第24話「名もなき守護者」
遺跡を出たレオたちは、町へ戻るため街道を歩いていた。
レオは何度も後ろを振り返る。
「……やっぱり気になる」
『何がだ?』
「こいつだよ」
レオは黒い鎧のスケルトンを見る。
「普通のスケルトンなら、俺が命令すれば動く。でもこいつは違う」
『ああ』
「自分で戦って、俺を守った」
黒い鎧のスケルトンは何も答えない。
「お前、本当に何者なんだ?」
返事はない。
レオは少し考える。
「名前もないんだよな」
ガイアが振り返る。
『遺跡に残されていた存在なら、生前の名があるのかもしれない』
「生前……」
レオはスケルトンを見る。
「お前は、人間だったのか?」
スケルトンの青白い炎が揺れた。
そして、初めて反応を見せる。
自分の胸元へ手を当てた。
「……?」
その瞬間、レオの頭の中に一瞬だけ光景が浮かんだ。
古い遺跡。
大勢の人間。
その中央に立つ、一人の騎士。
黒い鎧を身にまとい、大剣を握っている。
そして――
『ここは私が守る』
声が聞こえた。
レオは目を見開く。
「今の……何?」
『どうした?』
「見えたんだ。こいつの……過去みたいなものが」
黒い鎧のスケルトンがレオを見つめる。
レオはもう一度、その身体に触れる。
今度は何も見えない。
「……気のせいだったのかな」
その時、スケルトンが腰に下げていた古びた金具が落ちた。
カラン。
レオが拾い上げる。
「これは……」
金具には古い文字が刻まれていた。
ガイアが覗き込む。
『騎士の紋章のようだ』
「騎士……」
レオはスケルトンを見る。
「もしかして、お前は昔、この遺跡を守っていた騎士なのか?」
スケルトンはゆっくりと頷いた。
「……!」
レオは驚く。
「分かるのか?」
もう一度、スケルトンが頷く。
そして大剣を握り直した。
「そうか……」
レオは少し笑う。
「じゃあ、いつかお前の名前も思い出せるかもしれないな」
スケルトンは何も言わない。
だが、その青白い炎は先ほどよりも強く揺れていた。
ガイアが静かに口を開く。
『名前が分かるまで、どう呼ぶ?』
「うーん……」
レオは少し考える。
「守護者」
スケルトンを見る。
「今はそれでいいんじゃないかな」
ガイアが頷く。
『悪くない』
「な?」
三人は再び歩き始めた。
その時、レオはふと足を止める。
「……待って」
街道の先に、何かが落ちている。
近づいてみると、それは小さな黒い布だった。
レオが拾う。
「これ……」
布には、あの謎の紋章が刺繍されていた。
ガイアの雰囲気が変わる。
『また奴らか』
「この近くにいるってこと?」
レオは周囲を見渡す。
誰もいない。
だが――
木々の向こうから、一瞬だけ視線を感じた。
「……見られてる」
守護者が大剣を抜く。
レオも構える。
しかし、何も現れない。
しばらくして、気配が消えた。
「逃げた……?」
『いや』
ガイアが街道の先を見る。
『警告だったのかもしれない』
レオは黒い布を握りしめた。
「だったら、俺たちも覚悟しないとな」
町へ向かって歩き出す。
レオの隣にはガイア。
その後ろには、名もなき古代の守護者。
三人の旅は、少しずつ形を変え始めていた。
――第24話・完――




