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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第76話「境界断ち」

三体の異形が一斉に襲いかかった。


中央の異形がレオへ。


右の異形がカイとセイルへ。


左の異形がミナとローディンへ。


そして、裂け目の奥では巨大な黒い目がレオたちを見つめている。


「来るぞ!」


レオが鎖を構えた。


中央の異形が腕を振り下ろす。


ガァン!


守護者が受け止めた。


しかし、もう一本の腕がレオへ伸びる。


「させるか!」


《死者の鎖》


鎖が異形の腕へ巻き付く。


ギシッ!


レオが引き寄せる。


「守護者!」


守護者が踏み込む。


白い光をまとった拳が異形の胸へ叩き込まれた。


ドンッ!


異形が後方へ吹き飛ぶ。


だが、着地した瞬間には再び立ち上がった。


「やっぱり簡単には倒れないか……」


ガイアが叫ぶ。


『倒す必要はないよ!』


「分かってる!」


レオは異形ではなく、その背後を見る。


黒い霧の糸。


異形と裂け目を繋いでいる。


「狙うのは、あれだ!」


ヴァルドが目を見開く。


「境界との接続を断つつもりか!」


「そう!」


レオは鎖を分岐させる。


一本が異形を捕らえる。


もう一本が黒い霧の糸へ向かう。


「《死者の鎖・分断》!」


鎖が霧の糸へ迫る。


しかし――


ギィン!


何かに弾かれた。


「くっ!」


レオの身体が後ろへ吹き飛ぶ。


守護者が受け止める。


「ありがとう」


守護者が裂け目を見る。


白い光を放つ。


その光が霧の糸を照らした。


すると、糸の周囲に無数の黒い文字が浮かび上がる。


エレナが息を呑む。


「古代文字……」


「読めるか?」


「一部だけなら……」


エレナが目を凝らす。


「これは……『喰らう者を境界へ繋ぐ』」


アシュレイが続ける。


「なら、その繋がりは自然にできたものではない」


ヴァルドが頷く。


「誰かが作った?」


「違う」


アシュレイが裂け目を見る。


「もっと正確には……境界そのものが、あの存在をこちらへ繋ぎ止めている」


レオが振り返る。


「境界が?」


「そうだ」


アシュレイの表情が険しくなる。


「奴らは境界を壊しているように見える。だが実際には、境界から力を吸収しながら、こちら側へ存在を固定している」


レオは理解した。


「だから、三体を倒しても……」


「また別の形で現れる可能性がある」


「だったら、繋がりを断つしかない」


レオが再び立ち上がる。


その頃、右側ではカイが異形と激しく斬り結んでいた。


「セイル、こいつの動き読めるか!」


「三秒後に右腕!」


「分かった!」


異形が腕を振る。


カイは先に踏み込んだ。


「そこだ!」


ガキィン!


剣が腕を弾く。


セイルが背後へ回る。


「今!」


「おう!」


カイが斬り上げる。


ザンッ!


異形の肩が裂ける。


黒い霧が噴き出した。


しかし、異形はその霧を吸い込もうとする。


「させない!」


セイルが剣を突き立てる。


「《境界杭》!」


床から白い光が立ち上がった。


異形の身体が一瞬だけ硬直する。


「カイ!」


「任せろ!」


カイが剣を振り抜く。


だが、異形の身体には浅い傷しか残らない。


「くそっ!」


セイルが叫ぶ。


「深追いするな!」


「分かってる!」


二人は異形を裂け目から引き離していく。


左側でも、ミナとローディンが同じように戦っていた。


「ミナ、下がれ!」


「分かってる!」


異形の腕が地面を薙ぐ。


二人が左右へ飛ぶ。


ローディンが一気に接近する。


「《聖断》!」


斬撃が異形の身体を捉える。


ミナが杖を掲げる。


「《炎輪》!」


炎の輪が異形を包む。


「今なら!」


炎の輪を縮める。


異形が動きを止めた。


だが、黒い霧が炎を侵食する。


「まだよ!」


ミナは魔法を解除した。


「ローディン!」


「分かっている!」


ローディンが異形を裂け目とは反対側へ誘導する。


「こっちだ!」


異形が追う。


「よし……!」


ミナが息を吐く。


三体すべてが裂け目から離れ始めていた。


「レオ!」


セイルが叫ぶ。


「今ならできる!」


レオが頷く。


「守護者!」


守護者が前へ出る。


レオの鎖と守護者の光が重なる。


白い光の中に、無数の死者の姿が現れた。


『力を貸す』


『境界を守る』


『導いてくれ』


レオは目を閉じる。


「ありがとう」


鎖が一本に集まる。


その先端が、黒い霧の糸へ向く。


「これで……断つ!」


《死者の鎖・境界断ち》


ズガァン!


鎖が霧の糸へ突き刺さった。


黒い文字が一斉に砕ける。


ギギギギギ……!


裂け目が激しく震える。


三体の異形が同時に振り返った。


『……邪魔……』


黒い目が大きく開く。


黒い霧がレオへ向かって一気に流れ込む。


「レオ!」


守護者が前へ出る。


しかしレオは首を横に振った。


「大丈夫だ!」


「……!」


「今度は俺が受ける!」


レオは鎖を自分の周囲へ巻き付ける。


死者たちの力が一斉に集まる。


黒い霧が身体へ触れる。


ズズズ……。


力が吸われていく。


「ぐっ……!」


だが、レオは耐える。


『レオ!』


ガイアの声。


「まだ……!」


黒い霧がさらに濃くなる。


「まだ終わってない!」


鎖が白く輝く。


「俺は……死者の力を奪わせない!」


レオの周囲に無数の死者が現れた。


彼らが鎖を掴む。


一人。


十人。


百人。


死者たちの力がレオへ集まる。


そして――


黒い霧が押し返された。


「今だ!」


守護者が両手を広げる。


白い光が裂け目を覆う。


レオが鎖を引く。


「断てぇぇぇっ!」


バキィィィン!


黒い霧の糸が切れた。


三体の異形が同時に苦しみ始める。


『……ッ……!』


身体から黒い霧が大量に噴き出す。


「成功した!」


エレナが叫ぶ。


だが、異形は消えない。


「まだいる!」


カイが構える。


レオも息を整える。


「……繋がりは切れた」


アシュレイが異形を見る。


「なら、ここからが本当の戦いだ」


三体の異形が、ゆっくりと立ち上がった。


先ほどまでとは違う。


裂け目から力を吸い上げていない。


それでも――


三体とも、まだ戦える。


そして中央の異形が、初めてレオへ真正面から向き直った。


『……喰う……』


レオが鎖を構える。


「今度は、こっちの番だ」


守護者が隣に立つ。


三体の異形も同時に構えた。


地下聖域に、再び激しい戦いの気配が満ちていく。


――第76話・完――

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