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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第98話「黒い目」

黒い空間の奥。


巨大な目が、ゆっくりと開いた。


レオは鎖を構えたまま動かない。


「……あれは」


ガイアの声が響く。


『レオ、近づくな』


「分かってる」


目はレオを見ていなかった。


その視線は、レオの背後。


守護者へ向けられている。


「……守護者を見てる?」


白い光が強くなる。


守護者が一歩前へ出た。


『……』


声を発することはない。


だが、その身体から放たれる力が明らかに変わった。


レオは守護者の前に立つ。


「守護者に何をするつもりだ」


巨大な目がゆっくり瞬きをする。


『……三百年……』


低い声が響く。


『……まだ……そこにいるのか……』


レオの表情が変わった。


「三百年前から守護者を知っているのか?」


返事はない。


代わりに黒い根が一斉に動き出した。


「来るぞ!」


レオが鎖を展開する。


《死者の鎖》


無数の根を絡め取る。


しかし――


バキッ!


黒い根が鎖を引きちぎった。


「くっ!」


横から別の根が迫る。


守護者が腕を掲げた。


白い光が壁となって広がる。


ドォン!


根が弾き飛ばされた。


『レオ!』


ガイアが叫ぶ。


『今のうちに中心を狙え!』


「分かった!」


レオが駆け出す。


黒い塊へ向かう。


だが、巨大な目がこちらを向いた。


『……魂を返せ』


レオが足を止める。


「……何?」


『……その魂は……こちらのものだ』


「ふざけるな!」


レオが鎖を振り抜く。


「魂は誰かの所有物じゃない!」


《死者の鎖・魂連撃》


大量の鎖が黒い塊へ突き刺さる。


ドォォォン!


黒い塊が大きく揺れる。


閉じ込められていた魂たちが一斉に光り始めた。


『……レオ……』


『……もう少し……』


『……お願い……』


「分かってる!」


レオはさらに力を込める。


「みんなの力を貸してくれ!」


無数の魂がレオの周囲に集まる。


その瞬間。


黒い目が大きく開いた。


『……やめろ』


初めて声に明確な焦りが混じった。


「今まで散々苦しめてきたんだろ」


レオが鎖を握り直す。


「だったら――」


黒い光と白い光がぶつかる。


「ここで終わらせる!」


その時だった。


外側から轟音が響いた。


「レオ!」


カイの声。


「木がさらにデカくなってる!」


ミナも叫ぶ。


「根が地上まで伸びてる!」


ガイアが舌打ちする。


『このままだと森そのものが飲み込まれるぞ!』


レオは黒い塊を見る。


そして、守護者を見る。


「……守護者」


『……』


「力を貸してくれ」


守護者が静かに頷いた。


白い光がレオの鎖へ流れ込む。


《死者の鎖》が白と黒、二つの光を帯びる。


「これなら……!」


レオが黒い塊へ向かって踏み込む。


しかし、巨大な目から黒い光線が放たれた。


「っ!」


守護者が前へ出る。


ズガァァン!


直撃。


白い光が砕け散る。


「守護者!」


守護者の身体が大きく揺れる。


「くそっ!」


レオが駆け寄ろうとする。


だが――


守護者が手を伸ばし、レオを止めた。


『……』


「……戦えるってことか?」


守護者は再び立ち上がる。


その胸の奥に、白い光が灯った。


ガイアが低く呟く。


『あいつ……三百年前と同じことをしようとしてる』


「何を?」


『境界を食ってるんだ』


レオは目を見開く。


「……境界を?」


『死者の魂だけじゃない。守護者の力も、森の生命力も……全部だ』


黒い目が再びこちらを見る。


『……境界を……壊す……』


レオの背筋に冷たいものが走る。


「お前は……門を開けたいんじゃない」


黒い目が揺れる。


「境界そのものを消そうとしてるのか」


『……』


沈黙。


それが答えだった。


レオは鎖を構え直した。


「だったら、絶対に止める」


黒い目の奥から、無数の黒い腕が現れる。


外では森全体が大きく揺れ始めた。


カイが叫ぶ。


「レオ! 急げ!」


ミナも魔法を構える。


「私たちも時間を作る!」


ガイアが笑う。


『行くぞ、レオ』


レオは仲間たちの気配を感じながら、黒い目を睨んだ。


「冥夜の旅団――全員で止める!」


黒い森が、大きく震えた。


――第98話・完――

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