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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第73話「三体の異形」

地下聖域を揺らす轟音。


三体の異形が、黒い霧の中でゆっくりと動き始めた。


中央にいる異形は、長い腕を引く。


その左右にいる二体も、それぞれ別の方向へ散った。


「三方向から来る!」


カイが剣を構える。


「俺が右を止める!」


「なら左は私が!」


ミナが杖を握り直す。


「無理するな!」


ローディンが叫ぶ。


「こいつらは普通の魔物とは違う!」


カイが走る。


「だったら、普通じゃない戦い方をすればいい!」


右側の異形がカイへ向かって跳んだ。


「来い!」


カイが剣を振る。


ガキィン!


異形の腕と剣がぶつかる。


そのまま押し合う。


「ぐっ……!」


腕の力が強い。


カイの足が床を削る。


「こいつ……!」


異形のもう一方の腕が伸びる。


カイは身体を沈めてかわした。


腕が背後の石柱を直撃する。


バキィン!


石柱が大きく崩れた。


「危ねぇ……!」


カイは距離を取る。


異形が再び迫る。


今度は真正面から突っ込んできた。


「だったら!」


カイが踏み込む。


「《裂空斬》!」


斜めに振り抜いた剣が異形の胸を斬り裂く。


黒い霧が噴き出した。


だが、異形は止まらない。


傷口が閉じていく。


「また再生かよ!」


異形の腕が迫る。


カイは剣で受けた。


しかし、その腕から黒い霧が染み出してくる。


「……っ!」


力が吸われていく。


「まずい!」


レオが気付く。


だが、中央の異形がレオへ向かって突進した。


「レオ!」


守護者が前へ出る。


ドンッ!


黒い腕と守護者の腕が激突する。


白い光が弾ける。


レオも鎖を伸ばした。


《死者の鎖》


異形の身体へ鎖が巻き付く。


「止まれ!」


異形が鎖を掴む。


黒い霧が鎖へ流れ込む。


レオはすぐに鎖を一本切り離した。


「やっぱり吸収する……!」


ガイアが叫ぶ。


『直接力をぶつけるのは駄目!』


「分かってる!」


レオは鎖を地面へ伸ばした。


怪物ではなく、その周囲を囲む。


「なら、動きを止める!」


《死者の鎖・封縛陣》


鎖が床に円を描く。


異形の足元が白く輝いた。


グググッ……。


異形の動きが鈍る。


「今なら!」


レオが守護者を見る。


守護者が頷く。


白い光が一気に広がった。


異形の身体が押し戻される。


だが――


「レオ!」


エレナの叫び声。


左側では、ミナが異形に追い詰められていた。


「《炎槍》!」


炎の槍が異形へ飛ぶ。


しかし異形は腕で受け止めた。


炎が黒い霧に吸い込まれる。


「そんな……!」


異形が腕を振る。


ミナが吹き飛ばされた。


「ミナ!」


ローディンが駆け込む。


剣で異形の腕を受け止める。


ガキィン!


「下がれ!」


「でも……!」


「こいつは俺が引き受ける!」


ローディンが押し返す。


異形が連続して腕を振る。


一撃。


二撃。


三撃。


ローディンは必死に受け流す。


「くっ……!」


四撃目をかわした瞬間、異形の腕が地面を叩いた。


衝撃でローディンの身体が浮く。


「ぐあっ!」


壁へ叩きつけられる。


「ローディン!」


ミナが立ち上がる。


「私はまだ戦える!」


杖を握る。


「私の魔法は、直接当てなければいい!」


ミナが床へ杖を突き立てる。


「《炎界》!」


周囲の床から炎が噴き上がる。


異形の周囲を炎が取り囲んだ。


しかし炎そのものを吸収されないよう、ミナは距離を保った。


「閉じ込めるだけなら……!」


異形が炎の外へ出ようとする。


「させない!」


ローディンが立ち上がる。


剣を振り抜き、異形の足を狙う。


「《聖断》!」


光を帯びた斬撃が足元を切り裂く。


異形が一瞬、動きを止めた。


「今!」


ミナが炎を収束させる。


ドンッ!


異形の身体が炎に包まれた。


だが――


炎の中から黒い霧が膨れ上がる。


「まだ動くのか……!」


ミナが息を呑む。


その霧の中から、異形が飛び出した。


ローディンが剣を構える。


「来い!」


二人の間で、再び戦いが始まる。


その頃。


レオと守護者も中央の異形を押さえ続けていた。


「こいつ……力を吸収するだけじゃない」


レオが異形を見ながら呟く。


「周りの境界そのものから力を取ってる」


ヴァルドが頷いた。


「だから時間が経つほど強くなる」


アシュレイが続ける。


「ならば、長期戦は不利だ」


レオは周囲を見る。


床の裂け目。


黒い霧。


弱っていく守護者。


「だったら、先に境界を切り離す」


セイルが振り返る。


「できるのか?」


「分からない」


レオが鎖を握る。


「でも、やるしかない」


「ならば我々が道を作る」


セイルが境界監視者へ合図する。


「全員、裂け目の周囲へ!」


監視者たちが一斉に動く。


三人の異形が反応した。


中央の異形がレオへ。


右の異形がカイへ。


左の異形がローディンとミナへ。


「来るぞ!」


カイが叫ぶ。


三方向で同時に戦闘が激しくなる。


レオは中央の異形の攻撃をかわす。


腕が頬をかすめる。


「くっ!」


血が一筋流れる。


守護者が腕を振る。


白い光が異形を押し返す。


レオはその隙に鎖を床へ伸ばした。


一本。


二本。


三本。


裂け目の周囲へ鎖を打ち込んでいく。


「あと少し……!」


その時。


中央の異形が鎖を掴んだ。


「しまった!」


黒い霧が鎖を伝ってくる。


レオの腕まで届こうとする。


「レオ!」


守護者が割って入った。


黒い霧が守護者の身体を包む。


「守護者!」


レオが叫ぶ。


守護者は動かない。


その胸の黒い紋章だけが、強く輝いていた。


そして――


守護者の身体から、巨大な白い壁が生まれた。


黒い霧が押し返される。


「……!」


ヴァルドが目を見開く。


「境界そのものを固定している……!」


レオは鎖を握り締めた。


「今だ!」


《死者の鎖・封界》


大量の鎖が裂け目へ突き刺さる。


ゴゴゴゴゴ……!


裂け目が少しずつ縮んでいく。


しかし三体の異形が同時に咆哮した。


黒い霧が一斉に膨張する。


「まだ終わらない!」


セイルが叫ぶ。


「奴らは境界を守ろうとしているんじゃない!」


レオが振り返る。


「じゃあ何をしてる!」


「境界を壊すために――」


セイルが裂け目を指差す。


「三体が一つの力を集めている!」


三体の身体から黒い霧が伸びる。


それぞれの霧が中央で繋がっていく。


「……融合するつもりか」


アシュレイが呟いた。


レオは鎖をさらに強く握った。


「させるか!」


しかし、三体の動きが変わった。


中央の異形がレオを見つめる。


顔のない黒い穴が、大きく開く。


そして初めて、言葉を発した。


『……鍵……喰らう……』


レオの胸元が強く反応した。


ドクン――。


守護者の紋章も同時に輝く。


ガイアが叫ぶ。


『レオ! 来るよ!』


三体の異形が、同時に動いた。


――第73話・完――

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