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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第90話「地下遺跡の記録」

地下通路の奥。


レオたちは、ゆっくりと足を進めていた。


先ほどまで聞こえていた複数の足音は、いつの間にか消えている。


「……静かすぎるな」


カイが剣を構えたまま周囲を見回す。


ミナも杖を握り直した。


「さっきまで誰かいたはずなのに……」


ガイアが低い声を響かせる。


『気配が消えたんじゃない』


「え?」


『俺たちを待っている』


レオが足を止めた。


「待っている……?」


『ああ』


その瞬間。


守護者が前方を指差した。


通路の先に、巨大な石扉があった。


扉には、三つの円が重なったような紋章。


その中央には縦線が一本刻まれている。


「この紋章……」


レオが近づく。


「境界監視者と同じだ」


カイが眉をひそめた。


「ってことは、セイルたちと関係があるのか?」


「分からない。でも……」


レオは扉に手を近づける。


すると――


守護者の身体から白い光が漏れた。


石扉が震える。


ゴゴゴゴ……。


ゆっくりと扉が開いていく。


その向こうに広がっていたのは、巨大な地下空間だった。


壁一面に古い文字。


中央には円形の石台。


そして、その上には何冊もの古びた書物が並んでいた。


ミナが目を見開く。


「本……?」


レオが石台へ歩み寄る。


「三百年前のものかもしれない」


カイが一冊を手に取る。


「こんな場所にずっと残ってたのか」


「慎重に扱って」


「分かってるって」


ミナが別の書物を開く。


ページには、古い記録がびっしりと書かれていた。


「読める……」


レオも隣から覗き込む。


そこには――


『死界への門について』


と記されていた。


レオの表情が変わる。


「これだ……」


ミナが読み進める。


「死界への門は、単なる異世界への扉ではない……?」


レオが続きを読む。


「『生者と死者、その双方の境界に存在する』」


カイが首を傾げる。


「それって、今まで分かってたことじゃないのか?」


「ここから先が違う」


レオの指が止まる。


『門を開く者が存在する一方、門を閉じる者も存在する』


『しかし――』


次の文章を読んだ瞬間。


レオの顔から表情が消えた。


「……何?」


ミナが覗き込む。


そこには――


『門を開く者でも、閉じる者でもない存在がいる』


「……?」


『境界そのものを喰らう者』


部屋の空気が変わった。


ガイアが低く唸る。


『やっぱりか……』


レオが振り返る。


「知ってるのか?」


『いや。正確には知らない』


「じゃあ、なんで……」


『森で戦った奴ら』


ガイアが続ける。


『あいつらは、死者の魂だけを食っていたわけじゃない』


レオは思い出す。


黒い空間。


無数の魂。


巨大な黒い核。


そして――


あの声。


『こちらへ来い』


レオは拳を握った。


「……境界そのものを喰らう存在」


守護者が書物へ近づく。


すると――


一枚のページが勝手にめくれた。


そこには、守護者によく似た姿が描かれていた。


「これ……」


ミナが息を呑む。


その隣には、もう一体。


胸に黒い紋章を持つ存在。


「第二の守護者……」


レオが呟いた。


しかし、その下には見たことのない文章があった。


『二人の守護者は、同じ使命を持たない』


『白き守護者は、境界を閉じる』


『黒き守護者は、境界を監視する』


カイが驚く。


「監視……?」


レオはさらにページをめくる。


『しかし、二人が共に消えた時――』


そこで文章が途切れている。


「……続きがない」


ミナが別のページを探す。


「破られてる」


一枚だけ、ページが切り取られていた。


その切れ端の裏側に、文字が残っている。


レオが慎重に読む。


『もし境界を喰らう者が現れたなら――』


『鍵を死界へ送るな』


レオの目が止まった。


「……鍵を死界へ送るな?」


カイが首を傾げる。


「どういう意味だ?」


「分からない」


その時。


地下遺跡の奥から――


ドン……。


鈍い音が響いた。


全員が振り返る。


ドン……。


今度は近い。


守護者が前へ出る。


ガイアも警戒する。


『来るぞ』


「何が?」


返事の代わりに――


壁の一部が崩れた。


大量の土砂が落ちる。


その向こうから、黒い霧が流れ込んできた。


ミナが杖を構える。


「黒い力……!」


レオは死者の鎖を展開する。


「みんな、構えて!」


黒い霧の中から――


ゆっくりと人影が現れる。


しかし、今度は一人ではない。


三人。


全員が黒い外套を身につけている。


先頭の男が口を開く。


「その記録を見つけたか」


カイが剣を構える。


「お前ら、さっきの男の仲間か?」


男は答えなかった。


代わりに、レオを見つめる。


「ネクロマンサー」


低い声。


「その記録を持って帰ることは許さない」


レオの鎖が床を叩く。


「なら、力ずくで止めてみろ」


男の手に黒い光が集まった。


「……望み通りにしてやる」


地下遺跡全体が震え始める。


そして――


石壁の奥から、無数の黒い光が浮かび上がった。


ミナが息を呑む。


「まだ……あんなに……」


レオは前を見据えた。


「冥夜の旅団――」


カイが剣を握り直す。


「分かってる」


ミナも杖を構える。


守護者が前へ出る。


ガイアが笑う。


『久しぶりに、全員で暴れられそうだな』


レオの鎖が黒く輝いた。


「行くぞ!」


地下遺跡の戦いが始まった。


――第90話・完――

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