第9話「追われる者」
森の奥へ進むレオとガイア。
母親から渡された鍵を握りながら、レオは黙って歩いていた。
「……母さん、大丈夫かな」
『村には戻らない方がいい』
「分かってる。でも……」
レオが振り返る。
「俺がいなくなったら、母さん一人になる」
『だからこそ、今は進むべきだ』
その時だった。
ガサッ。
「……!」
二人が足を止める。
木々の間から、三人の教会兵が現れた。
「見つけたぞ、ネクロマンサー」
「また教会か……」
「お前を拘束する」
教会兵が武器を構える。
ガイアが前へ出た。
『レオ、ここは私に任せろ』
「待って」
レオは一歩前に出る。
「俺が話す」
「話すことなどない!」
教会兵の一人が突っ込んでくる。
「くっ!」
レオは避けようとするが、足を取られて倒れ込む。
「レオ!」
ガイアが教会兵を吹き飛ばす。
「大丈夫か!」
「うん……」
レオは立ち上がる。
「ガイア、もう一度頼む」
『分かった』
ガイアが教会兵へ向かって走る。
しかし、今度は二人が同時にガイアを狙った。
「ガイア!」
レオの右手が輝く。
「俺の力を……!」
黒い魔力がガイアへ流れ込む。
ガイアの動きが一気に速くなる。
「今だ!」
ガイアが一人を倒し、もう一人の攻撃をかわす。
残った教会兵がレオへ向かって走ってくる。
「ネクロマンサーめ!」
「……!」
レオは恐怖で動けなくなる。
だが、右手の紋章が強く輝いた。
その瞬間――
地面から黒い手が伸び、教会兵の足を掴んだ。
「なっ……!」
教会兵が転倒する。
レオ自身も驚いた。
「俺が……やったのか?」
『そうだ』
ガイアが頷く。
『お前の力は、死者だけを操るものではない。死の力そのものを扱い始めている』
「……怖いな」
『怖くていい』
ガイアは静かに言う。
『力を恐れなくなった時、人はその力に支配される』
レオはしばらく黙っていた。
そして、倒れている教会兵を見る。
「俺は……誰かを殺したくない」
「ならば、我々を逃がせ」
教会兵の一人が苦しそうに言う。
レオは頷いた。
「分かった。もう追わないでくれ」
教会兵たちは森の奥へ去っていく。
レオは空を見上げた。
「……村には、もう戻れない」
『そうだな』
「母さんに会えるのは、いつになるかな」
『全てが終われば、また会える』
レオは小さく笑った。
「そうだな」
そして森の奥へ進んでいく。
その頃、村では母親が一人、窓から森を見つめていた。
「……行ったのね、レオ」
テーブルの上には、一枚の古い写真が置かれている。
そこには――若い頃の母親と、一人の男。
レオの父親が写っていた。
母親は写真を握りしめる。
「どうか……生きていて」
レオはまだ知らない。
父親の行方が、ネクロマンサーの歴史と深く関わっていることを。
――第9話・完――




