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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第99話「黒い森の暴走」

黒い森全体が震えていた。


地面が盛り上がり、木々の根が次々と地表へ飛び出していく。


「くそっ!」


カイが剣を振り抜く。


《裂空斬》


巨大な根が真っ二つになる。


だが――


切断された根は地面へ落ちる前に蠢き始めた。


「再生するのかよ!」


「カイ、右!」


ミナの声。


横から迫っていた根へ、炎の槍が突き刺さる。


《フレイム・ランス》


ドォン!


根が焼け落ちる。


「助かった!」


「まだ来るよ!」


ミナが前を見る。


森の奥から、無数の根が押し寄せていた。


その中心には、巨大な黒い木。


先ほどまで普通の木々に隠れていた幹が、今では山のような大きさになっている。


カイが剣を握り直す。


「……あれを止めないと、レオのところにも影響するな」


「うん」


「なら、俺たちの仕事だ」


ミナが頷く。


「絶対にレオのところまで行かせない」


二人は同時に駆け出した。


その頃。


黒い空間の中では――


レオと守護者が、巨大な黒い目と対峙していた。


無数の黒い腕が迫る。


「来るぞ!」


レオが鎖を放つ。


《死者の鎖》


一本、二本、三本。


黒い腕を次々と拘束する。


しかし数が多い。


一本を止めれば、別の腕が横から襲ってくる。


「多すぎる!」


守護者が前へ出る。


白い光が広がった。


黒い腕が白い光に触れた瞬間、動きを止める。


レオはその隙を逃さなかった。


「今だ!」


《死者の鎖・連撃》


鎖が一斉に黒い腕を貫く。


バシュッ!


黒い腕が崩れ落ちる。


だが、黒い目は動じない。


『……無駄だ』


「何?」


『……森がある限り……私は消えない』


レオは周囲を見る。


無数の根。


黒い木。


囚われた魂。


「森そのものが、お前の力なのか」


『……違う』


黒い目がゆっくりと瞬く。


『……森は……器だ』


「器?」


『……魂を集めるための……器』


レオの表情が険しくなる。


「じゃあ、この森にいる魂は全部……」


『……力になる』


「ふざけるな!」


レオが鎖を叩きつける。


しかし黒い目から放たれた黒い衝撃波が、レオを吹き飛ばした。


「ぐあっ!」


地面を何度も転がる。


「レオ!」


ガイアの声。


『立て!』


レオは腕を押さえながら立ち上がる。


「……まだだ」


『無茶するな』


「無茶でもやる」


レオは黒い目を睨む。


「この森にいる魂を全部解放する」


黒い目がわずかに揺れた。


『……できると思うのか』


「やってみなきゃ分からないだろ」


その時。


地上から巨大な衝撃音が響いた。


ドォォォン!


「カイ!」


レオが振り向く。


ガイアが答える。


『まだ生きてる!』


「よかった……」


『ただ、かなり苦戦してるぞ』


レオは目を閉じる。


森全体から、魂の声が聞こえてくる。


『……助けて……』


『……ここから……出して……』


『……もう……苦しい……』


レオは静かに息を吐いた。


「守護者」


『……』


「俺が魂を解放する」


守護者がレオを見る。


「その間、俺を守ってくれ」


白い光が強くなる。


「頼む」


守護者が頷いた。


レオは両手を広げる。


「聞こえるか!」


無数の魂がレオを見る。


「お前たちの力を奪う奴は、俺が止める!」


魂たちがざわめく。


「だから――」


レオの身体から大量の鎖が広がっていく。


「自分の意思で、ここから出てくれ!」


《死者の鎖・魂解放陣》


白い光が黒い空間全体へ広がった。


黒い根が一斉に動き出す。


『……やめろ』


黒い目の声が初めて大きくなる。


『……それを……するな!』


「やっぱり嫌なんだな」


レオが笑う。


「だったら、なおさらやる!」


鎖が魂を縛る根へ次々と絡みつく。


一つ。


また一つ。


黒い根が砕ける。


『……返せ……』


「返すのはお前だ!」


魂が黒い根から解放されていく。


そのたびに黒い森の力が弱まっていく。


一方、地上。


「うおおおおっ!」


カイが巨大な根へ突っ込む。


《裂空斬・弐》


ズガァン!


巨大な根が切断される。


「まだだ!」


次の根が迫る。


ミナが手をかざした。


「任せて!」


《炎界》


炎の壁が広がり、根の進行を止める。


「カイ! 今!」


「おう!」


二人が同時に走る。


目指す先は、巨大な黒い木。


「これが本体なら――」


カイが剣を振り上げる。


「叩き切る!」


だが、その瞬間。


黒い木の幹に巨大な目が開いた。


「……!」


ミナが息を呑む。


「こっちにも……目が?」


地面から無数の根が飛び出した。


カイが剣を構える。


「ミナ!」


「分かってる!」


二人は背中合わせになる。


「来い!」


その頃。


地下では、レオの魂解放が続いていた。


だが――


黒い目の奥から、今までとは違う黒い光が生まれる。


ガイアが叫ぶ。


『レオ!』


「分かってる!」


『違う! あれは今までの力じゃない!』


黒い光が巨大な形を作る。


人のような姿。


しかし顔はない。


レオは鎖を構えた。


「……何だ、あれ」


黒い存在が一歩、前へ出る。


そして――


『……お前を……門の向こうへ……』


レオの目が見開かれた。


「……門?」


黒い存在が手を伸ばす。


『……連れて行く』


次の瞬間。


黒い空間そのものが、レオへ襲いかかった。


――第99話・完――

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