第2話「異変」
レオは墓地を後にし、急いで村へ戻っていた。
何度も後ろを振り返る。
「……あのスケルトン、ついてきてないよな?」
さっきまで自分の前に跪いていたスケルトン。
あれが何だったのか、レオには何一つ分からない。
ただ、右手に浮かんだ黒い紋章だけが、妙に気になっていた。
村へ戻ると、いつものように人々が畑仕事をしていた。
「レオ、おかえり!」
「ただいま」
「薪は集まった?」
「うん。これくらいあれば大丈夫だと思う」
何事もなかったように家へ向かう。
自分だけがおかしな世界に入り込んでしまったような感覚だった。
家に入ると、母親が振り返る。
「おかえり。随分早かったわね」
「うん。今日はすぐ集まったから」
レオは籠を置いた。
その時、母親の視線がレオの右手に止まった。
「……レオ」
「ん?」
「その手……どうしたの?」
レオは右手を見る。
黒い紋章が、まだ消えていない。
「これ?」
「どこで、それを?」
母親の声が明らかに変わった。
「森で……変な墓地を見つけてさ。そこで墓に触ったら、急に出てきたんだ」
「墓地……?」
母親の顔から血の気が引いていく。
「母さん?」
「その墓地で……何を見たの?」
「スケルトンが出てきた」
その言葉を聞いた瞬間、母親が立ち上がった。
「……やっぱり」
「何が?」
母親はしばらく黙っていた。
そして、震える声で言う。
「レオ。その力を……誰にも見せてはいけない」
「どうして?」
「いいから。村の人にも、絶対に話さないで」
「母さん、何を知ってるんだ?」
母親は答えない。
レオが問い詰めようとした、その時だった。
外から村人たちの声が聞こえてきた。
「大変だ!」
「森に誰か倒れてるぞ!」
レオと母親は顔を見合わせる。
「……行ってくる」
「待って、レオ!」
母親が止める。
しかし、レオはすでに外へ飛び出していた。
村の入口には、数人の村人が集まっている。
その中心には――
一人の男が倒れていた。
服はボロボロで、身体には傷がある。
「この人、森から来たのか?」
「分からない。突然倒れていたんだ」
レオが近づいた瞬間。
「……っ」
右手の黒い紋章が、わずかに光った。
そして――
聞こえた。
『……逃げろ』
レオの表情が凍る。
「……え?」
『あいつらが……来る』
男は意識を失ったまま、かすかに口を動かしていた。
「何から逃げろっていうんだ……?」
レオが森を見る。
木々の向こうには、何も見えない。
それでも――
レオには、何かが近づいているような気がした。
そして家の中では、母親が一人、震えながら呟いていた。
「……まさか、また始まるの……?」
――第2話・完――




