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ウサギ跳びとクマさんと

ぴょんぴょん。ぴょんぴょんぴょん。


やあ!俺は寺井颯太だぴょん!

え?さっきから何をしているのかって?ウサギ跳びに決まってるぴょん!


豊かな自然に囲まれた森の中、うさちゃんたちと一緒にウサギ跳びをしているんだぴょん!

……え?なぜそんなことになっているのかって?

それは仕方ないぴょんね〜……。教えてあげるぴょん!



それは、1時間ほど前に遡る___。


「はあ〜……こんな、だだっ広い荒野に飛ばされて、どうしろってんだよ……」


俺は仰向けになり、空を見上げながら悪態をついていた。

あの最低な女神――めよカスさんにより、周囲に何もない荒野へと放り出された俺は、完全にうちひしがれていた。


腕力が2兆倍になったせいで、少しでも腕を動かそうものなら、周囲一帯が消し飛ぶ。

だからといって、動かずにいれば餓死確定だ。


「……どうすりゃいいんだよ……」


その時、ひとつの考えが頭をよぎった。


――この腕力、移動に使えばいいんじゃね?


思い立ったが吉日。

俺は地面に手をつき、ほんの少しだけ、力を込めて押してみた。


次の瞬間。


轟音と衝撃波が発生し、視界が一気に切り替わる。

気づけば周囲は真っ青で、足元には白い雲。


「……え?」


そう。

俺は雲の上まで、文字通りひとっ飛びしていた。


「うおおおおお!すげええええええ!!!」


腕力2兆倍、恐るべし。

前の世界じゃ一生見ることのなかった景色が、目の前に広がっている。


――楽しいじゃないか。


俺は一瞬、めよカスに感謝しかけた。


……その直後、気づいてしまったのだ。


着地のことを、何ひとつ考えていなかった。


「うわああああああ!!いやああああああああ!!!」


ここは遥か上空。

叫んでも誰にも届かない。


死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!

こんな死に方したら、絶対めよカスさんに爆笑される!

「何それwww」って腹抱えて笑われる!

ふざけやがってカス野郎!笑い死ね!


混乱のあまり、俺は脳内のめよカスに全力で罵声を浴びせていた。


やがて雲を突き抜け、地面が見えてくる。

……森だ。


ドオオオン!!


凄まじい轟音と共に、俺は地面に激突した。


「いってててて……」


……ん?


「……いてて?」


痛い、という感覚がある。

つまり――


「生きてる!?!?!?」


上空数千メートルから落下したにも関わらず、俺は生きていた。

しかも重傷どころか、少し痛いだけ。


「耐久力が凄いとは聞いてたけど……ここまでかよ……」


いや、もしかしてめよカスが耐久力も盛ってくれたのか?

……いや、ないな。あいつにそんな気遣いができるはずがない。


こうして俺は、荒野から森の中へと無事に移動したのだった。

いや、どうせなら人里にしてほしかったけど。


森は森で視界が悪く、正直あまり快適とは言えない。

とはいえ、普通に歩くと腕が振れて周囲が壊滅する。


「……別の移動方法、考えないと……」


そこで俺はひらめいた。


「……手を後ろに組んで、ウサギ跳びすればよくね?」


俺はゆ〜〜〜っくり立ち上がり、

ゆ〜〜〜っくり手を後ろに組んだ。

この動作だけで、30分近くかかった気がする。


……成功。


「よし……!」


ぴょん。

ぴょんぴょん。


「……いける!」


こうして俺は、ウサギ跳びで移動を始めた。


すると、周囲からガサガサと音がする。

振り返ると、10匹以上のうさちゃんがついてきていた。


「……え、何?」


俺をウサギだと思ってる?

……馬鹿すぎて可愛いな、お前ら。


――というわけで、現在に至るんだぴょん。



ぴょんぴょんしていると、茂みからガサガサと音がした。


「……またうさちゃんか?ほ〜ら着いておいで〜」


そう思った次の瞬間。


「何をしてるんですか?」


「……人!?」


金髪セミロングに青い瞳。

軽装で腰にダガーを下げた少女が立っていた。


「私はアリサ、冒険者です!あなたは……ウサギの王様ですか?」


「違うけど!?ウサギの王様って何!?」


「え!?そんなにウサギを引き連れているので……ウサギの王様、ウサ王子...違うな...ウサギのキング......ハッ!ウサキングかと!」


「今思いついただろそれ!」


……出会って数秒で理解した。

この子、かなり天然というか、残念な子だ。


「このウサギ跳びには仕方ない事情があってだな...うさちゃん達はなんか知らんけど着いてきた。」


「仕方の無い事情...?ハッ!まさかウサギ跳びしかできない呪いに!?呪いのウサギさん...呪いのウサギ...呪うウサギ...ハッ!」ピーン!


