第32話「出発の日」
翌朝。
レオたちは宿の前に集まっていた。
「忘れ物はないか?」
カイが荷物を確認する。
「大丈夫」
ミナも頷いた。
「私も準備できました」
ガイアは周囲を見回している。
『昨日の影は、まだ近くにいるかもしれない。気をつけて進もう』
「うん」
レオが頷いた、その時だった。
「レオさん!」
冒険者ギルドの受付の女性が走ってきた。
「これを……」
手には一通の封筒が握られている。
「俺に?」
「はい。今朝、ギルドの入口に置かれていました」
レオは封筒を受け取った。
表には――
『レオへ』
それだけが書かれている。
「誰からですか?」
「分かりません。置いた人物を見た人もいません」
カイが警戒する。
「開けるな。罠かもしれない」
レオも頷く。
「分かってる」
封筒を裏返す。
そこには、あの黒い紋章が刻まれていた。
「……!」
ミナの顔が青ざめる。
「この紋章……」
「やっぱり、あいつらだ」
レオは封筒を開いた。
中には一枚の紙。
そこには短い文章だけが書かれていた。
『死界を探すなら、北へ向かえ。』
その下には、さらに一文。
『だが、その道を進めば仲間を失う。』
「……仲間を失う?」
カイが紙を睨む。
「脅しってことか」
レオは紙を握りしめる。
「俺たちのことを知ってる……」
ガイアが静かに口を開く。
『そして、死界という言葉まで知っている』
レオは顔を上げる。
「だったら、なおさら行く」
「北へ?」
「ああ」
レオは迷わなかった。
「俺たちが探しているものが、そこにあるかもしれない」
ミナも頷く。
「私も行きます」
カイが剣を背負う。
「俺もだ」
ガイアが笑う。
『ならば、全員で行こう』
守護者も大剣を手に取った。
「……よし」
レオは北へ続く街道を見る。
「出発しよう」
四人は町を出た。
しばらく歩いたところで、レオが振り返る。
大きな街が遠ざかっていく。
「次は、どんな場所なんだろうな」
「さあな」
カイが笑う。
「でも、退屈はしなさそうだ」
ミナも小さく笑った。
「そうですね」
その時――
森の奥。
木の陰から、一人の男がレオたちを見ていた。
「北へ向かったか」
男は懐から黒い紋章のついた紙を取り出す。
「予定通りだ」
その背後から別の声が聞こえる。
「追いますか?」
「いや」
男は笑った。
「北には、あいつがいる」
「……あいつを?」
「ああ」
男はレオたちの姿を見つめる。
「ネクロマンサーがどれほどの力を持っているのか――」
黒いローブが風になびく。
「確かめてもらおう」
レオたちは、それを知らない。
北へ続く道の先で待つものが――
これまでとは比べものにならない敵だということを。
――第32話・完――




