↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
PR
72/174

第72話「喰らう者」

黒い霧の中から、一体の怪物がレオへ向かって飛び出した。


「来る!」


レオが身を捻る。


ズガンッ!


怪物の腕が床を叩き砕いた。


「速い……!」


レオは後ろへ跳ぶ。


だが、怪物は間髪入れずに追ってくる。


長い腕が横薙ぎに振られた。


ガキィン!


レオの前に死者の鎖が展開する。


衝撃で身体が後ろへ滑った。


「くっ……!」


『レオ、正面から受け続けたら持たない!』


「分かってる!」


怪物が再び腕を振り上げる。


レオは鎖を地面へ突き刺した。


《死者の鎖・固定》


鎖が床に絡みつき、怪物の足を捕らえる。


動きが一瞬止まった。


「今だ!」


カイが横から飛び込む。


「《裂空斬》!」


剣が怪物の身体を斬り裂いた。


黒い霧が散る。


「やった!」


しかし――


傷口がゆっくりと塞がっていく。


カイの顔が引きつる。


「……再生した?」


「普通の傷じゃ止められない」


ヴァルドが叫ぶ。


「そいつは肉体を持っていない!」


怪物がカイへ腕を伸ばす。


「うおっ!」


カイが飛び退く。


その腕の先から黒い霧が噴き出した。


「触れるな!」


レオが鎖を伸ばす。


ギシッ!


怪物の腕を絡め取った。


だが、怪物は鎖を掴む。


その瞬間。


死者の鎖から、黒い煙が吸い上げられた。


「なっ……!」


レオの表情が変わる。


鎖の力が削られている。


『レオ! 離して!』


「分かってる!」


鎖を解除する。


怪物が吸収した力を身体へ取り込んだ。


その身体が一回り大きくなる。


アシュレイが目を細める。


「やはりそうか」


「何が分かった!」


「奴は攻撃を受けているんじゃない」


アシュレイが怪物を睨む。


「力そのものを喰っている」


レオが息を呑む。


「死者の力も……?」


「おそらくな」


その時、別の場所から叫び声が上がった。


「セイル!」


境界監視者の一人が怪物に腕を掴まれていた。


黒い霧が身体へ入り込んでいく。


「ぐっ……!」


「離せ!」


セイルが剣を振る。


だが、怪物は離さない。


「まずい!」


レオが走る。


守護者も同時に動いた。


白い光が走る。


ドンッ!


怪物の腕が弾き飛ばされた。


監視者が倒れ込む。


セイルがすぐに支えた。


「大丈夫か!」


「……力が……抜ける……」


顔色が悪い。


レオは怪物を見る。


「やっぱり……」


怪物は死者だけを狙っているわけではない。


生きている者の力さえ、喰らう。


「こいつは……何でも喰うのか」


ガイアが答える。


『たぶん違う』


「違う?」


『力なら何でもいいんじゃない。境界に関係する力だけを狙ってる』


レオの目が怪物へ向く。


「境界に関係する力……」


ヴァルドが気付く。


「だから俺たちを狙うのか」


アシュレイも頷く。


「そして守護者も」


その瞬間、もう一体の怪物が守護者へ飛びかかった。


ガキィン!


守護者が腕で受け止める。


黒い霧と白い光が激しくぶつかる。


怪物の腕が守護者の胸元へ伸びる。


「守護者!」


レオが走る。


だが間に合わない。


怪物の指が、守護者の黒い紋章へ触れた。


守護者の身体が大きく揺れた。


白い光が弱まる。


「くっ……!」


レオの中で何かが弾けた。


「触るな!」


死者の鎖が一斉に放たれる。


一本。


五本。


十本。


大量の鎖が怪物へ殺到する。


《死者の鎖・群縛》


怪物の身体へ鎖が絡みつく。


しかし、怪物は鎖を掴んだ。


また吸収しようとする。


レオは鎖を切らなかった。


「……喰えるなら」


怪物の動きが止まる。


「喰ってみろ!」


レオは目を閉じた。


死者たちの声が一斉に響く。


『力を貸す』


『今度は、俺たちが支える』


『導いてくれ』


死者の鎖が強く輝く。


怪物が吸収を始める。


しかし――


「なに……?」


怪物の身体に亀裂が走った。


ヴァルドが驚く。


「死者の力を一つにまとめている……!」


レオは鎖を握り締める。


「俺はお前に力を与えてるんじゃない」


鎖がさらに強く締まる。


「死者たちと一緒に、お前を止めてるんだ!」


バキッ!


怪物の腕に亀裂が走る。


黒い霧が噴き出した。


怪物が初めて大きく後退する。


「効いた!」


ミナが叫ぶ。


だが、レオの顔には余裕がない。


「まだだ……!」


怪物の傷口から、さらに黒い霧が溢れ出す。


そして、その霧が床へ流れた。


ズズズ……。


地下に広がる裂け目へ吸い込まれていく。


セイルが気付く。


「まずい」


「何が?」


「奴はここで戦っているんじゃない」


セイルが裂け目を見る。


「境界そのものから力を吸い上げている」


レオの表情が険しくなる。


裂け目が、さっきより大きくなっていた。


「こいつを倒すだけじゃ……止まらない」


「そういうことだ」


ヴァルドが頷く。


「怪物と境界、両方を止めなければならない」


その時。


倒れていた黒き境界派の男が、ゆっくり立ち上がった。


「……やはり」


ローディンが剣を向ける。


「まだ動けるのか!」


男は怪物を見つめている。


「我々が長年探していた存在だ」


「お前たちは、こいつのことを知っていたのか!」


レオが問い詰める。


「知っていたわけではない」


男は笑う。


「呼び出したわけでもない」


「じゃあ何なんだ!」


男は裂け目を指差した。


「我々が探していたのは、門を開く方法ではない」


黒い霧が地下を満たしていく。


「境界そのものを喰らう存在だ」


レオが息を呑む。


男の言葉が響く。


「そいつが境界を喰い尽くせば……」


怪物がゆっくり顔を上げる。


「門など必要なくなる」


地下全体が大きく揺れた。


ゴゴゴゴゴ……!


レオは守護者の隣に立つ。


「……絶対に止める」


守護者も前へ出る。


二人の力が重なる。


怪物が再び身構えた。


今度は三体すべてが、レオと守護者を見ている。


戦いは、さらに激しくなろうとしていた。


――第72話・完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。