「ノロウサギのせいてもないからな!」


「なぜ分かったのですか!」


大体わかるだろ!ピーンじゃないが。


「まさかノロウサさんのせいでこんなことに...可哀想に...」


「だから違うって言って___」


ズシン。話に夢中になっていたが、ふと周囲から重い音が聞こえてることに気がついた。

着いてきていたうさちゃんたちも気がついたら居なくなっている。

なんだ?見渡してみると......。


最低でも体長は5メートルはあるであろう、デカいクマ数匹に囲まれていた___。


「大変です!大変です!」


アリサちゃんが慌てた様子だ。ああ、そうだな。これはまずい状況になった。


「うさぎさんじゃありません!クマさんです!呪いの真犯人はクマさんだったってことですね!ノロクマさんだノロクマさん!」


「なんの話をしてんだ!そもそもこのウサギ跳びは呪いじゃないって!」


俺がツッコミに夢中になっていると、横から風を切るような音が聞こえてきた。

振り向いてみると、でかいクマが腕を振りかぶっていた。

そうだった。こんなやり取りをしている場合じゃなかった。

まずい、殴られる!!


殴られる寸前、アリサちゃんが俺を抱えて避けていた。速い!


ドオオオン!クマの空ぶった攻撃は地面に叩きつけられ、激しい音と衝撃波がつたわってくる。当たっていたら不味かったか...


「ありがとう、助かった!」


「えっへへ!速さには自信があるんですよ!まっかせてください!数匹くらいなら___」


ガサッガサッ。

周りの茂みから、数十匹出てきた!


「ゲーーーー!言ったそばから数匹のノロクマさんが!ノロ、ノロクマーズ?」


「さっきからほんとなんの話をしてんだ!この数はやばい!逃げるぞ!」


「でも囲まれてます!私だけならともかく、二人で逃げるのは...もう戦うしか!ウサキングさん、戦えますか!?」


「ウサキングじゃねえよ!それと戦えるとは思うけど、今この状況では無理だ!」


こんな所で攻撃したら、アリサちゃんを巻き込んでしまう。どうしたらいいんだ


「分かりました!では、私が少しでも気を引いてるうちに逃げてください!」


は?何を言ってるんだ。俺の苦しい言い訳とも取れる言葉を信じた上で、先に逃がしてくれると言うのか?

アリサちゃんはデカいクマの攻撃を持ち前のスピードで避けているが、あのダガーでは致命的な攻撃は入らないのだろう。このままではいつか体力が切れてしまうだろう。とてもじゃないが、十匹以上を相手にできるとは思えない。


「なあ、さっき『私だけならともかく』とか言ってたよな!?お前だけだったら逃げられるのか!?」


「はい!?まあそうですね!『潜伏』スキルを持ってるので、逃げることは可能です!」


なるほど。元々戦うのではなく、隠密系の活動をしているのだろう。だから軽装で、1人なのだろうか。それなのに俺を先に逃がそうと...?


「ならそれを使って逃げてくれ!出来るなら俺の後ろの方へ!」


「で、でもそうしたらあなたが!」


「大丈夫だ!俺もさっき『戦えるとは思う』と言ったよな!?信じてくれ!」


「で、でも」


「いいから!」


「はい!」


彼女が潜伏スキルを使ったのだろう。突然姿を消した。

ザッザッと足音が俺の背後の方へ消えていく。

逃げてくれたか...変なことを言ってると思ったら、助けてくれたり信じてくれたり...残念なのかどうか分からねえな...


さて、やるか___。

俺はずっと後ろに組んでいた手を解いた。

クマは逃げたアリサちゃんを探しているのか少しキョロキョロしていたが、こっちを向いて腕を振りかぶっていた。どうやら狙いを俺に変更したらしい。

だがもう遅い。


「とおりゃああああああ!!!!!」

俺はクマの方向へ、腕を横に払っていた。


直後、凄まじい轟音が鳴り響き、木々が倒れる音が聞こえてきた。気がつくと目の前は、数百メートルが扇形に消し飛んでいた。


改めて考えても、このちからはやばすぎるな...でも、助けられた。


すると、後ろから足音が聞こえてきた。

(またクマか.....!?)

振り返ると、アリサちゃんが来ていた。近くにいたのね...。


そして、アリサちゃんが口を開いた。

「『とおりゃあああああ!!!!』って掛け声!プフフ!」


こいつほんとなんなんだよ!開口一番にそれかよ!

前言撤回。この子はやっぱり残念な子だ。

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