第19話「傷と決意」
夜が明けた。
街道で一夜を過ごしたレオたちは、再び隣町へ向かって歩き始めていた。
「腕、大丈夫か?」
ダリオが心配そうに尋ねる。
「大丈夫です。浅い傷だから」
「そうか……」
レオは包帯を巻いた腕を見る。
昨日の戦い。
相手は魔物ではなかった。
人間だった。
「……ガイア」
『何だ?』
「俺、昨日……人を傷つけた」
『ああ』
「怖かった」
レオは歩きながら俯く。
「魔物なら倒せる。でも、人間を相手にするのは……」
ガイアはしばらく黙っていた。
『レオ。力を持つことと、その力に支配されることは違う』
「……」
『お前は昨日、誰かを殺すために力を使ったのか?』
「違う。ダリオさんを守るためだった」
『ならば、それを忘れるな』
レオはゆっくり顔を上げた。
「……守るため」
『ああ』
レオは右手を見る。
黒い紋章は静かに消えていった。
「分かった」
その時、前方に町の門が見えてきた。
「着いたぞ」
ダリオが笑う。
「ここが隣町だ」
門をくぐると、人々が行き交っている。
レオは周囲を見回した。
「大きいな……」
「まずはギルドへ行こう。依頼の報告をしないとな」
「はい」
冒険者ギルドへ向かい、護衛依頼の完了を報告する。
受付の女性が頭を下げた。
「無事に到着されたようで安心しました」
「途中で襲撃がありました」
「襲撃……?」
レオは昨日の出来事を説明する。
すると受付の女性の表情が変わった。
「同じような襲撃事件が、この町の周辺でも起きています」
「え?」
「商人の荷物ではなく、特定の物を狙っているようなんです」
レオの頭に、あの紋章が浮かぶ。
「……何を狙ってるんですか?」
「そこまでは分かっていません」
受付の女性は首を横に振る。
「ですが、最近になって被害が増えています」
レオは黙り込む。
また同じ事件。
森の異常。
謎の紋章。
そして襲撃者。
「全部……繋がってるのかな」
『可能性はある』
その時、ギルドの掲示板に一枚の依頼書が貼られた。
「近郊の遺跡調査」
レオはその依頼書を見つめる。
「……遺跡?」
依頼書には、古い遺跡の場所が記されていた。
その場所は――
森で見つけた黒い石があった場所と、同じ方向だった。
「ガイア」
『ああ』
「行ってみよう」
レオは依頼書を手に取る。
自分の父親。
ネクロマンサー。
死界。
そして謎の紋章。
まだ何も分からない。
だからこそ――
「俺は、自分で確かめたい」
レオの目に、迷いはなかった。
――第19話・完――




