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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第86話「囚われた魂」

森の奥に響き渡る咆哮。


巨大な獣――森の主は、身体を震わせながらレオたちを睨みつけていた。


胸の中央に浮かぶ黒い光。


その中には、無数の魂が閉じ込められている。


レオには、それがはっきりと感じ取れていた。


「……苦しんでる」


カイが剣を構える。


「どうすればいい?」


「まず、あの黒い光を弱める」


ミナが杖を握る。


「でも、壊したら中の魂まで消えるんじゃない?」


「だから慎重にやる」


ガイアが低い声で続ける。


『俺が黒い力の流れを探る』


「頼む」


『分かった』


ガイアの力がレオへ流れ込む。


レオの視界が変わった。


森の主の身体を流れる黒い力。


その中心には巨大な核がある。


そこから無数の黒い線が伸び、身体中へ広がっていた。


そして――


その線の一本一本に、魂が絡みついている。


「……見えた」


ミナが尋ねる。


「何が?」


「黒い力の中心だ」


レオが胸を指す。


「ただ、そこへ直接攻撃すると魂まで傷つく」


カイが唸る。


「厄介だな」


森の主が突然前脚を振り上げた。


「来る!」


ドォン!


地面が砕ける。


レオたちはそれぞれ左右へ飛んだ。


カイがすぐに反撃する。


「《裂空斬》!」


斬撃が森の主の前脚を切り裂く。


「グオオッ!」


傷口から黒い煙が噴き出した。


ミナが気づく。


「今!」


「待って!」


レオが叫ぶ。


森の主の傷口から、魂の姿が一瞬だけ見えた。


苦しそうに顔を歪めている。


「攻撃しすぎると魂まで巻き込まれる!」


カイが剣を止める。


「じゃあ、どうするんだ!」


レオは森の主を見つめる。


「……俺が中へ入る」


「は?」


カイが目を丸くする。


「どうやってだよ」


「死者の力を使う」


ガイアがすぐに察する。


『危険だぞ』


「分かってる」


レオは目を閉じる。


周囲に漂う死者の気配へ意識を向ける。


「聞こえるか?」


無数の声が重なる。


『助けて……』


『苦しい……』


『出して……』


「今から助ける」


レオの身体から青白い光が広がった。


守護者が一歩近づく。


白い光がレオを包む。


「守護者……力を貸してくれるのか」


守護者が頷く。


『なら、俺も支える』


ガイアの声が重なる。


三つの力が一つになった。


レオの身体が青白い光に包まれる。


「レオ!」


カイが叫ぶ。


「絶対に無茶するなよ!」


「分かってる!」


レオは森の主へ手を伸ばした。


「《魂渡り》」


次の瞬間。


レオの意識が森の主の身体へ引き込まれた。


真っ暗な空間。


上下も左右も分からない。


無数の魂が漂っている。


「ここが……」


レオは周囲を見る。


魂たちは黒い鎖に繋がれていた。


「みんな、聞いてくれ」


一つの魂がレオへ近づく。


『……人間……?』


「そうだ」


『どうして……ここに……』


「助けに来た」


魂たちがざわめく。


『助けて……』


『外へ……』


『もう苦しい……』


レオは拳を握る。


「必ず出す」


その瞬間。


空間全体が揺れた。


ドクン。


ドクン。


巨大な黒い核が遠くに浮かび上がる。


レオは目を細める。


「あれが中心か」


黒い核から、無数の鎖が伸びている。


しかし、その鎖は普通の鎖ではなかった。


魂そのものから生えている。


「……これを切ればいい」


レオが手を伸ばす。


すると――


黒い影が現れた。


人の形をしている。


顔はない。


ただ、二つの赤い目だけが浮かんでいる。


『触れるな』


低い声が響く。


レオは構える。


「お前は何だ」


『この魂は……我らの力だ』


「魂は誰かの物じゃない」


『ならば……奪ってみろ』


黒い影が襲いかかる。


「くっ!」


レオが横へ飛ぶ。


黒い腕が地面をえぐった。


「死者の力を使ってるのか……?」


『違う』


影が腕を広げる。


『死者そのものを力へ変えている』


レオの表情が険しくなる。


「……許さない」


影が再び襲いかかる。


レオは両手を前へ出す。


「《死者の鎖》!」


青白い鎖が飛び出し、黒い影の腕へ絡みつく。


しかし、影は鎖を掴んだ。


『その力も……喰らう』


鎖が黒く染まり始める。


「なっ……!」


『レオ!』


外からガイアの声が聞こえる。


『その場所に長くいるな! 黒い力がお前まで取り込もうとしてる!』


レオは歯を食いしばる。


「だったら……急ぐ!」


鎖へさらに力を込める。


「みんな!」


魂たちがレオを見る。


「俺に力を貸してくれ!」


一瞬。


無数の魂が光った。


『……分かった』


『一緒に……』


『助けて……』


青白い光が一気に広がる。


黒い影が初めて後退した。


『馬鹿な……』


レオは鎖を握り締める。


「死者は、お前の力じゃない!」


そして――


「俺たちの仲間だ!」


青白い鎖が、黒い核へ向かって伸びていく。


だが。


黒い核の奥から、別の声が響いた。


『……また……死者を率いる者か』


レオの動きが止まる。


聞き覚えのない声。


しかし――


どこか、死界の門の向こうから聞こえた声に似ていた。


『……ならば……お前も……こちらへ来い』


黒い核が巨大化する。


レオの身体が引き寄せられる。


「くっ……!」


外では、森の主が突然暴れ始めていた。


カイが叫ぶ。


「レオに何か起きてる!」


ミナが杖を構える。


「どうするの!?」


守護者が森の主へ向かって走る。


ガイアの声が響く。


『レオを戻すぞ!』


カイが剣を握り直す。


「分かった!」


ミナも続く。


「絶対に連れ戻す!」


三人と一体が森の主へ立ち向かう。


一方――


黒い世界の中。


レオは巨大な核を見つめていた。


「……お前が、この力を操っているのか?」


黒い核が脈打つ。


『……来い』


レオは鎖を握る。


「断る」


青白い光がさらに強くなる。


「俺は――仲間を連れて帰る!」


――第86話・完――

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