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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第100話「門の向こうへ」

黒い空間そのものが、レオへ襲いかかった。


「くっ……!」


足元が崩れる。


壁も天井も分からなくなり、黒い闇が渦を巻いていく。


ガイアの声が響いた。


『レオ! その場から動くな!』


「無理言うな!」


黒い腕が何本も伸びてくる。


レオは鎖を放った。


《死者の鎖》


ガキィン!


黒い腕を弾く。


しかし、一瞬止めただけだった。


別の腕が背後から迫る。


「レオ!」


守護者が割り込む。


白い光が爆発した。


ドォォン!


黒い腕が弾き飛ばされる。


だが守護者の身体も大きく後退した。


「大丈夫か!」


『……』


守護者は立ち上がる。


「無理するな!」


ガイアが叫ぶ。


『レオ、あいつの狙いはお前だ!』


「分かってる」


レオは黒い存在を睨む。


「でも、何で俺なんだ」


黒い存在は答えない。


ただ、手を伸ばす。


『……鍵』


「またそれか」


『……お前は……境界に触れた』


レオの表情が険しくなる。


『……死者の声を聞き……境界を越え……魂を導く』


「だから何だ」


『……お前なら……門を越えられる』


レオは鎖を構えた。


「俺は門を越えるために力を使ってるんじゃない」


『……では、なぜ……』


「仲間を守るためだ」


黒い存在が止まった。


「死者も、生者も関係ない」


レオの周囲に魂たちが集まる。


「俺は誰かを犠牲にして、どちらかを選ぶつもりはない」


守護者の白い光が強くなる。


「だから――」


レオが踏み込む。


「お前のところには行かない!」


《死者の鎖・境界連結》


鎖と白い光が重なり、黒い存在へ突き刺さる。


ズガァァン!


黒い存在の身体が大きく揺れた。


『……拒むか……』


「当たり前だ!」


さらに鎖を伸ばす。


黒い存在の腕を縛る。


「お前が何者なのかは知らない!」


一本。


二本。


三本。


「でも、この森の魂を苦しめるなら――」


鎖が一気に締まる。


「俺は止める!」


黒い存在の身体に亀裂が入った。


その瞬間。


地上から巨大な爆発音。


ドォォォン!


「カイ! ミナ!」


ガイアが叫ぶ。


『二人が危ない!』


レオは一瞬迷った。


目の前には黒い存在。


そして地上には仲間。


「……くそっ!」


レオが鎖を引く。


「守護者!」


守護者がレオを見る。


「こいつを頼む!」


『……』


守護者が一歩前へ出る。


白い光が黒い存在を包み込んだ。


「俺は地上へ行く!」


ガイアが叫ぶ。


『それでいい! ここは俺たちに任せろ!』


レオは魂たちを見る。


「みんな、少しだけ待っててくれ!」


『……分かった』


『……必ず戻って』


レオは頷いた。


《魂渡り》


身体が白い光に包まれる。


そのまま黒い空間から消えた。


地上。


カイが膝をついていた。


「くっ……!」


剣を握る手から血が流れている。


ミナも息を切らしていた。


「カイ……まだ立てる?」


「当然だろ」


巨大な黒い木が二人を見下ろす。


その幹に開いた巨大な目。


無数の根が周囲を埋め尽くしている。


「こいつ……」


カイが立ち上がる。


「普通の木じゃないな」


ミナが魔力を集中させる。


「レオが中で戦ってるなら、私たちも負けられない」


「だな」


二人が構える。


その瞬間。


地面が白く光った。


「……!」


レオが現れる。


「レオ!」


「二人とも無事か!」


カイが笑う。


「遅ぇぞ」


「悪い!」


ミナが振り返る。


「中は?」


「まだ終わってない」


レオは巨大な黒い木を見る。


「でも、分かったことがある」


カイが眉をひそめる。


「何だ?」


「こいつは森を支配してるんじゃない」


レオが木の奥を見る。


「森を使って、何かを作ろうとしてる」


「何を?」


レオは答えようとした。


その時――


森の奥から、低い音が響いた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


巨大な黒い木の根元が割れる。


その奥から、黒い石が姿を現した。


「……あれは」


レオが目を見開く。


黒い石には――


見覚えのある紋章が刻まれていた。


三つの円。


その中央を貫く一本の線。


「境界監視者の紋章……?」


カイが驚く。


「何でここにあるんだ?」


ミナも石を見る。


「でも……黒く染まってる」


レオが近づく。


守護者から感じた白い境界の力。


地下遺跡で見た黒い力。


その二つが、目の前の石の中で混ざり合っていた。


「……これが原因か」


ガイアが低く言う。


『いや』


レオを見る。


『原因じゃない』


「じゃあ何だ?」


『入口だ』


レオの顔から笑みが消える。


「……入口?」


その瞬間。


黒い石から、あの声が響いた。


『……門を開ける』


レオは鎖を構えた。


「お前……」


『……こちらへ来い』


黒い石の表面に、黒い亀裂が走る。


そして――


森の中央に、巨大な黒い扉が現れ始めた。


カイが剣を握り直す。


「……また門かよ」


ミナが魔力を高める。


「レオ……どうする?」


レオは扉を見つめた。


その奥から聞こえてくるのは――


無数の死者の声。


そして、かすかな笑い声。


レオは鎖を握り締める。


「……開けさせない」


黒い扉が、ゆっくりと動き始めた。


――第100話・完――

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