第61話「聖王教会本部襲撃」
聖王教会本部。
地上へ戻ったレオたちの目に飛び込んできたのは、黒煙に包まれた中庭だった。
教会騎士たちが走り回っている。
「敵は正門だけじゃない!」
「東側にも現れたぞ!」
「負傷者を治療室へ!」
怒号が飛び交う。
ローディンが剣を抜いた。
「エレナ様、ここからは俺たちが前に出ます!」
「お願いします」
レオも前へ進む。
「俺も戦う」
ローディンが一瞬、レオを見る。
「……頼む」
以前とは違い、その目に迷いはなかった。
その直後。
正門が吹き飛んだ。
ドォン!!
「来るぞ!」
黒いローブをまとった者たちが一斉に侵入してくる。
胸元には、黒い紋章。
「迎え撃て!」
教会騎士たちが突撃する。
剣と魔法がぶつかり合い、中庭が戦場へ変わった。
レオは周囲を見回す。
「数が多い……」
『でも、妙だな』
ガイアが呟く。
『あいつら、ここを制圧する気がない』
「……俺もそう思う」
黒い紋章の者たちは、騎士たちと戦いながらも、建物の奥へ向かおうとしている。
「目的は別にある」
レオは走り出した。
「ミナ、カイ!」
「分かってる!」
三人が別々の敵を引き受ける。
カイが一人の男へ斬りかかる。
「ここから先は通さねえ!」
男が魔力を放つ。
カイは横へ飛び、そのまま距離を詰める。
「くらえ!」
剣が男の杖を弾き飛ばした。
「カイ、右!」
ミナの声。
別の敵が背後から迫っていた。
「危ねえ!」
カイが振り返る。
ミナの魔法が敵の足元を凍らせた。
「助かった!」
「前だけ見てないで!」
「分かった!」
一方、レオの前には三人の敵が立ちはだかる。
「ネクロマンサー……」
「ここを通すわけにはいかない」
レオが手を広げる。
「《死者の鎖》!」
地面から鎖が伸び、三人の身体を拘束する。
「ぐっ!」
「今だ!」
ローディンが駆け抜け、三人を一気に倒した。
「助かった」
「礼は後だ!」
ローディンが叫ぶ。
「敵が奥へ向かっている!」
レオは教会本部の奥を見る。
「地下聖域か?」
「いや」
エレナが首を横に振った。
「地下ではありません」
「じゃあ、どこへ?」
「礼拝堂の奥にある、古い記録保管庫です」
レオの表情が変わる。
「三百年前の記録……」
「おそらく、狙いはそれです」
レオたちは急いで走る。
廊下へ入った瞬間――
ドンッ!
奥の扉が破壊された。
「遅かった……!」
黒いローブの男が記録保管庫へ入っていく。
レオたちも続く。
大量の古文書が並ぶ部屋。
その中央で、男が一冊の本を手にしていた。
「それを返せ!」
ローディンが剣を向ける。
「これだけあれば十分だ」
男が本を開く。
しかし――
「……?」
男の表情が変わった。
「違う」
「何が?」
「記録が抜き取られている」
エレナが息を呑む。
「そんな……」
男がレオを見る。
「お前たちは、すでに読んだのか?」
レオは答えない。
男が本を閉じる。
「ならば、ここに用はない」
黒い魔力が広がる。
「待て!」
ローディンが斬りかかる。
しかし男は煙のように姿を消した。
残されたのは、床に落ちた一枚の紙。
エレナが拾い上げる。
「……これは」
レオが覗き込む。
そこには短い文章が書かれていた。
『死界への門を閉じる鍵は、教会には存在しない』
レオの目が険しくなる。
「じゃあ、どこにある?」
紙の裏側に、もう一文があった。
『鍵は、死者を率いる者の中に宿る』
「……俺?」
誰も答えられなかった。
その瞬間。
教会全体に鐘の音が鳴り響く。
エレナが顔を上げる。
「……また地下です」
レオはすぐに走り出した。
「黒い扉か!」
地下聖域へ続く階段。
その先から――
黒い魔力が噴き上がっていた。
『レオ!』
ガイアが叫ぶ。
『急げ!』
レオは階段を駆け下りる。
そして地下聖域へ辿り着いた瞬間――
黒い扉の前に、一人の男が立っていた。
胸元には黒い紋章。
その手には――
三百年前の記録から持ち出された、古びた黒い石の欠片。
「……これで準備は整った」
男が笑う。
「死界への門を、再び開く」
レオは拳を握った。
「絶対にさせない」
黒い扉が、大きく震え始めた。
――第61話・完――




