第37話「黒紋のゼルク」
ゼルクは、レオたちの前に立っていた。
「ゼルク……」
レオが警戒する。
カイも剣を構えた。
「こいつが、魔物を操っていた奴か」
「そうだ」
ゼルクは淡々と答える。
「俺があの魔物たちを動かしていた」
ミナが一歩前へ出る。
「どうして、こんなことをするんですか?」
ゼルクはミナを見る。
「理由を知りたいか?」
「はい」
「ならば、お前たちがもっと強くなってからだ」
カイが苛立つ。
「ふざけるな!」
剣を抜き、ゼルクへ斬りかかる。
ガキンッ!
ゼルクは黒い魔力で剣を受け止めた。
「速いな」
カイが力を込める。
「だったら!」
横からレオが黒い鎖を放つ。
「《死縛》!」
鎖がゼルクへ伸びる。
しかし――
パキンッ。
黒い魔力が弾け、鎖が砕け散った。
「……!」
レオが驚く。
ゼルクはカイを押し返す。
「まだその程度か」
カイが着地する。
「くそっ……!」
ガイアが前へ出る。
『ならば、私が相手をする!』
拳を振り抜く。
ゼルクは身体を横へずらし、攻撃をかわした。
そのままガイアの腕を掴む。
「死者か」
『……!』
ゼルクの黒い魔力がガイアへ流れ込む。
「ガイア!」
レオが叫ぶ。
ガイアがゼルクを振り払い、距離を取った。
『問題ない!』
レオはゼルクを睨む。
「お前……死者を知ってるのか?」
「当然だ」
ゼルクは笑う。
「俺たちは長い間、死者と生者の境界を研究してきた」
「俺たち?」
「そうだ」
ゼルクが胸元の黒い紋章に触れる。
「お前が追っている連中のことだ」
レオの表情が変わる。
「やっぱり……組織なのか」
「そうだ」
ミナが息を呑む。
「私の村を襲ったのも……」
「それについては、俺からは答えられない」
「どうして!」
ミナが声を上げる。
ゼルクは静かに答える。
「俺には俺の役割がある」
そしてレオを見る。
「お前を殺すことも、今は俺の役割じゃない」
「じゃあ、何のために来た?」
「確かめるためだ」
「何を?」
ゼルクの目が細くなる。
「お前が、本当に『死者を率いる者』なのかをな」
レオは拳を握る。
「その言葉……どういう意味なんだ?」
「いずれ分かる」
ゼルクは背を向ける。
「お前が北へ進めば、もっと多くの死者を見ることになる」
「待て!」
レオが呼び止める。
ゼルクは振り返らない。
「そこで、お前自身の答えを見つけろ」
黒い霧がゼルクの身体を包む。
「次に会う時は――」
霧の向こうから声が響く。
「敵として戦うかもしれないな」
ゼルクの姿が消えた。
静寂が戻る。
カイが剣を収める。
「……強かったな」
『ああ。今の我々では、まだ勝てない』
ミナがレオを見る。
「レオ……」
レオは北の道を見つめていた。
「俺は、もっと強くなる」
そして拳を握る。
「死者を率いる者って何なのか――絶対に確かめる」
五人は再び北へ向かって歩き始めた。
――第37話・完――




