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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第84話「黒い力」

森の奥から響く咆哮。


その直後、捕らえられていた魔物たちが一斉に身体を起こした。


「まだ動くのか!」


カイが剣を構える。


鎖に縛られた魔物たちの胸元で、黒い光が激しく脈打っている。


一つ。


また一つ。


黒い光が互いに反応する。


レオが目を細めた。


「やっぱり……あの黒い力がこいつらを動かしてる」


『しかも、さっきより強くなっている』


ガイアの声が低くなる。


ミナが杖を構え直した。


「じゃあ、あの力をどうにかしないと魔物を倒しても意味がない」


「そういうことだ」


レオが鎖を握り直す。


「なら、まず黒い力との繋がりを断つ」


魔物の一匹が鎖を引きちぎった。


「グオオッ!」


「来る!」


カイが前へ出る。


「《裂空斬》!」


魔物の爪と剣がぶつかる。


ガキィン!


「くっ……!」


カイの身体が押し戻される。


「さっきより重い!」


魔物がさらに踏み込む。


カイは剣を滑らせ、爪を受け流した。


「なら、こっちも上げる!」


低く身を沈める。


「《裂空斬・弐》!」


斜め下から振り上げた剣が魔物の胸を捉える。


だが、黒い光が盾のように広がった。


ガァン!


「防いだだと!?」


カイが後退する。


ミナがすぐに援護へ入った。


「カイ、下がって!」


杖の先に炎が集まる。


「《炎槍・連撃》!」


炎の槍が次々と飛んでいく。


魔物は左右へ跳びながらかわす。


一発。


二発。


三発。


そして四発目が脚を捉えた。


「グオッ!」


魔物がよろめく。


「今!」


カイが踏み込む。


しかし、その瞬間。


魔物の胸の黒い光が強く輝いた。


傷ついた脚が急速に再生していく。


「……再生まで?」


ミナが息を呑む。


『あの黒い力が魔物の生命力そのものを補っている』


ガイアが分析する。


『いや……生命力だけじゃない』


レオが魔物を見る。


「死者の力まで混ざってる」


黒い光の中に、微かな白い光が混じっていた。


レオには分かる。


それは死者の魂だった。


「……こいつらの中に、死者の魂が取り込まれてる」


ミナの表情が曇る。


「じゃあ、あの魔物を倒したら……」


「中の魂まで消える可能性がある」


レオは鎖を握る。


「だから、力だけを引き剥がす」


カイが笑う。


「簡単に言うなよ」


「分かってる」


レオが魔物へ手を向ける。


「だから俺がやる」


鎖が地面から伸びる。


今度は魔物の身体ではなく、胸の黒い光へ向かっていく。


「《死者の鎖》!」


鎖が黒い光へ巻きついた。


その瞬間。


「グオオオオオオッ!」


魔物が激しく暴れ始めた。


レオの身体も引っ張られる。


「ぐっ……!」


『レオ!』


ガイアが叫ぶ。


「大丈夫!」


鎖を離さない。


魔物の中から、いくつもの声が聞こえてくる。


『苦しい……』


『ここから……出して……』


『暗い……』


レオの表情が変わる。


「聞こえる……」


死者たちが助けを求めている。


「待ってろ」


レオは力を込める。


「必ず出してやる!」


黒い光が激しく抵抗する。


その瞬間、守護者が動いた。


白い光がレオの鎖へ流れ込む。


黒い力が大きく揺らぐ。


『今だ!』


ガイアが叫ぶ。


「《死者の鎖・解放》!」


鎖が一気に締まる。


黒い光から、白い光が次々と抜け出していく。


一つ。


二つ。


三つ。


無数の魂が魔物の身体から解放された。


黒い光が弱まる。


魔物も力を失い、地面へ倒れた。


「……終わった?」


ミナが近づく。


レオは魔物を確認する。


「生きてる」


カイが剣を下ろす。


「よし……」


しかし。


森の奥から、再び黒い光が走った。


倒れていた魔物の胸に、黒い光が戻ろうとする。


「まだだ!」


レオが鎖を伸ばす。


だが、黒い光は地面へ潜り込んだ。


「逃げた……?」


『違う』


ガイアが即座に否定する。


『戻ったんだ』


「どこへ?」


ガイアは森の奥を見た。


『あそこだ』


木々の向こう。


巨大な黒い光が、ゆっくりと浮かび上がる。


まるで森そのものが脈打っているようだった。


守護者が前へ出る。


「……」


その身体から白い光が強くなる。


レオも気づいた。


「守護者が警戒してる」


カイが剣を握る。


「ってことは、あれが本命か」


ミナが頷く。


「行こう」


レオが歩き出す。


しかし――


森の奥から、地面を揺らすほどの音が響いた。


ドン……。


ドン……。


何かが近づいている。


カイが構える。


「今度は一匹じゃないな」


レオは死者の声を探る。


だが、聞こえてくるのは――


悲鳴だけだった。


『逃げろ……』


『来る……』


『あれは……魔物じゃない……』


レオの目が見開かれる。


「魔物じゃない……?」


黒い光の向こう。


巨大な影が立ち上がった。


その姿は、まだ木々に隠れて見えない。


だが、二本の赤い目だけがこちらを見つめていた。


『グルルルル……』


ガイアが低く呟く。


『どうやら、この森の主が出てきたみたいだな』


レオは鎖を構える。


「……全員、気をつけろ」


冥夜の旅団の前に、新たな敵が姿を現そうとしていた。


――第84話・完――

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