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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第89話「森に残された黒い欠片」

森の中に静寂が戻っていた。


先ほどまで響いていた魔物たちの咆哮も、すべて消えている。


レオはゆっくりと立ち上がった。


「……身体が重いな」


カイが肩を貸す。


「無理するな。かなり消耗してるぞ」


「ありがとう」


ミナが周囲を見渡す。


「魔物たちも、もう襲ってこないね」


地面には倒れた魔物たちがいる。


だが、胸にあった黒い光は消えていた。


ガイアが静かに呟く。


『黒い力が消えたことで、正気を取り戻したんだろう』


「じゃあ、もう大丈夫なのか?」


『少なくとも、さっきまでの状態ではない』


守護者が突然、森の奥へ顔を向けた。


「……」


レオが気づく。


「どうした?」


守護者は動かない。


ただ、何かを警戒している。


「まだ何かいる?」


守護者が頷いた。


ガイアの声も低くなる。


『俺も感じる』


レオたちは周囲を見渡す。


「魔物じゃないのか?」


『違う』


ガイアが答える。


『もっと小さい。けど……あの黒い力と同じ気配だ』


レオの表情が変わった。


「黒い欠片か」


三人は森の奥へ進んだ。


倒木を越え、茂みを抜ける。


やがて、地面に小さな黒い欠片が落ちているのが見えた。


「これだ」


レオがしゃがみ込む。


手を伸ばそうとした瞬間。


守護者がレオの腕を掴んだ。


「……触るなってことか」


守護者が頷く。


カイが剣を抜く。


「じゃあ、どうする?」


ガイアが答える。


『近づかずに調べよう』


レオは黒い欠片を見つめる。


表面には、あの黒い紋章が浮かんでいた。


「この紋章……」


ミナが眉を寄せる。


「黒き境界派のもの?」


「似てる。でも、少し違う」


レオは目を凝らす。


「今まで見たものより、古い」


その瞬間。


黒い欠片が動いた。


「!」


地面を滑るようにして、森の奥へ進んでいく。


カイが追おうとする。


「逃げるぞ!」


「待って!」


レオが止める。


「追いかける」


カイが振り返る。


「待つのか追うのか、どっちだよ」


「追う。でも、近づきすぎない」


ガイアが笑う。


『慎重になったな、レオ』


「何度も危険な目に遭ってるからな」


五人は欠片を追った。


黒い欠片は地面を転がり、森の奥へ進んでいく。


やがて――


一本の大木の前で止まった。


「ここ?」


レオが木を見る。


何の変哲もない大木。


しかし、守護者が木の幹へ手を当てた。


白い光が広がる。


すると――


ゴゴゴゴ……。


地面が震えた。


木の根元に、隠されていた石造りの階段が現れた。


カイが目を見開く。


「地下……?」


ミナが階段を覗き込む。


「こんなの、町の人たちも知らないよね」


レオは黒い欠片を見る。


欠片は階段を下りていく。


「こいつは、ここへ向かってたんだ」


ガイアが呟く。


『誰かが残した場所かもしれない』


レオたちは階段を下り始めた。


階段はかなり深い。


しばらく進むと、古い石造りの通路へ出た。


壁には、いくつもの文字が刻まれている。


ミナが壁に近づく。


「これ……古代文字?」


レオも見る。


「読める部分がある」


そこには、短い文章が刻まれていた。


『死者を眠らせる場所』


さらに奥。


『魂を縛るな』


そして最後に――


『境界に触れる者、黒き石を持ち込むべからず』


レオの顔が険しくなる。


「黒い石……」


カイが辺りを見る。


「ここも死界と関係してるのか?」


「分からない」


レオが答えた。


「でも、偶然とは思えない」


その時。


前方から小さな音がした。


コツ……。


コツ……。


誰かが歩いている。


カイが剣を構える。


「誰だ!」


返事はない。


レオも鎖を準備する。


「気をつけろ」


足音が近づいてくる。


コツ……。


コツ……。


そして――


暗闇の向こうから、一人の人影が現れた。


黒い外套。


顔は見えない。


その手には――


黒い欠片が握られていた。


「……それを返してもらおう」


低い男の声。


カイが剣を向ける。


「お前は何者だ?」


男は答えない。


ただ、レオを見つめる。


「……やはり、お前だったか」


レオが眉を寄せる。


「俺を知っているのか?」


男は小さく笑った。


「知っているとも」


黒い欠片が光る。


「三百年前から――」


一歩、後ろへ下がる。


「お前たちを待っていた」


「三百年前……?」


レオが一歩踏み出す。


しかし男の姿が黒い霧に包まれた。


「待て!」


レオが鎖を放つ。


だが――


鎖が霧をすり抜ける。


男の姿は消えていた。


床には黒い紋章だけが残されている。


ガイアが低く呟く。


『レオ……』


「分かってる」


レオは黒い紋章を見つめた。


「この森で起きたことは、ただの魔物騒ぎじゃない」


守護者も紋章を見つめている。


そして――


紋章の中央に、小さな文字が浮かび上がった。


『次は――死者ではなく、生者を喰らう』


レオの表情が変わる。


「……生者を?」


地下通路の奥から、不気味な音が響いた。


今度は一つではない。


複数の足音。


カイが剣を構える。


「どうやら、まだ終わってないみたいだな」


ミナも杖を握る。


「うん」


レオは鎖を展開する。


「行こう」


五人は暗闇の奥へ進んだ。


――第89話・完――

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