第91話「地下遺跡の戦い」
地下遺跡に、黒い光が走った。
三人の黒衣の男たちが一斉に動く。
「来るぞ!」
カイが前へ飛び出した。
キィン!
剣と黒い短剣がぶつかる。
「速い!」
黒衣の男は一歩下がると、身体を低く沈めた。
「遅い」
次の瞬間、カイの懐へ潜り込む。
「っ!」
ガキン!
守護者が割って入り、黒い短剣を腕で受け止めた。
「助かった!」
守護者は答えない。
ただ、男を睨みつける。
その横では、ミナが二人目の男と対峙していた。
「《フレイム・ランス》!」
炎の槍が一直線に飛ぶ。
男は黒い霧を纏い、横へ飛んだ。
炎槍が石壁を貫く。
「避けた……!」
「魔法だけでは、私たちは倒せない」
男の両手から黒い刃が伸びる。
ミナが杖を構え直した。
「だったら――」
炎が杖の先で渦を巻く。
「近づけさせなければいい!」
炎の壁が広がった。
男が足を止める。
その隙に――
「《死者の鎖》!」
レオの鎖が床を走った。
男の足へ絡みつく。
「捕まえた!」
だが――
バキッ!
黒い力が鎖を砕いた。
レオの目が見開かれる。
「……普通の黒い力じゃない」
ガイアが低く告げる。
『気をつけろ。あいつらは黒い力を身体に取り込んでる』
「つまり……」
『死者の魂を使った森の魔物と似ている』
レオの表情が険しくなる。
「同じ力を使っているのか?」
『そこまでは分からない』
三人目の男が、レオへ向かって手を伸ばした。
「お前の力も――」
黒い光が集まる。
「奪わせてもらう」
「させるか!」
カイが横から斬り込む。
男は短剣で受け止める。
だが、カイはそのまま力を込めた。
「うおおおっ!」
男の身体が後ろへ吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられる。
「今だ!」
レオが鎖を放つ。
《死者の鎖・拘束》
大量の鎖が男の身体へ絡みついた。
「ぐっ……!」
男の動きが止まる。
「カイ!」
「任せろ!」
カイが踏み込む。
だが――
「させない」
ミナと戦っていた男が割り込んだ。
炎の壁を突き破り、カイの前へ現れる。
「なっ!」
黒い刃が振り下ろされる。
ガキィン!
守護者が再び受け止めた。
男と守護者が激しく押し合う。
「守護者!」
レオが叫ぶ。
守護者は一歩も退かない。
白い光と黒い力がぶつかり、地下遺跡が揺れる。
「この力……」
黒衣の男が初めて動揺した。
「三百年前と同じ……」
レオが聞き逃さなかった。
「三百年前?」
男は黙る。
「お前たちは三百年前のことを知っているのか!」
レオが鎖を引く。
「答えろ!」
拘束された男が笑った。
「知っているさ」
「なら教えろ!」
「教えてほしければ――」
男の胸に黒い紋章が浮かび上がった。
「生き残ってみろ」
ドンッ!
凄まじい黒い衝撃波が放たれた。
レオの鎖が一斉に弾き飛ばされる。
「レオ!」
カイが叫ぶ。
レオの身体が後方へ吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
床を転がり、壁に背中を打ちつけた。
ミナが駆け寄る。
「大丈夫!?」
「……ああ」
レオは立ち上がる。
「まだやれる」
ガイアが周囲を見る。
『レオ、見ろ』
「?」
地下遺跡の床。
先ほどの衝撃で、一部の石板がずれていた。
その下から――
大量の黒い文字が現れている。
ミナが目を見開いた。
「隠されてた記録……!」
レオも気づく。
戦っている場合ではない。
この遺跡には、まだ何かある。
だが黒衣の男たちは、それを守るように立っている。
「なるほど……」
レオが鎖を構える。
「お前たちがここに来た理由が分かった」
男が笑う。
「何が分かった?」
「黒い欠片を取り戻すだけじゃない」
レオの視線が床へ向く。
「この記録を消すつもりなんだろ」
三人の男が一瞬だけ沈黙した。
その反応を見て、レオは確信する。
「図星か」
男の表情が変わった。
「……やはり、お前は厄介だ」
「だったら――」
レオの周囲に無数の鎖が浮かぶ。
カイも剣を構える。
ミナが炎を纏う。
守護者が前へ出る。
ガイアの声が響いた。
『五人で行くぞ』
レオが頷く。
「ここにある記録は、絶対に渡さない」
黒衣の男たちも構える。
地下遺跡の中央で――
再び、四つの力が激突した。
そしてその瞬間。
遺跡の最深部から――
ドン……。
巨大な音が響いた。
全員の動きが止まる。
ドン……。
今度は、さらに大きい。
「……何だ?」
カイが振り返る。
地下深くから、何かが動いている。
黒衣の男の一人が呟いた。
「……目覚めたか」
レオが男を見る。
「何が?」
男は答えなかった。
ただ、恐れるように地下の奥を見つめていた。
――第91話・完――




