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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第80話「三つの核、砕ける」

地下聖域を覆う黒い霧。


三つの核を持つ異形は、胸の奥で不気味な光を放っていた。


レオは鎖を握り締める。


「……全員、準備はいいか!」


カイが剣を構える。


「いつでもいける!」


セイルも静かに頷いた。


「狙いは右の核」


ミナが杖を掲げる。


「左は私が!」


ローディンが剣を握る。


「中央はレオたちに任せる!」


守護者がレオの隣に立つ。


白い光が、その身体を包んだ。


ガイアの声が響く。


『向こう側から流れてくる力が、さらに強くなってる!』


レオは裂け目を見る。


巨大な黒い目。


その奥にある巨大な影。


「あいつに力を渡させない」


レオは鎖を構えた。


「ここで終わらせる!」


異形が咆哮した。


地下聖域全体が揺れる。


「行くぞ!」


三方向から、同時に走り出した。


カイとセイルが右側へ。


ミナとローディンが左側へ。


レオと守護者が中央へ。


最初に動いたのは右側だった。


「《境界杭・三連》!」


セイルが三本の杭を地面へ打ち込む。


異形の右半身が一瞬止まる。


「今だ!」


カイが跳ぶ。


「《裂空斬・連》!」


斬撃が何度も胸へ叩き込まれる。


一撃。


二撃。


三撃。


四撃。


右の核を覆っていた黒い殻が砕けていく。


「あと少し!」


異形が腕を振り上げる。


カイへ叩きつけようとする。


セイルが前へ出た。


「させない!」


ガキィン!


剣で受け止める。


「カイ!」


「分かってる!」


カイが剣を振り上げる。


「これで……!」


「《裂空斬・極》!」


ズバァン!


右の核に亀裂が走った。


一瞬、黒い光が漏れる。


「まだだ!」


カイはさらに踏み込む。


「うおおおおっ!」


ドン!


剣が核を直撃した。


右の核が大きく砕けた。


同時に左側。


「ミナ!」


「任せて!」


ミナが杖を振る。


「《炎界・収束》!」


周囲の炎が一点へ集まる。


巨大な炎の槍が形成された。


ローディンが異形の腕を引きつける。


「こっちだ!」


異形がローディンへ襲いかかる。


一撃。


二撃。


ローディンは必死に受け流す。


「ぐっ……!」


三撃目。


剣が弾き飛ばされる。


「ローディン!」


「撃て!」


ローディンが叫ぶ。


「今しかない!」


ミナは一瞬だけ迷った。


そして杖を振り下ろす。


「《炎槍・極》!」


巨大な炎が異形へ突き刺さる。


ズドォォン!


炎が左胸を貫いた。


黒い殻が砕ける。


「見えた!」


左の核が露出する。


ローディンが地面に落ちた剣を拾う。


「《聖断・裂》!」


光の斬撃が炎の中を走った。


左の核に亀裂が入る。


「もう一撃!」


ミナが炎を集中させる。


「《炎槍・穿》!」


炎槍が核を貫いた。


左の核も砕け散った。


「やった!」


だが――


異形はまだ動いていた。


中央に残った核が、激しく脈動する。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


ヴァルドが叫ぶ。


「中央の核が残っている!」


レオは守護者とともに異形へ迫っていた。


「分かってる!」


中央の頭が口を開く。


黒い霧が一気に吐き出される。


レオは鎖を地面へ突き刺す。


「《死者の鎖・盾陣》!」


鎖が壁となり、霧を受け止める。


だが、黒い霧が鎖を侵食していく。


「くっ……!」


ガイアが叫ぶ。


『レオ! 守護者の力を使って!』


レオは守護者を見る。


「……いけるか?」


守護者が頷く。


白い光がレオの鎖へ流れ込む。


鎖が白く輝いた。


「これなら……!」


レオは鎖を握り直す。


「《死者の鎖・境界断》!」


白い鎖が黒い霧を切り裂く。


異形の胸へ突き進む。


中央の核が露出する。


しかし、異形が最後の抵抗を見せた。


三つの頭が同時に咆哮する。


黒い力が周囲へ爆発する。


「レオ!」


カイが叫ぶ。


「離れろ!」


「いや!」


レオは動かなかった。


「ここで終わらせる!」


守護者が前へ出る。


白い光を全身へ集める。


レオも力を集中させる。


「みんな!」


「おう!」


「任せて!」


「行け!」


カイ、ミナ、ローディン、セイルがそれぞれの力を中央へ送り込む。


レオの鎖がさらに輝く。


死者たちの声が響く。


『進め』


『終わらせろ』


『生きる者たちのために』


レオの目が開く。


「これで……!」


鎖が中央の核を包み込む。


「終わりだ!」


「《死者の鎖・境界断・終》!」


ドォォォォン!


