第7話「初めての戦い」
翌朝。
レオは早くに目を覚ました。
昨夜の襲撃が嘘だったかのように、村は静かだった。
「……本当に、ここを離れるのか」
荷物をまとめながら、レオは窓の外を見る。
母親が後ろから声をかける。
「怖い?」
「……少しだけ」
「無理に強がらなくてもいいのよ」
「でも、逃げ続けるだけじゃ何も変わらない」
レオは昨日渡された鍵を握った。
「父さんが残したものを見つける。それに……自分の力のことも知りたい」
母親は静かに頷いた。
「気をつけてね」
「うん」
レオは家を出た。
村の外れまで来ると、木陰からガイアが姿を現す。
『待っていた』
「ガイア、昨日はありがとう」
『礼は必要ない。私はお前と契約した』
「……そっか」
二人は森へ向かって歩き始めた。
しばらく進むと、森の奥から獣の唸り声が聞こえた。
「……何だ?」
ガイアが立ち止まる。
『何かいる』
「魔物か?」
茂みが大きく揺れる。
次の瞬間――
巨大な狼型の魔物が飛び出してきた。
「うわっ!」
レオは反射的に後ろへ転ぶ。
魔物が牙を剥き、こちらへ迫ってくる。
『レオ、下がれ!』
ガイアが前へ出る。
魔物の爪とガイアの腕がぶつかった。
ガキンッ!
「ガイア!」
『問題ない!』
しかし、魔物の力は強かった。
ガイアが押し飛ばされ、地面を転がる。
「ガイア!」
レオの右手が光る。
『レオ……力を!』
「どうすればいいんだ!」
『私を信じろ!』
魔物が再びガイアへ飛びかかる。
「ガイア!」
レオが右手を伸ばす。
その瞬間――
黒い光がガイアへ流れ込んだ。
ガイアの身体が一瞬だけ黒く輝く。
「……!」
ガイアが立ち上がる。
『これなら……!』
魔物が飛びかかる。
ガイアは攻撃をかわし、その身体を掴んだ。
「今だ、ガイア!」
『ああ!』
ガイアが魔物を地面へ叩きつける。
魔物は動かなくなった。
レオはその場に座り込む。
「……終わった?」
『ああ』
「俺……何もしてないな」
『違う』
ガイアがレオを見る。
『お前の力が、私を強くした』
「俺の力が……?」
レオは右手を見る。
黒い紋章は、さっきよりもはっきりと浮かび上がっていた。
「少しずつ……分かってきた気がする」
死者を操るだけじゃない。
契約した死者に、自分の力を与えることができる。
その事実を知ったレオは、初めて自分の力を恐れるだけではなく――
使いこなしたいと思った。
「行こう、ガイア」
『どこへ?』
レオは森の奥を見る。
「父さんの残したものを探す」
二人は再び歩き始めた。
その先に待っているものが何なのか――まだ誰も知らない。
――第7話・完――




