第5話「母の告白」
翌朝。
レオはほとんど眠れなかった。
昨夜、家の外に誰かがいた。
そして母親は、自分の力について何かを知っている。
「……聞かなきゃ」
朝食を終えると、レオは母親の前に座った。
「母さん」
「何?」
「昨日の続き、話してほしい」
母親の手が止まる。
「俺の父さんのことも」
しばらく沈黙が続いた。
やがて母親は、小さく息を吐いた。
「……あなたのお父さんは、普通の人ではなかったの」
「ネクロマンサーなの?」
「違うわ。少なくとも、ネクロマンサーではない」
レオは少し安心した。
しかし、母親は続けた。
「あなたのお父さんは、昔……ネクロマンサーを探していた人だった」
「探してた?」
「ネクロマンサーが本当に悪い存在なのか、それを確かめるために」
レオは黙って聞いていた。
「でも、その途中で……お父さんは姿を消した」
「死んだの?」
「……分からない」
母親は視線を落とす。
「私も何年も探した。でも見つからなかった。そして、その頃にあなたが生まれたの」
「じゃあ、俺の力は父さんから……?」
「分からないわ」
母親は首を横に振った。
「でも、一つだけ確かなことがある」
「何?」
「あなたが生まれた時、あなたの右手には今と同じ黒い紋章があった」
レオは目を見開く。
「……生まれた時から?」
「ええ。でも私は、その紋章を隠してあなたを育てた」
「どうして?」
「ネクロマンサーは300年前に滅びたとされている。でも、もし今もその力を持つ者がいると知られたら……教会は黙っていない」
「教会……」
その言葉を聞いた瞬間、昨夜の男を思い出す。
「じゃあ、昨日家の外にいた奴は……」
母親の表情が変わった。
「見たの?」
「いや。でも誰かいた」
母親は立ち上がり、窓の外を確認する。
「……もう時間がないのかもしれない」
「母さん?」
「レオ。もし何かあったら、森の奥にある古い小屋へ行きなさい」
「何のために?」
「そこで、あなたのお父さんが残したものを探して」
「父さんが?」
母親は小さな鍵を取り出した。
「これを持っていって」
レオが鍵を受け取る。
「一体、何があるんだ?」
「それは……あなた自身の目で確かめて」
その時――
ドンッ!
突然、玄関の扉が叩かれた。
二人の会話が止まる。
「誰?」
返事はない。
もう一度。
ドンッ!
今度は、扉が大きく揺れた。
母親がレオの腕を掴む。
「レオ。裏口から出て」
「でも母さんは?」
「いいから!」
「嫌だ!」
レオが叫んだ瞬間――
玄関の扉が、勢いよく開いた。
外に立っていたのは、黒い外套を身につけた男だった。
「……ネクロマンサーの力が目覚めたのは、お前か」
レオは息を呑む。
男の視線が、レオの右手へ向く。
そして母親が、震える声で呟いた。
「……もう見つかったのね」
――第5話・完――