巨大な光が地下聖域を包み込んだ。


異形の身体に無数の亀裂が走る。


中央の核が砕ける。


三つの核が同時に崩壊した。


黒い霧が消えていく。


異形の身体も、ゆっくりと崩れ落ちた。


そして――


完全に消滅した。


静寂が戻る。


誰もすぐには動かなかった。


カイが剣を下ろす。


「……終わったのか?」


セイルが周囲を確認する。


「三つの核は消えた」


ミナが息を吐く。


「本当に……終わった」


ローディンが剣を収める。


「少なくとも、今はな」


レオは裂け目を見る。


そこには、まだ小さな亀裂が残っていた。


「……門そのものが完全に消えたわけじゃない」


ヴァルドが静かに答える。


「当然だ」


アシュレイも裂け目を見つめる。


「だが、先ほどまでの危険な状態ではない」


セイルが歩み寄る。


「境界は落ち着きを取り戻し始めている」


レオは守護者を見る。


守護者の白い光も、少しずつ弱まっていた。


「ありがとう」


守護者は何も言わない。


ただ、いつものようにレオの隣に立つ。


ガイアが小さく笑った。


『ずっと一緒にいるってことじゃない?』


レオも笑う。


「そうだな」


その時だった。


地下聖域の奥から、声が聞こえた。


「……終わったようだな」


全員が振り返る。


黒い紋章を持つ男が立っていた。


黒き境界派の残党。


カイが剣を構える。


「まだいたのか!」


男は武器を抜かなかった。


「戦うつもりはない」


ローディンが睨む。


「信用できると思うか?」


「信用する必要はない」


男は床へ視線を落とす。


「我々が求めていたものは、すでに確認できた」


レオが尋ねる。


「俺のことか?」


「そうだ」


男は答えた。


「お前は、三百年前のネクロマンサーとは違う」


ヴァルドが黙って男を見る。


「そして……」


男は守護者へ視線を向ける。


「二人目の守護者とも違う」


レオが眉を寄せる。


「何を知っている?」


男は首を横に振った。


「まだ何も分かっていない」


「じゃあ、何のために来た?」


「確かめるためだ」


男は黒い紋章に手を当てる。


「死者を率いる力と、境界を閉じる力」


そしてレオを見る。


「その二つが、再び揃ったことを」


レオは黙っていた。


男は背を向ける。


「我々も一度、戻る」


カイが剣を構えたまま言う。


「逃がしていいのか?」


セイルが首を横に振る。


「今は追う必要はない」


レオも頷く。


「俺たちは門を守ることを優先する」


男は振り返らない。


「……それでいい」


黒い霧に包まれ、その姿が消える。


ローディンが呟く。


「奴らは、まだ諦めていないな」


ヴァルドが答える。


「おそらくな」


レオは裂け目を見る。


「なら、俺たちも終わらせないといけない」


ミナが振り返る。


「この場所を?」


「違う」


レオは仲間を見る。


「三百年前から続いてる、この問題そのものを」


カイが笑った。


「また面倒なこと言い出したな」


「嫌なら帰っていいぞ」


「誰が帰るかよ」


ミナも笑う。


「私も付き合う」


ローディンが肩をすくめる。


「教会としても、ここまで関わった以上は放置できない」


セイルは静かにレオを見る。


「境界監視者も見届ける」


レオは頷いた。


その時、地下聖域の天井から光が差し込んだ。


夜明けが近い。


長い戦いを終えたレオたちは、ゆっくりと地上へ向かって歩き始める。


三百年前から続いていた謎。


死者と生者。


聖王教会。


黒き境界派。


そして死界の門。


まだ全てが終わったわけではない。


それでも――


今は、前へ進める。


レオは歩きながら、守護者へ視線を向けた。


「行こう」


守護者が静かに歩き出す。


ガイアの声が響く。


『次は、どこへ行く?』


レオは空を見上げた。


「まずは……仲間たちと旅を続ける」


その先に何が待っているのか。


まだ誰にも分からない。


だが、レオたちは歩き続ける。


生きている者と、死んだ者。


その両方の声を聞きながら。


――第80話・完――

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