第10話「旅立ち」
森の奥。
レオとガイアは、母親から渡された鍵を頼りに、古びた小屋を探していた。
「……この辺りのはずなんだけど」
『あれではないか?』
ガイアが指を向ける。
木々の向こうに、苔に覆われた小さな小屋が見えた。
「ここが……父さんの残した場所」
レオは扉の前に立ち、鍵を差し込む。
カチャッ。
扉が開いた。
中には古い机と本棚、そして一冊の分厚い本が置かれていた。
「これ……?」
レオが本を手に取る。
表紙には、見たことのない文字でこう刻まれていた。
『死者と魂の記録』
「父さんが書いたのかな」
ページを開く。
そこには、300年前のネクロマンサーについて書かれていた。
『ネクロマンサーは死者を操る者ではない』
レオの目が止まる。
「……え?」
さらに読み進める。
『本来のネクロマンサーとは、死者の魂と契約し、生者と死者の境界を繋ぐ者である』
「俺とガイアの契約……」
レオはガイアを見る。
『私たちのことが書かれているようだな』
さらにページをめくる。
すると、そこに一枚の紙が挟まっていた。
レオが取り出す。
そこには短い文章が書かれていた。
『もしこの力を受け継ぐ者が現れたなら、教会を恐れるな』
「……父さん?」
『ネクロマンサーは世界を滅ぼす存在ではない』
レオは息を呑む。
その下には、さらに一文があった。
『だが、ネクロマンサーを利用しようとする者は必ず現れる』
「利用する……?」
その時、外から物音がした。
ガサッ。
レオとガイアが同時に振り返る。
「誰かいるのか?」
返事はない。
ガイアが外へ出る。
『誰もいない』
「……そうか」
レオは再び本へ目を戻した。
最後のページに、父親の名前が記されていた。
そして、その横には一つの言葉。
「死界」
「死界……?」
その瞬間、レオの右手の紋章が強く輝いた。
頭の中に、知らない景色が流れ込んでくる。
無数の魂。
暗闇に浮かぶ巨大な門。
そして、その向こう側に立つ一人の男。
『……待っている』
「誰だ!」
レオが叫ぶ。
映像は消えた。
「今のは……」
『レオ』
ガイアの声が低くなる。
『今の力は、これまでとは違う』
「……分かってる」
レオは本を閉じた。
父親の行方。
ネクロマンサーの真実。
そして、死界という謎の場所。
何も分からない。
それでも――
「俺、行くよ」
『どこへ?』
「全部知るために」
レオは小屋の外へ出る。
広い世界が目の前に広がっていた。
「ネクロマンサーが何なのか。父さんがどこにいるのか。そして……俺の力が何なのか」
ガイアが隣に立つ。
『ならば、共に行こう』
「うん」
二人は歩き始めた。
村を離れたレオの、本当の旅が始まった。
しかし、その背後。
森の中から、二人を見つめる人影があった。
「……あの少年が、ネクロマンサー」
その人物は、静かに姿を消した。
――第10話・完――




