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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第83話「群れ襲来」

森の奥から、唸り声が重なっていく。


一つ。


二つ。


十。


それ以上。


木々の隙間から姿を現したのは、先ほどの魔物と同じ姿をした獣たちだった。


黒い毛並み。


鋭い牙。


そして胸元に浮かぶ、黒い光。


カイが剣を握り直す。


「……多すぎないか?」


ミナも周囲を見回す。


「少なくとも二十匹はいるよ」


『もっといる』


ガイアの声が響く。


「まだいるのか?」


『森の奥に反応が続いている。こいつらだけじゃない』


レオは魔物の群れを見据えた。


「町の人たちが襲われたのも、こいつらか」


案内してきた男が震えながら後退する。


「俺は町に戻る……」


「それがいい」


レオが頷く。


「ここから先は俺たちがやる」


男は何度も頷き、来た道を走っていった。


直後。


一匹の魔物が地面を蹴った。


「来るぞ!」


カイが前へ出る。


「《裂空斬》!」


横薙ぎの一撃が魔物の胸を切り裂く。


魔物が吹き飛び、木の幹へ激突した。


「一匹!」


だが、左右から二匹が同時に迫る。


「くっ!」


カイが剣を構え直す。


その前にミナの炎が走った。


「《フレイム・バースト》!」


炎が二匹を包み込む。


しかし――


「まだ動いてる!」


炎の中から魔物が飛び出した。


「嘘!」


ミナが後退する。


レオが手を伸ばした。


「《死者の鎖》!」


鎖が地面から飛び出し、一匹の前脚を捕らえる。


「カイ!」


「任せろ!」


カイが踏み込む。


「《裂空斬・弐》!」


今度は首元を狙った。


ザンッ!


魔物が倒れる。


だが、別の魔物がカイの背後へ迫っていた。


「カイ!」


守護者が動く。


黒い爪が振り下ろされる直前、守護者が腕を突き出した。


ガァンッ!


魔物の爪が弾き返される。


カイが振り返る。


「助かった!」


守護者は答えず、次の魔物へ向き直る。


一体。


二体。


三体。


守護者は次々と攻撃を受け止め、群れの動きを食い止めていく。


『今だ、レオ!』


「分かってる!」


レオが両手を広げる。


地面から無数の鎖が伸びた。


「《死者の鎖・群縛》!」


鎖が魔物たちの脚や胴へ絡みつく。


「これで動きを止める!」


しかし――


黒い光が一斉に輝いた。


鎖が軋む。


「なっ……!」


魔物たちの力が一気に増す。


一本。


また一本。


鎖が砕けていく。


『黒い力が互いに繋がってる!』


ガイアが叫ぶ。


「繋がってる?」


『一匹が力を受ければ、他の奴らにも流れている!』


レオは魔物たちを見る。


胸元の黒い光。


確かに、すべてが同じような間隔で脈打っていた。


「つまり……一匹ずつ倒しても、他から力を補われるのか」


ミナが杖を構える。


「じゃあ、同時に攻撃すれば?」


「やってみよう!」


カイが走る。


「ミナ、右!」


「分かった!」


二人が左右へ分かれる。


カイが一匹へ斬りかかり、ミナが別の一匹へ炎を放つ。


「《炎槍・三連》!」


三本の炎槍が魔物へ突き刺さる。


同時にカイの剣が別の魔物を捉えた。


「せいやっ!」


二匹が同時に倒れる。


しかし――


胸元の黒い光が消えない。


倒れた二匹の黒い光が、周囲の魔物へ吸い込まれていく。


ミナが目を見開く。


「やっぱり……!」


倒れた魔物の力を、別の魔物が吸収している。


カイが舌打ちする。


「倒せば倒すほど、残った奴が強くなるってことか!」


『厄介だな』


ガイアの声が低くなる。


レオは周囲を見回した。


「なら、全部をまとめて止める」


カイが笑う。


「できるのか?」


「やるしかない」


レオは地面へ手をついた。


「死者たち……力を貸してくれ!」


地面から無数の青白い光が浮かび上がる。


この森で命を失った者たち。


獣。


人間。


名も知らない死者たち。


彼らの力がレオの周囲へ集まっていく。


『レオ』


ガイアの声が重なる。


『俺も力を貸す』


「頼む、ガイア!」


ガイアの力がレオへ流れ込む。


その瞬間、死者の鎖が変化した。


鎖の表面に青白い光が走る。


「《死者の鎖・連環》!」


一気に地面を走った鎖が、魔物たちを次々と捕らえる。


一匹。


二匹。


五匹。


十匹。


「グオオオオッ!」


魔物たちが一斉に暴れる。


レオの腕が震える。


「ぐっ……!」


カイが駆け寄った。


「レオ!」


「大丈夫だ!」


ミナも反対側から魔法を放つ。


「《炎壁》!」


魔物たちの進路を炎の壁で塞ぐ。


「これ以上、近づけさせない!」


守護者が前へ出る。


その身体から白い光が広がった。


魔物たちの黒い光が、一瞬だけ弱まる。


ガイアが気づく。


『守護者の力だ!』


レオも理解した。


「黒い力を弱められるのか!」


守護者が頷く。


「なら……今だ!」


レオが鎖へ力を注ぎ込む。


「全員、力を合わせる!」


カイが剣を構える。


「任せろ!」


ミナも杖を握る。


「いくよ!」


ガイアの力がさらに重なる。


守護者の白い光が森を照らす。


そして――


魔物たちの胸元にある黒い光が、一斉に揺らいだ。


だが。


森のさらに奥。


まだ見えない場所で――


巨大な黒い光が一度だけ脈打った。


「……!」


レオが振り向く。


ガイアも同時に気づいた。


『レオ……今のは』


「ああ」


森の奥から、低い咆哮が響く。


グオオオオオオオ……。


カイが剣を構える。


「まだ何かいるぞ」


レオは森の奥を見つめた。


「……こいつらを操っている何かがいる」


黒い光が、再び脈打った。


そして目の前の魔物たちが、一斉に咆哮を上げる。


戦いは、まだ始まったばかりだった。


――第83話・完――

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