めにお祝いをすることにしたの」

とラミネがことの経緯を説明する。

「それは分かりましたけど、なぜ家へ?」

そう。早めにお祝いしたいなら、なぜ家へ来る必要があったのか。

その疑問に答えたのはレリーナだった。

「ほら。リゼリアちゃんとゼインって誕生日が10日しか離れてないでしょ? それなら一緒にお祝いしたら良いんじゃないかと思って、リゼリアちゃんの家族と相談して、一緒にすることになったの」

「いや、それって迷惑なんじゃ……」

(誕生日って特別なもののはずだし)

「いやいや、迷惑だなんてとんでもないよ。赤ちゃんの頃からリゼリアと一緒にいてくれて、もう僕らは家族のようなものだよ」

「ハッハッハ、そうじゃよ。家族が一緒に祝うことに迷惑なことなぞ無いわい」

ローゼスと村長が明るく答える。

「リゼリアがここまで明るく元気に育ってきたのも、君がいてくれたからさ。ありがとう」

ノルドからもお礼を言われた。

「でもリゼリアの気持ちも考えないと」

「私はゼインくんと一緒にお祝いしたい!」

食い気味に答えるリゼリア。

「決まりだな。よし! お祝いだ!」

ヴァッシュの声を皮切りにお祝いが始まった。

「ゼインくん、リゼリアちゃん! ちょっと早いけどお誕生日おめでとう!」

ミリから差し出されたのは、森で採れる果物が乗ったケーキ。

「もしかして、さっき作ってたのって」

「えへへ、そうなの。お母さんに教えてもらいながら作ったんだ! お口に合うと良いけど」

差し出されたケーキをリゼリアと一緒に一口食べる。

「おいし〜!」

リゼリアは目を輝かせている。

「ホント? 良かった。ゼインくんはどう?」

「うん。とっても美味しいよ。ありがとう、お姉ちゃん」

「えへへ」

ミリは照れくさそうに笑った。

その後はレリーナとラミネの作った料理も並び、食事は進んでいった。

「あっ」

「どうしたの?」

俺の間の抜けた声にリゼリアが尋ねる。

「いや、この前誕生日プレゼントの話をしただろ? まだ用意できてなくて」

「なんだそんなことか。一緒にお祝い出来ただけでも十分だよ」

リゼリアは笑顔で応える。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……そうだ!」

(プレゼントできそうな物があるじゃないか!)

「ちょっと待ってて」

自室へ向かい例の物を持ってくる。

「これ。あげるよ。なんか珍しい物みたいだから」

「わぁ! 綺麗! これって羽?」

「うん。珍しい物らしくて、お母さんに聞こうと思ってたんだけど」

「あら〜? それがお父さんと拾った羽ね」

一部始終を見ていたレリーナが声をかける。

「そうだよ。お父さんがお母さんなら分かるかもって」

「そうねぇ。聖大鳳〈ホーリーフェニックス〉の羽で間違いないわ」

レリーナが断言すると、それを聞いていた他の面々も――

「やっぱりそうだったか! 初めて見たぜ!」

「これがあの聖大鳳の。僕も初めてです」

「ハッハッハ。わしも初めてじゃ」

と様々な反応を見せた。

ミリとノルドはあまりピンと来ていないようだった。

「これってそんなに凄い物なの?」

「ええ。聖大鳳は滅多に人前へ姿を見せない幻獣なの。その羽は強い魔力を帯びていて、お守りや高級な魔道具の素材として扱われることもあるわ」

(そんなに貴重な物なのか)

内心驚いていると

「私はレリーナと一緒に姿を見たわね」

「そうねぇ。懐かしいわ」

「ラミネさんも見たの?しかもお母さんと一緒に?」

「ええ。ゼインくんはレリーナやヴァッシュが冒険者をやってたって聞いたことあるかしら?」

「はい。この前、聞きました」

「実はね。私も冒険者だったの。レリーナとは臨時だけどパーティを組んだこともあってね。その時に一緒に見たのよ」

「あら〜懐かしいわね。ラミネちゃんが【紅の剣士】として頑張ってたころね」

「く、紅の剣士?」

「ちょっとレリーナ! それは言わなくてもいいでしょ!」

「あら〜? ラミネちゃんもリゼリアちゃんに私の【万識】のこと言ってたみたいだしねぇ」

「そ、それは話の流れで……」

あたふたとするラミネと、いたずらっぽく笑うレリーナ。

(ラミネさんも冒険者だったのか。今度いろいろと聞いてみたいな)

