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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第68話「教会の追跡者」

地下聖域。


上階から響いていた足音が、少しずつ近づいてくる。


ローディンは剣を構えたまま、階段の上を睨んでいた。


「なぜ教会がここを知っている?」


エレナも困惑した表情を浮かべる。


「私も知りません。ここは教会の記録からも消されていたはずです」


ヴァルドが静かに口を開く。


「誰かが教えたんだろう」


「誰かって……」


レオが周囲を見る。


セイルたちは動かない。


白い仮面の者たちも、戦う様子はなかった。


「俺たちがここへ来たことを知っている人間は限られている」


レオの視線がエレナへ向く。


「エレナ。地下聖域へ入る方法を知っていたのは?」


「私とヴァルドだけです」


「ローディンは?」


「私は知らされていなかった」


ローディンが答える。


「なら、教会内部に別の人間がいる」


ガイアが呟く。


「あるいは……最初から監視されていたか」


その時。


階段の上から声が響いた。


「そこにいる者たち! 武器を捨てろ!」


ローディンが舌打ちする。


「聖騎士だけじゃないな」


「分かるのか?」


「足音が多すぎる」


レオも気配を探る。


確かに、階段の上にはかなりの人数がいる。


しかし――


一人だけ、異様に静かな気配があった。


レオは顔を上げる。


「……一人だけ、変な奴がいる」


「何?」


「死者の気配がする」


ヴァルドが反応した。


「教会側に?」


レオは頷く。


「生きている。でも、死者の力を持ってる」


エレナが驚く。


「そんな人間が教会に……?」


階段を下りてきた聖騎士たちが姿を現した。


先頭には、一人の男が立っている。


白銀の鎧。


長い外套。


腰には細身の剣。


男は地下聖域を見渡した。


「ようやく見つけた」


ローディンが剣を構える。


「お前は誰だ」


「教会直属の追跡部隊を指揮している」


男が名乗る。


「グレン・ハルヴァンだ」


ローディンの表情が変わる。


「追跡部隊……」


グレンはレオを見る。


「そして、目的はお前だ。ネクロマンサー」


レオは睨み返す。


「俺を捕まえに来たのか?」


「いや」


グレンは首を横に振った。


「お前を殺すつもりはない」


「じゃあ何のために?」


「確認するためだ」


グレンが一歩進む。


「お前が本当に『鍵』なのかを」


レオの目が細くなる。


「……その話まで知ってるのか」


エレナがグレンを見る。


「その情報を、誰から聞いたんです?」


グレンは答えない。


「エレナ。君も本部の規則に違反している」


「私は真実を確認しているだけです」


「真実?」


グレンの視線が地下の石碑へ向く。


「この場所に残された記録を、教会が何百年も封じてきた理由を知りたいか?」


「……はい」


「なら、私について来い」


エレナは首を横に振る。


「あなたを信用できません」


グレンは笑わなかった。


「それでいい」


「え?」


「簡単に信用する人間は、この場所では生き残れない」


その言葉に、レオが反応する。


「……お前、何を知っている?」


グレンはレオを見つめる。


「三百年前の事件だけではない」


地下の空気が変わった。


「教会は、過去に何度も死界の門を調査している」


エレナが驚く。


「そんな記録は――」


「表向きには存在しない」


グレンが遮る。


「しかし、記録は残っている」


ヴァルドが低く呟く。


「……隠された記録か」


「ああ」


グレンは腰の袋から一枚の古い紙を取り出した。


「これが証拠だ」


エレナが受け取る。


そこには、見覚えのある紋章が描かれていた。


謎の三つの円。


「これは……」


セイルが反応する。


「境界監視者の紋章だ」


グレンは初めてセイルを見る。


「知っているのか」


「お前たち教会は、我々を何度も探してきた」


「そうか」


グレンは驚かなかった。


「なら話は早い」


彼は紙をレオへ向ける。


「教会は境界監視者の存在を、ずっと前から把握していた」


エレナが顔を上げる。


「では……教会は彼らを探していたんですか?」


「違う」


グレンが答える。


「教会が探していたのは、境界監視者ではない」


レオが聞く。


「何を?」


グレンの視線が守護者へ移る。


「境界守護者だ」


守護者が一歩前へ出る。


グレンの表情が初めて変わった。


「……やはり、ここにいたか」


レオが守護者の前へ立つ。


「守護者に何をするつもりだ?」


「何もしない」


「信用できないな」


「ならば、これを見ろ」


グレンが別の紙を取り出す。


そこには古い絵が描かれていた。


三百年前。


若きヴァルドの隣に立つ守護者。


そして、そのさらに後ろに――


もう一体の守護者が描かれていた。


レオは言葉を失った。


「……二体?」


ヴァルドも目を見開く。


「そんなはずは……」


セイルが初めて動揺した。


「これは……」


グレンが静かに告げる。


「教会が探していたのは、こちらの守護者だ」


レオは絵を見つめる。


今、目の前にいる守護者とは少し違う。


その守護者は――


黒い紋章を胸に刻んでいた。


ガイアが低い声を出す。


「……もう一体、いる」


その瞬間。


地下聖域の奥から――


コン。


何かを叩く音が響いた。


全員が振り返る。


コン。


二度目。


そして三度目。


コン。


守護者が黒い扉へ向かって歩き出した。


レオが追いかける。


「待て!」


守護者は止まらない。


グレンも剣へ手を伸ばした。


「……まずい」


ローディンが振り返る。


「何が?」


グレンの顔から余裕が消える。


「もう一体の守護者が、目を覚ました」


――第68話・完――

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