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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第67話「境界を守る者」

地下深く。


白い仮面の男たちと、レオたちは向かい合っていた。


誰も動かない。


先ほどまで聞こえていた振動も、今は止まっている。


レオは杖を下ろさない。


「……お前たちは、死界の門を監視していると言ったな」


「ああ」


「だったら、どうして今まで何もしなかった?」


白い仮面の男は静かに答えた。


「門は長い間、安定していた」


「三百年前までは?」


「三百年前も監視していた」


その言葉に、ヴァルドが反応する。


「待て」


白い仮面の男へ近づく。


「お前たちは……三百年前からここにいたのか?」


「いた」


「なら、なぜ私たちの前に姿を現さなかった?」


「姿を現す必要がなかったからだ」


ヴァルドの表情が険しくなる。


「……黒き境界派が門を開こうとした時も?」


「あの時も監視していた」


「なら、なぜ止めなかった!」


声が地下に響く。


白い仮面の男は動じない。


「我々の役目は、門を閉じることではない」


「じゃあ何だ」


「門を開けてはいけない者を見極めることだ」


レオが眉を寄せる。


「見極める?」


「誰が門を開くのか」


男はレオを見る。


「そして、誰が門を閉じるのか」


守護者が一歩前へ出た。


白い仮面の男たちが、一斉に守護者へ視線を向ける。


「……境界守護者」


男が静かに呟く。


「本当に目覚めていたか」


レオは守護者の隣に立つ。


「守護者について知っていることを全部話せ」


「……いいだろう」


男は白い仮面を外した。


現れたのは、年齢の分からない男の顔だった。


「私はセイル」


「セイル……」


「境界監視者の一人だ」


エレナが尋ねる。


「境界監視者というのは、あなたたちの組織ですか?」


「そうだ」


「では、なぜ聖王教会の記録には存在しないのです?」


セイルは少しだけ目を細める。


「教会より古いからだ」


「……!」


「我々は、教会が生まれるより前から存在している」


ヴァルドが驚いたように呟く。


「そんな……」


セイルは石碑を指差す。


「死界の門は三百年前に生まれたものではない」


レオが反応する。


「じゃあ、いつから?」


「分からない」


「分からない?」


「我々が知る限り、門は最初から存在していた」


地下に沈黙が落ちる。


ガイアが呟いた。


「……じゃあ、三百年前の事件は最初の事件じゃなかったのか」


セイルは頷く。


「違う」


レオの顔が険しくなる。


「過去にも、門は開いたのか?」


「何度も」


ミナが息を呑む。


「何度も……?」


「だが、そのたびに閉じられてきた」


レオは守護者を見る。


「そのたびに……守護者が?」


「そうだ」


セイルは頷く。


「境界守護者は、一人ではない」


レオが目を見開く。


「……え?」


セイルの言葉が続く。


「時代ごとに、鍵を持つ者が現れる」


「そして、その者のそばに守護者が現れる」


レオは守護者を見る。


「じゃあ……俺の前にもいた?」


「いた」


「その人たちはどうなった?」


セイルの表情が変わる。


「全員が、最後まで生き残ったわけではない」


レオは黙り込む。


「……死んだのか」


「何人かは」


ミナが不安そうにレオを見る。


カイが拳を握る。


「じゃあレオも……」


「違う」


セイルが遮った。


「過去の鍵を持つ者と、お前は違う」


「何が違う?」


「お前は死者の声を聞く」


レオの目が鋭くなる。


「それなら過去のネクロマンサーも――」


「違う」


セイルは守護者を見る。


「お前は死者を従わせているのではない」


レオの胸がざわつく。


「……死者に力を貸してもらっている」


「そうだ」


ガイアが小さく笑う。


「やっぱりな」


セイルは続ける。


「だから、守護者もお前を選んだ」


その時。


守護者の身体から光が漏れた。


セイルが目を細める。


「……もう一つ、変化している」


「何が?」


「守護者の力だ」


守護者の胸元に、小さな紋章が浮かび上がる。


レオが驚く。


「今まで、こんなの……」


紋章はゆっくりと回転し、レオの手の甲へ移った。


「っ!」


レオの身体に死者の力が流れ込む。


だが、苦しくない。


むしろ――


死者たちの声が、いつもより鮮明に聞こえる。


『……レオ』


『……ここだ』


『……門の奥に……』


レオが息を呑む。


「声が……」


ガイアが驚く。


「何が聞こえる?」


レオは目を閉じる。


無数の声の中に、一つだけ異質な声が混じっている。


『……近づいている』


「何が?」


『……門を開く者が』


レオが目を開く。


「セイル!」


「分かっている」


セイルも異変を感じ取っていた。


「誰かが地上から、この場所へ向かっている」


ローディンが剣を抜く。


「黒い紋章の連中か?」


「違う」


セイルが首を横に振る。


「今度は……教会だ」


エレナが顔を強張らせる。


「教会?」


その瞬間。


上から複数の足音が響いた。


ドン!


地下への入口が破壊される。


「いたぞ!」


聖騎士たちの声。


ローディンが振り返る。


「……なぜここまで来た?」


先頭の聖騎士が叫ぶ。


「エレナ! その者たちから離れろ!」


エレナが驚く。


「待ってください!」


「その地下には禁じられた存在がいる!」


レオはセイルを見る。


セイルは静かに呟いた。


「始まったな」


「何が?」


「三百年前と同じだ」


セイルが仮面を被り直す。


「教会と境界を巡る戦いが、再び始まる」


その瞬間。


地下のさらに奥から――


ゴォォォン!


巨大な音が響いた。


レオは黒い扉へ振り返る。


扉の隙間から、黒い光が漏れ始めていた。


――第67話・完――

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