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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第59話「崩れ始める封印」

 地下聖域へ戻ったレオたちは、目の前の光景に息を呑んだ。


 黒い扉。


 その表面に刻まれていた無数の封印が、次々と砕けている。


「これは……」


 エレナの顔から血の気が引く。


「封印が、もう持ちません」


 ローディンが剣を抜く。


「ならば、俺たちも封印を手伝います!」


「無理です」


「なぜ!」


「この封印は聖なる力だけでは維持できません」


 エレナが扉を見る。


「死者の力と、生者の力。その両方が必要なんです」


 レオが目を細めた。


「……だからネクロマンサーが必要だったのか」


 ヴァルドが頷く。


「三百年前もそうだった」


 扉が大きく揺れる。


 ドンッ!!


 黒い亀裂が広がった。


「レオ!」


 ガイアの声が響く。


『死者たちが集まってきてる!』


 レオの周囲に、地下聖域に眠っていた魂たちが集まり始める。


 敵意はない。


 ただ、扉を見つめている。


「力を貸してくれるか?」


 レオが問いかける。


 無数の魂が淡く光った。


「……ありがとう」


 レオが両手を広げる。


「《死者の鎖》!」


 無数の鎖が扉へ伸びていく。


 黒い亀裂を絡め取り、開こうとする扉を押し戻す。


「すごい……」


 ミナが呟く。


「これなら……」


 しかし。


 パキッ。


 一本の鎖が砕けた。


 続いて二本。


 三本。


「くっ……!」


 レオの額に汗が浮かぶ。


「力が足りない……!」


 その時。


 地下聖域の入口から拍手が聞こえた。


「素晴らしい」


 全員が振り返る。


 そこには黒いローブの男たちが立っていた。


「また来たか!」


 ローディンが前へ出る。


 先頭に立っていたのは、第57話で現れた男だった。


「その力だ」


 男はレオを見る。


「やはり、お前なら門を抑えられる」


「だったら何で邪魔する?」


「邪魔をしているわけではない」


 男がゆっくり手を広げる。


「確認しているのだ」


「何を?」


「お前が、本当に三百年前のヴァルドと同じ力を持っているのかを」


 ヴァルドが前へ出る。


「やめろ」


 男が目を見開いた。


「……ヴァルド」


「まだ終わっていない」


「三百年も眠っていた者が、何を語る?」


「三百年眠っていたからこそ分かる」


 ヴァルドが黒い扉を睨む。


「この門を開けば、誰も望んだ未来には辿り着けない」


「それは、お前が決めることではない」


 男が魔力を放つ。


 黒い魔力が一直線にレオへ向かう。


「させるか!」


 ローディンが割り込む。


 剣で魔力を受け止める。


「ぐっ……!」


 カイも駆け出す。


「ローディンを援護する!」


 ミナが魔法を放つ。


「《光弾》!」


 光が黒いローブの男たちを押し返す。


「今だ、レオ!」


 レオは扉へ向き直る。


「分かった!」


 死者たちへ意識を集中する。


「みんな……もう一度だけ、力を貸してくれ!」


 魂たちが一斉に輝く。


 《死者の鎖》がさらに増え、黒い扉を覆っていく。


 ギギギギ……。


 扉が閉まり始める。


「なぜだ……!」


 黒い紋章の男が叫ぶ。


「なぜ死者がお前に従う!」


 レオは答える。


「従ってるんじゃない」


 鎖を握り締める。


「俺たちは……一緒に戦ってるんだ!」


 その瞬間。


 扉の亀裂が急速に閉じていく。


 黒い紋章の男たちが後退する。


「撤退する!」


「逃がすか!」


 カイが追おうとする。


「待て!」


 レオが止める。


「今は扉を優先する!」


 最後の亀裂が閉じた。


 地下聖域に静寂が戻る。


 レオはその場に膝をついた。


「……終わった」


 だが、ヴァルドは険しい表情をしていた。


「いや」


「え?」


 ヴァルドが黒い扉を指差す。


「完全には封じられていない」


 扉を見る。


 確かに、中央に小さな黒い亀裂が残っている。


「これくらいなら……」


「違う」


 ヴァルドが首を横に振る。


「三百年前には、こんな亀裂は残らなかった」


 レオの表情が変わる。


「じゃあ……今の俺の力でも足りないってことか」


「ああ」


 その時。


 黒い亀裂の向こうから、かすかな声が聞こえた。


『……あと少し……』


 レオが顔を上げる。


「今の声……」


 ガイアが低く呟く。


『まだ終わってないぞ、レオ』


 レオは黒い扉を睨みつける。


 その亀裂は――


 ほんの少しずつ、再び広がり始めていた。


――第59話・完――

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