そんなことを考えながら、俺は羽をリゼリアへ差し出した。

「改めて誕生日おめでとう。良かったら受け取って」

「ありがとう! 大切にするね!」

リゼリアは嬉しそうに羽を抱きしめた。

しかし――

「でも……」

「?」

何かを言いたそうにしている。

「どうしたの?」

「ほんとはね。少し迷ってたんだけど」

「うん」

「5歳の誕生日になったら、ゼインくんにお願いしたいことがあったの」

「お願い?」

「うん。でも素敵なプレゼントも貰っちゃったし、迷惑かなって」

「迷惑だなんて。僕にできることならやるよ」

「ほんと?」

「もちろん」

リゼリアは少しもじもじした後、小さな声で言った。

「私のこと、リゼって呼んでほしいの」

「「それはまだ早ーい!!」」

「「!?」」

突然の大声に俺とリゼリアは驚く。

声の方を見ると、ローゼスとノルドが必死の形相でこちらを見ていた。

しかも2人とも、他の面々に羽交い締めにされている。

「あ〜ゼイン、こっちは気にしなくていいぞ」

「そうよ。ゼインはなんて応えてあげるの?」

「ふふっ、出来ればリゼリアちゃんの希望を叶えてほしいわ」

「ハッハッハ。初々しいのぅ」

ヴァッシュ、レリーナ、ラミネ、村長はにこやかだ。

「?」

ミリだけがきょとんとしている。

(リゼって愛称か? まぁ幼馴染だし、愛称で呼ぶくらい別にいいよな)

「わかったよ。リゼリア……じゃなくてリゼ」

「……っ!! やったぁ!」

リゼリア――いや、リゼは飛び跳ねながら嬉しそうにしている。

さっきの羽より嬉しそうだ。

(そんなに愛称で呼ばれるのが嬉しかったのか?)

