第28話「新たな街へ」
町を出て数時間。
レオたちは街道を進んでいた。
「この道をまっすぐ行けば、夕方には着くはずだ」
カイが地図を確認する。
「思ったより遠いな」
レオが肩に掛けた荷物を持ち直す。
『旅とはそういうものだ』
ガイアが笑う。
「ガイアは疲れないからいいよな」
『死者だからな』
「またそれ言ってる」
カイが笑った。
その時だった。
「……助けて!」
森の中から声が聞こえた。
レオが足を止める。
「今の、女の子の声?」
『ああ。近い』
「行こう!」
レオたちは声のした方へ走った。
木々を抜けた先。
そこには、一人の少女が倒れていた。
そして、その前には巨大な魔物が立っている。
「グオオオッ!」
魔物の額には――
あの黒い紋章。
「また……!」
レオが構える。
少女が怯えた顔で振り返る。
「た、助けて……!」
「大丈夫! 俺たちが助ける!」
魔物が少女へ飛びかかる。
「させるか!」
カイが剣を抜き、魔物の前へ飛び込む。
ガキンッ!
爪を剣で受け止める。
「ぐっ……!」
「カイ!」
『私も行く!』
ガイアが魔物の横から拳を叩き込む。
魔物がよろめく。
「今だ!」
守護者が一気に踏み込み、大剣を振り下ろす。
ザンッ!
魔物の肩から血が飛び散った。
「効いてる!」
しかし、魔物の額の紋章が輝く。
「またあの力か!」
魔物の傷が黒い魔力に包まれる。
カイが後退する。
「こいつ、傷が塞がっていくぞ!」
レオは魔物を見つめる。
「だったら……紋章を狙う!」
右手を前へ伸ばす。
「《死縛》!」
黒い鎖が地面から伸び、魔物の四肢を拘束する。
「今だ、カイ!」
「任せろ!」
カイが走る。
魔物が鎖を引き千切ろうとする。
「逃がすか!」
ガイアが正面から拳を叩き込む。
魔物が怯んだ。
その隙にカイが跳ぶ。
「はあああっ!」
剣が額の紋章を斬り裂いた。
バキッ!
黒い光が弾ける。
「グオオオオッ!」
魔物の身体から力が抜け、その場に倒れた。
静寂が戻る。
「……終わった?」
カイが息を切らしながら尋ねる。
『ああ。もう動かない』
レオは魔物の額を見る。
紋章は完全に消えていた。
「やっぱり……この紋章が魔物を変えてる」
少女がゆっくり立ち上がった。
「ありがとうございます……」
「怪我はない?」
「はい……大丈夫です」
レオは少女を見る。
「君、一人でこんな森にいたの?」
少女は少し迷ってから答えた。
「街へ向かっていたんです。でも、途中で魔物に襲われて……」
「街って、この先の?」
「はい」
カイが剣を収める。
「なら、俺たちと一緒に行こう」
少女が驚く。
「いいんですか?」
「一人より安全だろ」
レオも頷く。
「一緒に行こう」
「……ありがとうございます」
少女は小さく笑った。
レオたちは再び街道を歩き始めた。
しかしレオは、少女の腰に下げられた小さな袋に気づいた。
そこから――
遺跡で見たものと同じ紋章が、一瞬だけ覗いていた。
「……え?」
レオが立ち止まる。
「どうしたの?」
少女が振り返る。
レオは袋を見る。
だが、もう紋章は見えなかった。
「いや……何でもない」
レオは歩き出す。
――第28話・完――




