第8話「聖王教会」
森の奥へ進むレオとガイア。
「父さんの残した小屋って、まだ先なのかな」
『母親から渡された鍵があるなら、必ず何か意味があるのだろう』
「そうだな……」
レオが鍵を握りしめた、その時だった。
「……待て」
ガイアが足を止める。
「どうした?」
『人の気配がする』
レオも耳を澄ます。
森の向こうから、複数の足音が近づいてくる。
「魔物じゃない?」
『違う。人間だ』
やがて木々の間から、三人の男女が姿を現した。
全員が白い装束を身につけ、胸には同じ紋章が刻まれている。
レオは昨夜の男を思い出した。
「……教会?」
先頭に立つ女が一歩前へ出る。
「その通りです」
「俺を追ってきたのか?」
「ええ。あなたがネクロマンサーの力を持つことは確認されています」
レオは警戒する。
「俺は誰も傷つけてない」
「それは関係ありません」
女は淡々と答えた。
「ネクロマンサーの力そのものが禁忌なのです」
「どうして?」
「300年前、あなたたちネクロマンサーが何をしたのか知らないのですか?」
「俺は何も知らない!」
レオが言い返す。
「だったら教えてくれよ。どうして俺が悪いんだ!」
女は少し黙った。
「……その力を持つ者は、いずれ多くの死者を生み出す」
「決めつけるな!」
レオの右手の紋章が輝く。
ガイアが前へ出る。
『レオ、下がれ』
教会の男が杖を構えた。
「死者を従える者よ。大人しく力を封じなさい」
「断る」
「ならば――」
男が魔法を放つ。
白い光がガイアへ向かって飛んでいく。
ガイアが腕で防ぐ。
「ガイア!」
『問題ない!』
しかし、光はガイアの身体を焼いていく。
「くっ……!」
「ガイア!」
レオの右手が黒く輝く。
「俺の仲間に……手を出すな!」
黒い魔力が地面を走り、ガイアの身体を包む。
ガイアが立ち上がった。
『……力が増している』
「行け!」
ガイアが一気に距離を詰める。
教会の男が驚いて後退する。
「この力……!」
ガイアの拳が地面を叩く。
衝撃で土が舞い上がり、教会の三人は一度距離を取った。
先頭の女がレオを睨む。
「……やはり危険な力」
「俺は……誰かを守るために使う」
レオはガイアの隣に立つ。
「それでも悪だっていうなら、俺は逃げない」
女はしばらくレオを見つめる。
「今日のところは退きます」
「え?」
「あなたの力は、まだ完全には覚醒していない」
女は背を向ける。
「ですが、次は違います」
三人は森の奥へ消えていった。
レオは拳を握る。
「……教会は、本気で俺を追ってくる」
『ならば、力を身につけるしかない』
「うん」
レオは森の奥を見る。
父親が残したという古い小屋。
そこには、自分の力と出生に関わる秘密が待っている。
一方その頃。
村から遠く離れた教会の施設では、先ほどの女が一人の男の前に立っていた。
「確認しました。ネクロマンサーは確かに存在します」
男は静かに目を開く。
「……ならば、始めよう」
「はい」
300年ぶりに現れたネクロマンサー。
その存在を巡り、世界の歯車が少しずつ動き始めていた。
――第8話・完――




