第31話「迫る黒い影」
翌朝。
レオたちは宿の食堂に集まっていた。
「昨日は大変だったな」
カイがパンを頬張る。
「魔物が街の近くまで来るなんて……」
ミナが呟く。
『それだけ、あの紋章を持つ魔物が増えているということだろう』
ガイアが答える。
「やっぱり、偶然じゃないんだ」
レオが考え込む。
その時、宿の扉が開いた。
「レオさん!」
冒険者ギルドの受付の女性が駆け込んできた。
「どうしたんですか?」
「昨日の魔物について、調査していたんですが……」
女性は一枚の紙を差し出す。
「あなたたちについて、妙な情報が入っています」
「俺たち?」
レオが紙を見る。
そこには、昨日レオたちが倒した魔物の目撃情報と――
『黒い紋章を追うネクロマンサー一行』
という記述があった。
「……俺たちのことを知ってる?」
カイが眉をひそめる。
「はい。そして……」
受付の女性が声を落とす。
「あなたたちを探している者がいるそうです」
ミナの表情が変わった。
「まさか……」
「何か知ってるの?」
レオが尋ねる。
ミナは首を横に振る。
「まだ分かりません。でも……私の村を襲った人たちかもしれません」
レオは拳を握る。
「だったら、俺たちが先に見つけよう」
「レオ……」
受付の女性が慌てて口を挟む。
「待ってください。相手の情報がほとんどありません」
「分かっています」
レオは頷く。
「だからこそ、まずは情報を集めたい」
ガイアも頷いた。
『焦る必要はない。敵が何者なのか分からない以上、慎重に進むべきだ』
「そうだな」
カイが地図を広げる。
「この街には冒険者が多い。情報を集めるなら、まずここで聞き込みをするのがいい」
「じゃあ、手分けしよう」
レオたちは街へ出た。
カイは冒険者たちから魔物の情報を集める。
ミナは商人たちに話を聞く。
レオとガイアは、最近街の周辺で起きた事件を調べる。
しかし――
「何も分からないな」
夕方になり、宿へ戻る。
「俺たちを狙っている奴についても、何も掴めなかった」
カイが椅子に座る。
ミナも首を横に振った。
「私もです」
その時。
守護者が突然立ち上がった。
「どうした?」
レオが振り返る。
守護者は窓の外を指差している。
「外?」
レオが窓を見る。
誰もいない。
だが――
宿の向かいにある建物の屋根。
そこに、一瞬だけ黒い影が見えた。
「……!」
レオが窓を開ける。
「待て!」
影は屋根から屋根へ飛び移り、そのまま消えていった。
カイが剣を手に取る。
「追うか?」
レオは少し考えた。
「いや……」
『追えば罠の可能性もある』
「うん」
レオは窓を閉めた。
「でも、分かったことが一つある」
「何だ?」
レオは外を見つめる。
「俺たちは、確実に監視されてる」
ミナが不安そうに呟く。
「……敵は、もう近くにいる」
その夜。
街の外れ。
黒いローブを着た男が、仲間の前に立っていた。
「ネクロマンサーは、まだこの街にいる」
「どうしますか?」
男は笑う。
「焦る必要はない」
そして、胸元に刻まれた黒い紋章を見せる。
「奴らは必ず、次の場所へ向かう」
「そこで待ち伏せます」
「そうだ」
男は暗闇の中へ歩き出した。
「次の目的地で、奴らを迎え撃つ」
――第31話・完――