「そんなに喜ぶことかな?」と呟いた。

すると――

「あら? 教えてなかったかしら?」

レリーナが不思議そうに首を傾げた。

「愛称で呼ぶのって、家族とか親族みたいに特別に仲の良い相手が基本なのよ?」

「……え?」

「しかも異性にお願いする場合は、“そういう関係になりたい”って意味になるの」

「ええっと、つまり―?」

レリーナはにっこり笑った。

「リゼリアちゃんの方から告白して、ゼインが受け入れたってことね。しかもこの形だと婚約かしら」

「えーー!?」

思わず大きな声が出る。

「僕、全然知らなかったんだけど!?」

「あらそう? でもリゼリアちゃんは勇気を出してあなたに告白したのよ?」

「ぐっ。それを言われると……」

リゼリアへ視線を向けると、不安げな表情をしていた。

「ゼインくん。もしかして嫌だった?」

赤ちゃんの頃からずっと一緒だった。

今まで恋愛対象として見ていたわけじゃない。

でも、今の話を聞いて改めてリゼリアを見ると、とても可愛らしく、一緒にいる時間もとても楽しかった。

そして何よりリゼリアの笑顔で、俺の心までいつも明るくなっていた。

少し考えて、俺は答える。

「そんなに泣きそうな顔をしなくてもいいよ。これからもよろしくね、リゼ」

「……! うん!」

リゼは再び満面の笑みに戻った。

「ふふっ。相手がゼインくんなら安心だわ。ほら、あなたもノルドもしっかりしなさい」

ラミネが2人へ声をかける。

「でも婚約なんて。まだ早いんじゃ……」

「そうだよ。リゼリアはまだ5歳になるばかりじゃないか」

ローゼスとノルドは難しい表情をしていた。

「あのねぇ。赤ちゃんの頃から良くしてくれるゼインくん。しかもレリーナとヴァッシュの子よ? 他の見知らぬ男より信頼できるでしょ?」

「「……た、確かに」」

「ハッハッハ。わしもゼインくんなら安心じゃ」

村長の後押しもあり、2人も徐々に受け入れつつあるようだった。

その後ろでは、先ほどきょとんとしていたミリが――

「もしゼインくんとリゼリアちゃんが結婚したら、リゼリアちゃんも家族になるってこと!? 凄い! 私うれしい!」

と嬉しそうにはしゃいでいた。

その後も誕生日のお祝いは続き、やがてお開きとなる。

俺たちはリゼリア一家を見送るため外へ出た。

その頃にはローゼスとノルドも、だいぶ受け入れられたようで――

「ゼインくん。リゼリアをよろしく頼むよ!」

「俺のことはぜひ『義兄さん』と呼んでくれ。義弟よ」

ローゼスさんはお酒も入っているせいか泣きながら声をかけてきた。

ノルドも泣いていたが、お酒は飲んでいない。

(雰囲気に酔ったな)

「まったく、2人とも仕方ないわね。ほら、行くわよ」

「どれ、わしも手伝おう」

酔ったローゼスをラミネと村長が支える。

ノルドはもちろん自分で歩いていった。

「ゼインくん。今日はありがとう。このプレゼントもとても嬉しい」

そう言って、リゼは羽を見せる。

「たまたま見つけただけだよ。でも僕も持ってるから、お揃いだね」

「うん! それも嬉しい!」

リゼは満面の笑みを見せた。

「じゃあ、もう行くね。おやすみ、ゼインくん!」

「あぁ。おやすみ、リゼ」

リゼは頬を染めながら、ラミネたちの後を追いかけていった。

「まさか、この歳で婚約とはなぁ」

「ええ。私もさすがに驚いたけど、リゼリアちゃんなら安心ね。付き合いも赤ちゃんの頃からだから、もう娘も同然よね」

「ハハッ、確かに」

「私も! リゼリアちゃんは妹だと思ってるよ!」

うちの家族は嬉しそうに話している。

「というか、なんでそんな大事なこと教えてくれなかったの?」

「だって、4歳で婚約なんて普通は考えないもの。貴族様ならともかく」

「貴族様……」

(この世界にはそういう階級もあるのか)

「でも赤ちゃんの頃から2人を見てるけど、惹かれ合うことが決まっていたみたいに思うの。運命っていうのかしら」

「運命……」

「それにこのタイミングで聖大鳳の羽を見つけたことも踏まえてね」

「どういうこと?」

「聖大鳳は別名:【運命を導く鳥】とも呼ばれているの」

「運命を…導く?」

「そう。過去の文献にも何度か聖大鳳が出てくるのだけど、それは決まって大きな変革が起きた時なの。そこからそんな呼び名がつけられたのよ」

「そんなに凄いんだ」

(さすがレリーナ。よく知ってるなぁ)

そこでヴァッシュが

「まぁ運命かどうかは置いておくにしても、ゼインなりに考えてあの返事をしたんだろう?」

「うん」

「それなら、ちゃんと守ってあげてね」

「うん!」

ヴァッシュとレリーナに改めて言われ、俺はしっかり頷いた。

「よし!そのためにも、もっと稽古で力をつけないとな!」

「ん?」

「そうねぇ。守るべき人ができたんだもの。ゼインならもう少しペースを早めてもいいかもしれないわねぇ」

「へ?」

「ハハハッ!」

「うふふっ」

嫌な予感しかしない。

「……ははっ、わかってるよ」

「ゼインくん、頑張ってね!」

ミリは楽しそうに笑っている。

こうして俺には、思わぬ形で婚約者ができた。

これから先、どんなことが起こるかは分からない。

ただ――

大切なものを守るために、もっと強くなろう。

そう決意を新たにした。

リゼリアは以前から好意を隠していませんでしたが、今回はその気持ちが一歩前に進んだ形です。

また、ヴァッシュ達の過去や、この世界の価値観についても少しずつ触れ始めています。

今後もゼイン達の成長を見守っていただけると嬉しいです。

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