↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
PR
58/173

第58話「三百年前の教会記録」

 地下聖域を離れ、レオたちはさらに奥へ進んでいた。


 エレナが先頭を歩き、ローディンが後ろを警戒している。


「この先に記録があるのか?」


「はい」


 エレナが古い扉の前で立ち止まった。


「ここは教会上層部でも、一部の者しか入れない場所です」


「さっきから秘密ばっかりだな」


 カイがため息をつく。


「教会ってのは、こんなに隠し事が多いのか?」


「……否定できません」


 エレナが鍵を差し込む。


 扉が開く。


 中には大量の古文書が並んでいた。


 その中央には、一冊だけ分厚い黒革の本が置かれている。


「これが……」


「三百年前の記録です」


 エレナが本を開く。


 古い文字が並んでいた。


 レオはページをめくっていく。


 最初に書かれていたのは、死界についての研究記録だった。


「教会とネクロマンサーが共同で研究していた……」


「はい」


 エレナは静かに頷いた。


「当時は、死者の魂を救うための研究だったそうです」


 さらにページをめくる。


 そこには黒い紋章の絵があった。


「これ……」


「当時の研究者たちが使っていた紋章です」


「今の黒い紋章を持つ連中と同じなのか?」


「正確には……同じ起源を持つ紋章です」


 レオはページを読み進める。


 そして、一つの記録で手が止まった。


『死界との接触実験を開始』


「これだ」


 ページには実験の詳細が記されている。


 黒い石。


 魔法陣。


 複数の術者。


 そして、ヴァルドの名前。


「やっぱりヴァルドが関わっていた」


 さらに読み進める。


『実験は成功』


『死界との境界に亀裂を確認』


『多数の魂を確認』


 ここまでは、レオが見た記憶と同じだった。


 だが、その次のページには――


『想定外の存在を確認』


 レオの手が止まる。


「想定外……」


 ガイアが低く呟く。


『あの存在のことだろうな』


 ページをめくる。


『死者ではない』


『生者でもない』


『死界の住人とも断定できず』


 さらに文字が続く。


『我々の呼びかけに応じた』


『そして、こう告げた』


 レオは息を呑む。


 その下に、一文だけ書かれていた。


『門を開ければ、世界は一つになる』


「……世界が一つに?」


 ミナが不安そうに呟く。


「生者と死者が混ざるってこと?」


「おそらく」


 エレナの顔が険しくなる。


 その先には、当時の司教による判断が記されていた。


『実験を即時中止』


『死界への接触を禁ずる』


『門を封印する』


 しかし、その下には別の記録が残されていた。


『一部の研究者、実験の継続を主張』


『黒き境界派と呼称』


 レオが顔を上げる。


「黒き境界派……」


「それが今の黒い紋章を持つ勢力の始まりです」


 エレナが答える。


 ローディンが眉をひそめる。


「つまり、奴らは三百年前から存在していたのか」


「はい」


 レオは黙って本を見つめる。


「じゃあ、ヴァルドはどうなった?」


 エレナは次のページを開いた。


 そこには大きく一文だけ書かれていた。


『ヴァルド、消息不明』


「……」


「その後の記録はありません」


 ヴァルド本人が横で静かに目を閉じる。


「私は……逃げたのではない」


 レオが振り返る。


「覚えているのか?」


「少しずつだ」


 ヴァルドは自分の手を見つめる。


「門を閉じるために、私は死者たちの力を借りた」


「それで……?」


「門は閉じた」


 ヴァルドは顔を上げた。


「だが、私自身もその場所から戻れなかった」


 レオが驚く。


「じゃあ、お前は三百年間……」


「眠っていたのだろう」


 その時。


 古文書の部屋全体が揺れた。


「地震!?」


 カイが身構える。


 レオはすぐに気づいた。


「違う」


 地下聖域の方向から――


 黒い魔力が流れ込んできている。


『レオ!』


 ガイアが叫ぶ。


『黒い扉だ!』


 エレナが青ざめる。


「封印が……また弱くなっている」


「どうして?」


「分かりません!」


 レオは古文書を閉じた。


 すると、本の最後のページが風もないのに開いた。


 そこには、今まで見つけられなかった一文が浮かび上がっていた。


『もし再び門が開こうとする時――』


 その下に続く文字。


『ネクロマンサーが現れる』


 レオの目が見開かれる。


「……俺のことか?」


 ヴァルドが静かに答えた。


「おそらくな」


 その瞬間。


 地下聖域から轟音が響いた。


 ドンッ!!


 レオたちは一斉に顔を上げる。


「行くぞ!」


 レオが走り出す。


 黒い扉の封印が、再び崩れ始めていた。


 そしてその扉の向こうから――


 あの声が響く。


『ネクロマンサー……』


 レオは立ち止まらない。


 自分がなぜこの力を持ったのか。


 死界とは何なのか。


 そして黒い紋章を持つ者たちは何を求めているのか。


 その答えへ向かって、レオは地下聖域へ走った。


――第58話・完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。