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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第92話「目覚める地下の存在」

地下遺跡の最深部から響いた音が、空間全体を揺らしていた。


ドン……。


天井から砂埃が落ちる。


カイが剣を構えたまま、奥を睨む。


「……何がいるんだ?」


黒衣の男たちは答えない。


三人とも、先ほどまでの余裕を失っていた。


ミナが小さく呟く。


「この人たち……怯えてる?」


ガイアが低い声を響かせる。


『ああ。間違いない』


レオは黒衣の男たちを見た。


「お前たちは、あれを知っているのか?」


「……知らない」


「嘘だ」


男が黙る。


その直後――


ドンッ!


地下から衝撃が突き上げてきた。


「うわっ!」


ミナがよろめく。


レオが腕を伸ばして支える。


「大丈夫か?」


「うん……ありがとう」


守護者はすでに遺跡の奥へ向かっていた。


「守護者?」


レオが追う。


守護者が立ち止まった場所には、巨大な石扉があった。


その扉にも、三つの円と一本の縦線。


境界監視者の紋章だ。


しかし――


その中央には、黒い欠片と同じ黒い紋章が重ねられている。


レオが目を細める。


「境界監視者の紋章に……黒い紋章?」


ガイアが唸る。


『二つの紋章が重なっている』


カイが近づく。


「つまり、ここは境界監視者と黒い連中の両方が関係していた場所ってことか?」


「たぶん違う」


レオが答える。


「もっと古い」


石扉の表面に文字が浮かび上がった。


『境界に触れる者』


『死者を導く者』


『そして――』


最後の一行だけ、黒く染まっている。


『境界を喰らう者』


レオの表情が険しくなる。


「また、この言葉……」


ミナが尋ねる。


「森の魔物を操っていた力と関係してるのかな?」


「分からない」


その時。


背後から声がした。


「関係している」


三人の黒衣の男のうち、一人が口を開いた。


レオが振り返る。


「知っているのか?」


「……少しだけな」


「なら話せ」


男はしばらく黙っていた。


やがて口を開く。


「俺たちは、この場所を探していた」


「何のために?」


「黒い欠片を持ち帰るためだ」


「それだけじゃないだろ」


男の視線が石扉へ向く。


「……その奥にあるものを確認するためだ」


レオが石扉を見る。


「何がある?」


男は答えなかった。


代わりに――


石扉がゆっくり開き始めた。


ゴゴゴゴ……。


冷たい風が吹き抜ける。


「……開いた」


ミナが杖を握り直す。


レオは前へ出る。


「行くぞ」


カイが並ぶ。


「俺たちも行く」


ミナも続く。


「私も」


ガイアが笑う。


『当然だろ』


守護者も先頭に立つ。


五人が石扉を抜ける。


そこには巨大な円形の部屋が広がっていた。


中央には――


巨大な黒い石柱。


その周囲を、白い鎖のような紋様が何重にも囲んでいる。


そして石柱の中に――


何かがいた。


「……人?」


ミナが息を呑む。


透明な石の中に、人影が浮かんでいる。


長い髪。


痩せた身体。


目は閉じている。


だが――


胸には黒い紋章が刻まれていた。


レオが近づく。


「生きてるのか?」


ガイアが答える。


『……いや』


レオが見る。


『死んでもいない』


「……」


その言葉に、レオは息を止めた。


まるで――


死者でも生者でもない。


あの境界に存在するもの。


「まさか……」


その時。


石柱の中の人物の目が開いた。


「!」


全員が身構える。


ゆっくりと口が動く。


「……ネクロマンサー……」


レオの背筋に寒気が走る。


「俺を知っているのか?」


人物は答えない。


ただ、レオを見つめる。


「……鍵……」


黒い紋章が光る。


ズズズズ……。


部屋中の白い鎖が軋み始めた。


守護者が前へ出る。


『……!』


ガイアの声が低くなる。


『レオ、離れろ!』


「分かった!」


五人が後退する。


しかし――


黒衣の男が叫んだ。


「待て!」


「何?」


「その封印を壊すな!」


レオが振り返る。


「お前たちが狙っていたのは、こいつか?」


男は答えない。


その瞬間――


石柱に亀裂が走った。


ピシッ。


ピシ……。


そして。


中の人物が、初めて笑った。


「……三百年ぶりだ」


レオの目が見開かれる。


「三百年前……?」


人物はゆっくりと手を上げる。


黒い紋章が輝く。


「ようやく……鍵が来た」


ズドンッ!


黒い衝撃波が部屋を吹き飛ばした。


「うわああっ!」


カイが壁まで吹き飛ばされる。


ミナも床を転がる。


「ミナ!」


レオが鎖を伸ばし、彼女の身体を引き寄せる。


守護者は一人で衝撃波を受け止めていた。


白い光と黒い力が激しくぶつかる。


「守護者!」


守護者の身体がわずかに後退する。


ガイアが叫ぶ。


『レオ! あれは守護者と同じ境界の力を持っている!』


「……同じ?」


『いや……』


ガイアが言葉を詰まらせる。


『正確には、境界を壊す側の力だ』


レオは石柱の中の存在を睨む。


「お前は……何者なんだ」


人物が笑う。


「私は――」


その瞬間。


石柱が完全に砕けた。


黒い霧が部屋を覆う。


そして、霧の中から声だけが響いた。


「――境界の残骸だ」


黒い霧が一気に広がる。


レオたちは戦闘態勢を取った。


地下遺跡の最深部。


三百年間封じられていた存在が、ついに目を覚ました。


――第92話・完――

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