第52話「聖王教会本部へ」
北の街を出てから、三日。
レオたちは聖王教会本部へ向かう街道を歩いていた。
「まだ着かないのか?」
カイが遠くを見ながら呟く。
「あと半日くらいだと思います」
ミナが地図を確認する。
レオは黙って歩いていた。
昨夜、ゼルクから届いた言葉が頭から離れない。
――教会を信用するな。
『考えすぎるな』
ガイアが声をかける。
「でも、気になる」
『警戒することと、疑うことは違う』
「……そうだね」
その時。
後方から馬の足音が聞こえた。
カイが振り返る。
「誰か来るぞ」
数人の騎士がこちらへ向かってくる。
先頭の騎士が馬を止めた。
「レオだな?」
「そうだけど」
「私は聖王教会所属の騎士、ローディンだ」
ローディンは馬から降りる。
「本部まで同行する」
カイが眉をひそめる。
「護衛か?」
「監視だ」
はっきりと言い切った。
「監視?」
「ああ」
ローディンはレオを見る。
「教会は、お前が黒い紋章の勢力と接触している可能性を警戒している」
レオの表情が変わる。
「ゼルクのことも?」
ローディンは一瞬黙った。
「……名前まで知っているのか」
「知ってる」
「なら話は早い」
ローディンは声を落とす。
「ゼルクは教会が長年追っている人物の一人だ」
カイが尋ねる。
「何者なんだ?」
「詳しいことは本部で聞け」
ローディンはそれ以上答えなかった。
レオは歩き始める。
「分かった。一緒に行く」
しばらく進むと、道の先に巨大な城壁が見えてきた。
その中央にそびえ立つ白い建物。
「……あれが?」
ミナが息を呑む。
「ああ」
ローディンが答える。
「聖王教会本部だ」
巨大な門をくぐる。
中には多くの聖職者や騎士が行き交っている。
しかし、レオたちを見ると、視線を向ける者が多い。
「みんなレオを見てるな」
カイが小声で言う。
「ネクロマンサーだからでしょうか」
ミナも周囲を見回す。
レオは気にせず歩く。
やがて、大きな建物の前で止まった。
「ここから先は、司祭の許可が必要だ」
ローディンが扉を開ける。
中には、一人の女性が立っていた。
「お待ちしていました」
「あなたは?」
「聖王教会の司祭、エレナです」
エレナはレオを見つめる。
「あなたがレオですね」
「はい」
「地下礼拝堂での一件について、いくつか質問があります」
レオは頷く。
「分かりました」
エレナは静かに続けた。
「ですが、その前に一つだけ」
「何ですか?」
「あなたは、あの黒い石に触れたそうですね」
レオの目が変わる。
「……知ってるんですか?」
「ええ」
エレナは表情を曇らせる。
「あの石については、教会でも限られた者しか知りません」
「何なんです?」
エレナは答えなかった。
「それを含めて、これから話します」
その瞬間。
教会本部の奥から、鐘の音が響いた。
ゴーン……。
エレナが振り返る。
「……この鐘は」
ローディンの顔が険しくなる。
「何かあったのか?」
エレナは窓の外を見る。
「結界が破られました」
レオたちの表情が変わる。
「誰に?」
エレナは静かに答えた。
「黒い紋章を持つ者に」
――第52話・完――




