第46話「黒い紋章の影」
夜。
北の街は静まり返っていた。
レオたちは宿の部屋で、今日の出来事を整理していた。
「教会も黒い紋章の連中を追ってるんだな」
カイが腕を組む。
「ああ。ただ、教会が俺を警戒しているのも変わらない」
ミナが心配そうにレオを見る。
「レオさんは、どうするんですか?」
「今は黒い紋章について調べたい」
ガイアが窓の外を見る。
『……誰かいる』
レオも立ち上がった。
「外?」
窓を開ける。
冷たい夜風が部屋へ入ってくる。
屋根の上に、一人の男が立っていた。
黒いローブ。
「……ゼルク」
ゼルクがこちらを見る。
「気づいたか」
レオはすぐに外へ出る。
「何の用だ?」
ゼルクは屋根から飛び降り、レオの前に着地した。
「お前に伝えておくことがある」
「何を?」
「この街から離れろ」
カイが眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
「近いうちに、この街で大きな戦いが起きる」
ミナが尋ねる。
「黒い紋章の人たちが何かするんですか?」
「……そうだ」
ゼルクは頷く。
「目的は何?」
レオが聞く。
ゼルクは少し黙った。
「この街の地下にあるものだ」
「地下?」
「お前たちが見つけた研究室。そのさらに下に、古い施設がある」
レオが驚く。
「まだ下があるのか?」
「ある」
ゼルクは続ける。
「そこには、黒い紋章の連中が欲しがっているものがある」
「何なんだ?」
「それは俺にも分からない」
カイが疑う。
「本当に?」
「俺は全てを知っているわけじゃない」
ゼルクはレオを見る。
「だが、一つだけ分かっている」
「何?」
「それは、お前の力と関係している」
レオの表情が変わる。
「……俺の力と?」
「ああ」
ゼルクは背を向ける。
「だから忠告した」
「待て!」
レオが呼び止める。
「お前は、黒い紋章の仲間なんだろ?」
ゼルクが足を止める。
「……そうだ」
「だったら、どうして俺に教える?」
ゼルクは振り返った。
「俺にも、俺の目的がある」
「目的?」
「いずれ分かる」
ゼルクの姿が闇に溶けていく。
レオはその場に立ち尽くす。
カイが隣に来る。
「信用できるのか?」
「分からない」
レオは地下墓地の方向を見る。
「でも、あいつが嘘をついているとも思えない」
ミナが呟く。
「地下に、まだ何かある……」
ガイアが静かに答える。
『ならば調べるしかないな』
レオは頷いた。
「明日、もう一度地下墓地へ行こう」
その時――
街の遠くから鐘の音が響いた。
ゴーン……。
一度。
二度。
そして三度。
カイが窓の外を見る。
「……この時間に鐘?」
レオは嫌な予感を覚えた。
街の中央にある聖王教会。
その屋根の上に――
黒い影が立っていた。
――第46話・完――




