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女神と呼ぶにはあまりにも

俺は寺井颯太、18歳。

高校を卒業し、大学への入学が決まり、一人暮らしを始める予定だ。

現在は大学が始まる少し前――いわば人生で一番ダメになれる“実質ニート期間”を満喫している。


「いや〜至福の時間だ!ゲーム楽しい〜!ありゃ、ポテチが切れてる……買いに行くかあ……」


ポテチが切れたのなら仕方ない。

ポテチとコーラを用意してやるゲーム以外なんて言語道断だ。

俺は渋々、徒歩でコンビニへ向かうことにした。


その途中だった。


突如、空気を叩き割るような轟音が鳴り響いた。


「びっくりした!なんだ!?」


そう思った直後、異変に気がついた。


身体が、動かない。

息を吸おうとしても、胸が言うことをきかない。

全身が一瞬で熱に包まれ、思考が真っ白になる。


――あ、これヤバいやつだ。


苦しい、痛いという感覚だけが遅れてやってきて、

次の瞬間、意識が強制的にシャットダウンされた。



そう、雷が直撃したのだった____。



「すみませんでした!」


意識が途切れた直後、俺は真っ白な空間に立っていた。

目の前では、やたら整った顔のお姉さんが深々と頭を下げている。


「手違いで雷を落としてしまいました!」


ははーん。

“いつものお約束”だな。神様の手違いで死んで転生する系のアレだ。

理解はした。でも俺はキレなきゃいけねえポイントがある。


「いやせめて即死させろや!クソ苦しかったわ!死ぬかと思ったんだぞ!?」


「いや死んでんねん」


即ツッコまれた。

確かにその通りだが、お前に言われたくはない。


「人殺しといて何ツッコんでんだよ」


「まじごめん」


ノリが軽い。軽すぎる。


「ガチで痛かったんだからな!」


「ガチミスったごめん。でもそれはそうと、痛いで済んでしばらく生きてたのはあなたがおかしいです。可哀想だったので息の根を止めてあげました」


「息の根止めてあげました!?」


「はい。でなければ、その後も苦しいまま生き続けて、最終的に餓死します」


「いや誰か通って救急車呼ぶだろ」


「それが、なぜか誰も通りませんでした。いつもは人通り多いのに。なんででしょうね?」


「知らねえよ!え!?マジで何!?」


「ご都合主義的なやつじゃない?」


「ご都合主義」


なんてメタいことをさらっと言うんだ、この女。


そんでご都合主義を起こすなら神であるお前だろ


「しゃーなしで息の根止めてやったんで感謝してくださいね!マジしゃーなしですよ!」


「そもそも手違いで雷落としたのはお前だろ」


「それはそうと、手違いで雷とはどういうことですか?」


「はい。普段は雷を落として、極悪人に天罰を与えたり、気に食わないやつを殺したりします」


「気に食わないやつでも殺しちゃダメじゃない?」


「まあダメですね」


「だよね」


「でも暇つぶしにムカつくやつに天罰を与えるとスカッとしますよ!」


「カス野郎か?」


「で、その……今回はですね」


女神様は視線を逸らした。


「手が、滑っちゃって!」


「え〜!?!?」


そんなうっかりミスで人を殺しちゃったというのかこいつは


「それはともかく、ここに世界があります」


「すごいパワーワードだな」


女神と呼ぶにはあまりにもカスすぎる女――

略してめよカスさんが、映像を見せてくる。


そこには、人間と魔物が争う異世界の光景が映っていた。


「めよカスって呼ぶのやめてくださいね」


「心読めるんだ」


「実はあなたには才能があります。天罰を受けてあれだけ耐えた人間は初めてです。普通は即死なので」


なるほど。

どうやら俺は“耐久力”だけで人生を突破してきた存在らしい。


……言われてみれば、だ。

人生で耐久力を使う場面なんてほぼなかったから、気づかなかった。


「なのでお詫びに能力を授けて転生させます。人間側でも魔王側でも可です。正直どっちが勝っても神的にはどうでもいいので!」


「すげえこと言ってるな……じゃあ人間側で。それで能力って?」


「おけまるだよ〜ん!能力はなんでも可能ですよ!」


なんでも、だと……?


ならば魔法、スキル、特殊能力、etc......。なんでもできるというわけか。

だが俺は複雑なのは嫌いだ。

ならば、元の自分の延長線――シンプル・イズ・ベスト。身体能力強化だ!


「決めました!俺が欲しい能りょ」


「身体能力上昇ですね!どのくらい?」


「心の声聞こえてたんだった!言わせてよ〜……」


どのくらい……?

どれだけでも可能なら、例えば腕力2兆倍みたいな___。


「了解!腕力2兆倍ですね!それでは行ってらっしゃ〜い!」


「は!?まだ何も言ってねえよ!?」


抗議する間もなく、視界が白く染まった____。



気がつくと、見知らぬ荒野に立っていた。

どうやら異世界らしい。


(どうせなら街に飛ばせよ……)


そう思いながら一歩踏み出した、その瞬間。


ドン、と空気が爆ぜる音がした。


俺が腕を振った衝撃で、

地面も、崖も、遠くの山すら消し飛んでいた。


「腕力2兆倍、想像以上にやべえな!?」


――こうして、俺の異世界生活は、最初から色々と終わっていた。



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