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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第85話「森の主」

森の奥。


巨大な影が、ゆっくりと木々の間から姿を現した。


カイが息を呑む。


「……デカいな」


全身を黒い毛で覆われた巨大な獣。


四本の脚。


太い首。


そして額から伸びた一本の角。


体高は人間の三倍近い。


胸の中央には、これまでの魔物よりも遥かに大きな黒い光が浮かんでいた。


ミナが杖を構える。


「これが……森の主?」


『あれだけ大きな力を持つ魔物は珍しいな』


ガイアの声が響く。


レオは目を細めた。


「違う」


「何が?」


カイが聞き返す。


「こいつも……黒い力に操られてる」


巨大な獣が低く唸った。


「グルルル……」


その声だけで、周囲の木々が震える。


次の瞬間。


巨獣が地面を蹴った。


「来る!」


レオが鎖を伸ばす。


「《死者の鎖》!」


無数の鎖が巨獣の脚へ絡みつく。


だが――


ズズズズッ!


鎖ごとレオが引きずられた。


「ぐっ……!」


カイが走る。


「レオ!」


「大丈夫!」


レオが両足を踏ん張る。


「止まれ!」


さらに鎖を増やす。


一本。


十本。


数十本。


それでも巨獣の勢いは止まらない。


「レオ、無理だ!」


ミナが叫ぶ。


「《炎壁》!」


巨大な炎の壁が目の前に出現する。


巨獣が炎へ突っ込んだ。


「グオオオオオッ!」


炎をまとったまま、なお走り続ける。


「そんな……!」


ミナが後退する。


カイが横から飛び込んだ。


「俺が止める!」


剣を両手で握る。


「《裂空斬・弐》!」


巨獣の前脚へ斬撃を叩き込む。


ズガンッ!


「くっ……!」


剣が毛皮を切り裂いた。


しかし、浅い。


巨獣の爪が振り下ろされる。


「うおっ!」


カイが飛び退く。


地面が大きくえぐれた。


「まともに受けたら終わるぞ……!」


巨獣が再びカイへ向く。


その瞬間。


守護者が巨獣の前へ立った。


「……」


巨獣が足を止める。


守護者と巨獣が睨み合う。


レオが気づく。


「守護者……」


守護者の身体から白い光が広がった。


巨獣の胸にある黒い光が反応する。


「グオオッ!」


巨獣が守護者へ突進した。


守護者は逃げない。


両腕を前へ出す。


ドォン!


巨大な衝撃音。


守護者の身体が数メートル押し込まれる。


それでも倒れない。


カイが驚く。


「受け止めた……!」


レオが叫ぶ。


「今だ!」


ミナが魔法を放つ。


「《炎槍・連撃》!」


炎の槍が巨獣の側面へ突き刺さる。


巨獣が守護者から離れる。


カイが追撃する。


「《裂空斬》!」


斬撃が巨獣の肩へ入る。


「グオオオッ!」


巨獣が咆哮する。


レオはその隙を逃さない。


「《死者の鎖・拘束》!」


鎖が巨獣の四肢を一気に拘束する。


今度は動きを止めた。


「よし!」


しかし、巨獣の胸の黒い光が強く輝く。


「……!」


鎖が一本ずつ黒く染まっていく。


レオが驚く。


「俺の力まで……吸ってる?」


『気をつけろ!』


ガイアが叫ぶ。


『あいつは力を食ってる!』


「だったら――」


レオが鎖を切ろうとした。


だが、遅かった。


黒い光が一気に膨張する。


「うわっ!」


レオたちが吹き飛ばされる。


カイが地面を転がる。


「くそっ……!」


ミナも木に背中をぶつけた。


「痛っ……!」


守護者だけが立っていた。


巨獣がゆっくりと顔を上げる。


その目に、先ほどまでとは違う光が宿っている。


赤い瞳。


その奥に――


黒い紋章。


レオが息を呑む。


「……黒い紋章?」


胸の黒い光がさらに大きくなる。


そして。


巨獣の口から、人間の声が漏れた。


「……カエ……セ……」


レオの表情が変わる。


「今、何て……?」


「……タマシイ……ヲ……」


巨獣の身体が震える。


「……カエセ……」


ミナが呟く。


「しゃべった……」


カイも剣を構え直す。


「こいつの中に、誰かいるのか?」


レオは巨獣を見つめる。


確かに聞こえた。


あの声は魔物のものではない。


死者の声だった。


「……助けを求めてる」


レオが立ち上がる。


「こいつは敵じゃない」


カイが驚く。


「じゃあ、どうする?」


レオは胸の黒い光を見る。


「中にいる魂を救い出す」


ガイアが低い声で答える。


『なら、あの黒い力を壊す必要がある』


守護者が一歩前へ出る。


白い光が再び強くなる。


レオは仲間を見る。


「三人で黒い光を弱らせる」


カイが頷く。


「分かった」


ミナも杖を構える。


「やろう」


『俺もいる』


ガイアの力がレオへ集まる。


「行くぞ」


五人の力が重なる。


しかし――


森のさらに奥。


巨獣の胸にある黒い紋章と同じ光が、もう一つ。


さらにもう一つ。


次々と浮かび上がった。


レオが振り返る。


「……まだある」


ガイアの声が響く。


『あの黒い力、森全体に広がってるぞ』


レオは森の奥を見据えた。


「だったら、ここで終わらせる」


巨獣が咆哮する。


「グオオオオオオオッ!」


戦いは、さらに激しさを増していく。


――第85話・完――

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