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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第4章「聖王教会編」
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第57話「黒い紋章の目的」

 地下聖域。


 黒いローブの集団が、ゆっくりとレオたちを取り囲んでいた。


 ローディンが剣を構える。


「ここは聖王教会の施設だ。貴様らを逃がすつもりはない」


「聖王教会……か」


 先頭の男が周囲を見回す。


「三百年前と何も変わっていない」


「何だと?」


「自分たちが何を封じているのかすら理解していない」


 エレナが一歩前へ出る。


「あなたたちは、何者ですか?」


「我々は黒き境界を守る者」


 男の胸元に刻まれた黒い紋章が淡く輝く。


「そして、死界へ至る道を探す者だ」


 レオの目が細くなる。


「死界へ行って何をする?」


「答えは簡単だ」


 男の視線がレオへ向く。


「境界を越える」


「……」


「生者と死者を隔てる境界を」


 ガイアが低い声を出す。


『やっぱりこいつら、死界そのものを狙ってる』


「でも、どうして俺の力が必要なんだ?」


 男は静かに答えた。


「三百年前、ヴァルドは死者の力を借りて封印を閉じた」


 ヴァルドが目を伏せる。


「その結果、死界への門は閉ざされた」


「だったら、黒い石を使えばいいだろ」


「無理だ」


 男は首を横に振った。


「黒い石は、すでに壊れている」


「じゃあ……」


「必要なのは、門に反応できる者だ」


 視線がレオへ向く。


「お前だ」


 レオは拳を握った。


「俺を使って、死界への門を開くつもりか」


「そうだ」


 カイが立ち上がる。


「ふざけんな!」


 剣を抜き、黒い紋章の男へ突っ込む。


「カイ!」


 男が手をかざした。


 黒い魔力が壁のように広がる。


 ガンッ!


 カイの剣が弾かれた。


「くっ……!」


 ミナが杖を構える。


「カイから離れて!」


 魔力の弾丸が飛ぶ。


 男の仲間が前へ出て、それを防いだ。


「ローディン!」


「分かっている!」


 ローディンが一気に距離を詰める。


 剣と黒い魔力がぶつかり合う。


 レオも手を伸ばした。


「《死者の鎖》!」


 黒い鎖が床から飛び出す。


 だが――


「同じ力か」


 男が鎖を見つめる。


「……違う」


 レオは気づいた。


「俺の鎖を知っているのか?」


「三百年前にも、同じ力を使った者がいた」


「ヴァルド?」


「そうだ」


 男は鎖を掴む。


「だが、お前の力はまだ未完成だ」


 バキッ!


 鎖が砕ける。


 レオは後ろへ飛び退いた。


『レオ! 力で押し切るな!』


「分かってる!」


 レオは目を閉じる。


 周囲には、地下聖域に残された無数の死者の気配。


 しかし――


 以前とは違う。


 無理に呼び出す必要はない。


「……力を貸してくれ」


 静かに呟く。


 すると、足元から淡い光が浮かび上がった。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 無数の魂がレオの周囲へ集まってくる。


「なに……?」


 黒い紋章の男が初めて動揺した。


「死者が自ら集まっている……?」


「俺はお前たちみたいに、死者を利用しない」


 レオが目を開く。


「力を貸してくれるなら、借りるだけだ」


 魂たちが一斉に輝く。


「《死者の鎖・連結》!」


 無数の鎖が広がり、黒い紋章の者たちを次々と拘束する。


「ぐっ!」


「動けない……!」


 ローディンが一気に踏み込む。


「今だ!」


 剣が黒い魔力を切り裂いた。


 黒い紋章の者たちが後退する。


「撤退する!」


「待て!」


 レオが追おうとした瞬間――


 ヴァルドが叫んだ。


「追うな!」


 レオが振り返る。


「なぜ?」


「奴らの目的は、戦うことではない」


 ヴァルドは黒い扉を見る。


「レオの力を確認したんだ」


 レオの表情が険しくなる。


「つまり……」


「奴らは次に来る」


 黒い紋章の男が、扉の前で立ち止まった。


「ネクロマンサー」


 レオを見る。


「次に会う時、お前は選ぶことになる」


「何を?」


「死者を救うか」


 一瞬、男の目が赤く光る。


「それとも、生者を救うか」


 男たちは黒い霧に包まれ、姿を消した。


 地下聖域に静寂が戻る。


「……何だったんだ、今の」


 カイが呟く。


 レオは答えない。


 黒い扉を見つめていた。


「エレナ」


「はい」


「この扉を封印したのは、教会なんだよな?」


「……そうです」


「だったら、教会は知ってるはずだ」


 レオは振り返る。


「三百年前に何があったのか」


 エレナは黙っていた。


 やがて、ゆっくりと口を開く。


「……はい」


「じゃあ、教えてくれ」


 エレナの表情が曇る。


「その前に……あなたに見せなければならないものがあります」


「何?」


「教会の最深部に残された、三百年前の記録です」


 レオは頷いた。


「案内してくれ」


 その時、地下聖域の奥から――


 再び、黒い扉を叩く音が響いた。


 コン。


 コン。


 まるで、誰かが内側から出ようとしているかのように。


――第57話・完――

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