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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第3章「死者を率いる者」
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第36話「死者の軍勢」

北へ進んだレオたちは、森を抜けようとしていた。


「この辺り、妙に静かだな」


カイが周囲を見回す。


『確かに。魔物の気配すらない』


ガイアが足を止めた。


ミナも不安そうに辺りを見る。


「……静かすぎます」


レオが立ち止まった。


「みんな、止まって」


「どうした?」


「聞こえる」


遠くから、地面を踏み鳴らす音。


一つ。


二つ。


やがて――


無数の魔物が木々の間から姿を現した。


「多すぎる……!」


カイが剣を抜く。


魔物の群れが、こちらへ向かってくる。


その額には、すべて黒い紋章が刻まれていた。


「また操られてる!」


ミナが杖を構える。


「どうする、レオ?」


レオは群れを見る。


「……逃げても追ってくる」


ガイアが拳を握る。


『ならば戦うしかない』


「うん」


レオが前へ出る。


「カイ、ミナ。左右を頼む!」


「任せろ!」


「はい!」


ガイアと守護者が正面へ。


魔物の群れが一斉に襲いかかる。


「《風刃》!」


ミナの風が魔物を吹き飛ばす。


「はあっ!」


カイが剣を振る。


ガイアも次々と魔物を殴り倒す。


だが、数が多すぎる。


「くそっ……!」


カイが息を切らす。


「倒しても、まだ来る!」


倒れた魔物が立ち上がる。


レオは魔物の額を見た。


「やっぱり……黒い紋章がある限り、何度でも動く」


『ならば、紋章を破壊するしかない』


「でも、この数じゃ間に合わない!」


その時。


レオの脳裏に、昨日の力が浮かんだ。


――死者を率いる。


「……そうか」


レオは周囲を見回す。


戦いの中で倒れた魔物たち。


「俺にも……できるかもしれない」


「レオ?」


レオは両手を地面へ向ける。


「来い……」


黒い魔力が地面へ広がる。


「俺の声に応えろ!」


倒れていた魔物の身体が動き始める。


カイが目を見開く。


「また……!」


一体。


二体。


三体。


次々と立ち上がっていく。


だが、今度は黒い紋章を持つ魔物ではない。


レオの魔力によって動く、死者たち。


「……これが」


レオは息を切らしながら呟く。


「俺の力……」


蘇った魔物たちがレオの前に並ぶ。


レオは敵の群れを見る。


「みんな……俺と一緒に戦ってくれ」


死者たちが一斉に動き出す。


「行け!」


二つの魔物の群れがぶつかる。


ガアアアッ!


レオの死者たちが敵の動きを止める。


「今だ!」


カイが走る。


「はあああっ!」


ミナも魔法を放つ。


「《風刃・連》!」


無数の風の刃が飛ぶ。


ガイアと守護者も敵陣へ突っ込んだ。


次々と黒い紋章が砕かれていく。


やがて――


最後の魔物が倒れた。


静寂。


レオは膝をついた。


「……はぁ……」


カイが駆け寄る。


「大丈夫か?」


「うん……でも、かなり疲れた」


ガイアがレオを見る。


『これほどの数を一度に操ったのだ。無理もない』


レオは自分の手を見る。


「死者を率いる……」


さっきまで戦っていた死者たちは、すでに動かなくなっている。


「この力を使えば、もっと多くの人を守れるかもしれない」


ミナが静かに言う。


「でも……使い方を間違えたら、怖い力にもなります」


レオは頷いた。


「分かってる」


その時。


森の奥から、拍手が聞こえた。


パチ……パチ……パチ……。


「……誰だ!」


カイが剣を構える。


木々の間から、一人の男が姿を現した。


黒いローブの男。


「素晴らしい」


男は笑っている。


「まさか、これほど早く力を使いこなすとはな」


レオが睨む。


「お前……!」


男は立ち止まる。


「今度は、直接話してやろう」


そして胸元の紋章を見せた。


「俺の名は――」


男は不敵に笑った。


「ゼルク」


レオたちは、初めて敵の名を知った。


――第36話・完――

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