第22話「遺跡の魔獣」
遺跡の奥から、低い唸り声が響いていた。
「……来る」
レオが身構える。
ガイアも拳を構え、黒い鎧のスケルトンは大剣を握った。
次の瞬間――
ドンッ!
壁を突き破り、巨大な魔獣が姿を現した。
「うわっ……!」
四本の脚。
鋭い爪。
そして額には、黒い紋章が浮かんでいる。
『あの紋章……』
ガイアが魔獣を睨む。
「森の魔物と同じだ」
レオは息を呑む。
「やっぱり、この遺跡も関係してる」
魔獣が咆哮する。
「グオオオオッ!」
「来る!」
魔獣が一気に飛びかかってきた。
ガイアが前へ出る。
『レオ、下がれ!』
ガキンッ!
爪と拳がぶつかる。
しかし、ガイアの身体が押し込まれていく。
「ガイア!」
レオは右手を掲げた。
「力を送る!」
黒い魔力がガイアへ流れ込む。
ガイアが踏ん張る。
『今だ!』
ガイアが魔獣を押し返す。
そこへ黒い鎧のスケルトンが走り込んだ。
大剣が振り下ろされる。
ザンッ!
魔獣の肩を斬り裂いた。
「効いてる!」
だが、魔獣は怯まない。
尻尾を振り回す。
「危ない!」
レオが黒い鎖を放つ。
鎖が魔獣の身体に絡みつく。
「止まれ!」
しかし、魔獣の力が強すぎる。
「くっ……!」
鎖が一本、また一本と切れていく。
「ガイア!」
『分かった!』
ガイアが魔獣へ突っ込む。
拳を何度も叩き込む。
魔獣の動きが一瞬止まった。
その隙に黒い鎧のスケルトンが大剣を構える。
「今だ!」
大剣が振り抜かれる。
魔獣の身体に深い傷が走った。
「グオオオッ!」
魔獣が大きく後退する。
レオは息を整える。
「まだ倒れてない……」
魔獣の額にある黒い紋章が輝き始める。
「何だ……?」
次の瞬間、魔獣の身体から黒い魔力が噴き出した。
『レオ!』
「分かってる!」
魔獣が突進する。
レオは逃げない。
「二人とも!」
ガイアと黒い鎧のスケルトンが左右から飛び出す。
魔獣の動きを挟み込む。
「今だ!」
ガイアが正面から拳を叩き込む。
同時に、黒い鎧のスケルトンが大剣を振り下ろした。
ドォン!
二つの攻撃が重なり、魔獣が地面へ倒れ込む。
静寂が戻った。
「……倒した?」
魔獣は動かない。
レオはゆっくり近づく。
「終わったみたいだ」
ガイアが魔獣を見る。
『あの黒い紋章は、森の魔物と同じだった』
「誰かが魔物を変えてる……」
レオは魔獣の額に残った紋章を見る。
すると、黒い光が小さく弾けた。
パキンッ。
紋章が消える。
その瞬間、遺跡の奥にあった石碑が光り始めた。
「まただ……」
石碑に新しい文字が浮かび上がる。
『門は、すでに動き始めている』
レオは言葉を失った。
「門が……動き始めてる?」
ガイアが石碑を見つめる。
『急ぐ必要があるかもしれない』
レオは頷いた。
「この遺跡で分かったことを、全部持ち帰ろう」
黒い鎧のスケルトンが静かにレオの後ろへ立つ。
レオは振り返った。
「……そういえば、お前の名前がないと呼びにくいな」
スケルトンは黙っている。
「名前……」
レオは少し考えた。
まだ何も思いつかない。
「それは、帰ってから考えよう」
ガイアが小さく頷く。
『それがいい』
三人は遺跡の出口へ向かって歩き始めた。
しかし――
遺跡のさらに深い場所。
誰もいない暗闇の中で、黒い紋章が一瞬だけ輝いていた。
――第22話・完――




