第4話「隠された力」
村へ戻る道。
レオの少し後ろを、ガイアが歩いている。
「なあ、ガイア」
『何だ、レオ』
「村に入ったら、その姿は隠せる?」
『……試してみよう』
ガイアの身体から黒い霧が立ち上る。
次の瞬間、その姿が薄くなり、夜の闇に溶け込んだ。
「すごいな……」
『長くは保たない』
「じゃあ、村の外で待っててくれ」
『分かった』
レオは一人で家へ戻った。
「ただいま」
「おかえり。遅かったわね」
母親が振り返る。
「ちょっと森まで行ってた」
「……森?」
母親の視線がレオの右手へ向く。
「まさか……また死者と会ったの?」
レオは黙った。
「……うん」
「どんな死者?」
「名前はガイア。墓地にいたスケルトンだ」
母親の表情が変わる。
「ガイア……?」
「知ってるの?」
「いいえ。でも、その名前を知っているということは……」
母親はしばらく黙り込んだ。
「レオ。あなた、自分の力について何も知らないのよね」
「うん。だから教えてほしい」
母親は椅子に座り、静かに口を開いた。
「あなたが持っているのは、ただの魔法じゃない」
「……」
「死者の魂と契約する力。かつて世界に存在した、ネクロマンサーの力よ」
レオは息を呑む。
「ネクロマンサー……」
「300年前、その力を持つ者たちは恐れられた。そして、人々によって討たれたの」
「じゃあ、もうネクロマンサーはいないんじゃ……」
「そう。少なくとも、そう思われていた」
母親はレオの右手を見る。
「でも、あなたにその紋章が現れた」
「どうして俺に?」
母親はすぐには答えなかった。
「……それは、まだ話せない」
「なんでだよ!」
レオは思わず声を荒らげる。
「俺のことなんだろ? どうして何も教えてくれないんだよ!」
「レオ……」
「今日だって、死者の声が聞こえた。スケルトンまで俺に跪いたんだ。なのに母さんは何か知ってるのに黙ってる!」
母親は俯いた。
「あなたを守りたかったの」
「……え?」
「この力を知らなければ、普通の人生を送れると思っていた。でも……もう隠し続けることはできないのかもしれない」
その時だった。
家の外から物音が聞こえた。
「……今の何?」
母親の顔が強張る。
レオが窓へ近づく。
「誰かいるのか?」
外を覗く。
誰もいない。
だが、地面には見慣れない足跡が残っていた。
「母さん……」
「レオ。明日から、森には近づかないで」
「どうして?」
母親は答えなかった。
ただ、窓の外を見つめていた。
その夜。
村の外れでは、誰かが静かに村を見つめていた。
黒い外套を身にまとった男。
その視線は、レオの家へ向けられている。
「……見つけた」
男はそう呟き、闇の中へ消えていった。
――第4話・完――




